1.何を描くか決めて、簡単なラフを作る
今回は手順だけなので、構図を決めるまでの段階は省きます。
機会があったらお題から構図決定までの流れを記事にしてみたいですね。
お題が思いつかないので机の上にあるガンダムでも描きたいところですがさすがに怒られそうなので「風の吹く寒いホームで電車を待つサラリーマンのおじさん」にします。いま思いついただけなので特に意味はないです。
ということで描いたラフがこちら。

背景は記憶スケッチ状態ですがこれくらい小物があれば駅って分かるだろ、程度に物をおいてみました。
2.下書きを描く
人物部分はこのままでも行けそうですがカバンはかなり大雑把に描いてるので下書きを作りましょう。
用具
下書き、清書時にはいつもトレース台を使用します。
私が使ってるのはマクソントレーサーA3
です。
光源のLEDが交換できないので寿命が来たら買い換えないといけませんが、寿命は30000時間で普通に使ってても数年は保つし、蛍光灯型みたいにちらつかないし熱くも厚くもないし、別のトレース台「らんぷシート」はちょっと音が気になったし、画用紙重ねても透かせる明るさだし、けっこう重宝してます。
お金もらってないけど宣伝です。
さっき描いたラフを下に置いて、適当な紙を上に重ね、対角線の2箇所の角をクリップで止めます。テープとかで止めてもいいんだけど、剥がすのがめんどい。対角線でクリップを止めるのはそのほうがズレにくいからです。
下書きに使う紙は白くて描きやすければなんでもいいです。
鉛筆ならただのコピー用紙より共用紙(上質紙)の方が書きやすいと思うのでよければ参考にしてください。
人物の下書き

まずは人物の下書きをつくりました。ラフをなぞって、ディテールを少しはっきりさせたくらいです。
背景の下書き

背景もちゃんと電車のホームを調べて、ディテールをはっきりさせました。
パースとか線がまっすぐかどうかとか、細かいことを気にするかどうかは作風で左右されるので今回は考えません。
ちゃんとした背景も描けるんですよ?ほんとですよ…。
背景と人物を別々にしたのは、そのほうが直線などをつなげる際に楽なのと、清書したあとでも人物の位置を調整できるからです。一からパソコンで描いた場合、人物と背景でレイヤーを分けるようなものです。
3.清書する
Illustratorで清書したり、Photoshopで清書したりといろいろ方法はありますが、今回は手書き線のラフ感を活かすため、油性ペンで清書しました。
個人的なおすすめは名前書き用の油性ペンです。
サクラクレパスの「マイネーム」とかトンボ鉛筆の「なまえ専科」あたり。
紙に書いてもにじみにくいのと、コンビニでもよく売ってるのと、ツインタイプの細字がマッキー極細よりちょっと太くて極細のように折れやすくない形をしてるのが気に入ってます。
ただちょっと黒の色が薄いです。
で、人物と背景、それぞれ清書したものがこちら。


4.スキャナーで取り込む
今回はA4の紙に書いてるので、150dpi/グレースケールで取り込みます。
ウェブで使用する場合、よほど小さく描いた場合をのぞいて100~200dpiくらいで取り込めば、サイズ的には充分間に合います。
もしもフルカラーの印刷で使うなら使用するサイズと清書したイラストの大きさにもよりますが、350~400dpi/グレースケールで取り込みます。
4色フルカラー印刷の場合、画像の解像度は最低300dpiは必要なためです。
5.取り込んだ画像を線画として加工する
取り込んだ画像はそのままでは使えません。Photoshopで加工して線画にしましょう。
レベル補正をかけてゴミを飛ばす
取り込んだままだと線の黒が真っ黒(#000000)ではないので、こいつを真っ黒にして線をシャープに整えつつ、
紙の影やスキャナー台についたホコリの影でできたゴミ(イラストに必要のない描画部分)の色の薄いものをレベル補正機能で飛ばします。

数値は自分のイラストを見ながらさじ加減で調整してください。
基本的に白のしきい値を下げ、黒のしきい値を上げます。
こんな感じになりました。

地の色を透明にする
今は紙の白も取り込まれて、レイヤー全面が描画されているので、後ろにレイヤーを重ねても見えません。
これを、描いた線だけが描画された状態(いま白で見えているところが透明になった状態)のレイヤーを作りましょう。
1.描画色が黒(#000000)になってることを確認
2.チャンルウインドウを表示
3.チャンネルレイヤーのサムネイル部分をctrl(win) / ⌘(Mac)を押しながらクリックする

4. ctrl + shift + nで新規レイヤーを作成

5. ctrl + shift + iで選択範囲を反転
6. 選択した状態のまま、alt + deleteで、作成した新規レイヤーを描画色(#000000)で塗りつぶす

これで黒一色で線画が描画されたレイヤーを作ることができました。

最後の塗りつぶしはshift + F5(ファンクションキーを無効にしてる人はshit + fn + F5)でブラックを選んでもいいです。
目に見えづらいゴミを消す
ここまでやって、見た目にはキレイに見えますが、透明に見えてる部分にも微妙にゴミが残っている事があります。
こいつが残ってると、自動選択ツールを使って塗りつぶしたら変なところに塗り残しができたりします。
これをキレイにするためにはレイヤースタイルを活用しましょう。
1. カラーモードをグレースケールからRGBに変更
2. 線画レイヤーに「境界線」のスタイルを追加

3. 境界線がついたことで見えるようになったゴミの部分を消しゴムで消す

あんまり厳密に消す必要はないです。

境界線のレイヤースタイルはもう使わないので、レイヤースタイルを削除したら線画の完成です!
6.完成図を想像しながらエリアを塗り分ける
色塗りは簡単に説明すると、
- 色をつける範囲の下地を作る
- 同じ色が載るエリアを同じレイヤーで塗る
- 各レイヤーに完成色を載せる
の順番で進めます。
色を付ける範囲の下地を作る その1
人物の線画のように、色をつける範囲とそれ以外が明確に分かれている場合は、「自動選択ツール」で色をつける範囲の外側を選択します。

上の図はわかりやすいように「クイックマスクモード」にしています。
で、ここからただ選択範囲を反転して白で塗りつぶすと、アンチエイリアスがかかっている部分にまで白がはみだして色のついた地の上に置くとガビガビして見えてしまいます。

これを防ぐために選択範囲を反転する前に、メニューから 選択範囲 > 選択範囲を変更 > 拡張 を選択します。
拡張するサイズは解像度にもよるけど2~5pxくらいでいいです。
この状態で選択範囲を反転し、新規レイヤーをつくって白で塗りつぶすとこんな感じ。

色を付ける範囲の下地を作る その2
背景の線画のように、色をつける範囲とそれ以外が線でちゃんと分かれていない場合は、「クイックマスクモード」を活用します。
まず、線画以外を選択します。
- レイヤーのサムネイルをctrl + クリック で描画された範囲だけ選択
- 選択範囲を1px縮小
- 反転し、クイックマスクモードにする
見た目的にはこんなかんじになります。

次に長方形選択ツールと自動選択ツールで線の途切れてる部分より内側だけを選択状態にしていきます。
慣れてないとわかりづらいですが、赤くなってる部分が未選択状態、白い部分が選択状態です。

うまく必要な部分だけ選択できない場合は、長方形選択ツールで細かく区切りながら自動選択ツールを使います。
それでもダメだったらブラシツールで不必要な部分を塗りつぶしていきましょう。

必要なところを選択し終わったら新規レイヤーを白で塗りつぶします。

下地完成。
同じ色が載るエリアを同じレイヤーで塗る
色塗りは、事前に色付きのラフを作っといたほうが楽です。
ざっくりだけどこんな感じ。

個人的な所感ですが、デザインの一環としてイラストを使う場合、色数は少ないほうが使いやすいように思います。
ゲームやマンガなど、イラストそのものがメインならグラデーションや影などをつけてどんどん情報量を盛ります。逆にデザインの中で使う場合は、影やグラデーションを付けずに、ベタだけで色を載せていきます。
それではラフに合わせて同じ色を載せるエリアを同じレイヤーで塗りつぶしていきましょう。
その前に、まず色塗り用の新規レイヤーを作成しましょう。
- 下地レイヤーのサムネイルをctrl + クリック
- ctrl + shift + n で新規レイヤーを作成
- レイヤーウィンドウ下部の「レイヤーマスクを追加」ボタンをクリックして新しくつくったレイヤーにマスクをかける

これで、塗った部分が主線の外にはみ出す心配をせずにすみます。
それではガンガン塗っていきましょう。

ラフから適宜変えたりもします。
塗りつぶす色はなんでもいいですが、レイヤーごとに変えましょう。同じ色だと、塗りつぶしそこねた部分がわかりづらくなってしまいます。
ちなみに背景に色を付けてるのも、塗りつぶしそこねた部分をわかりやすくするためです。
完成したらこんな感じ。

7.色や模様をレイヤースタイルで載せる
レイヤースタイルの「カラーオーバーレイ」と「パターンオーバーレイ」を使って、色や模様を載せていきます。
その前に色を付けたレイヤーのレイヤーマスクを適用してから「スマートオブジェクト」に変換します。
まずはレイヤーマスクを適用します。

次にスマートオブジェクトに変換。

「スマートオブジェクトに変換」はイラストを描くだけならしなくてもいいんですけど、デザインにイラストを入れていく場合、サイズを小さくしたり大きくしたりするので、イラストの画質が変わらないように、サイズが決まるまではスマートオブジェクトで作業します。
各レイヤーに色付きラフで決めた色をレイヤースタイルの「カラーオーバーレイ」で載せ、ドットを「カラーオーバーレイ」と「パターンオーバーレイ」で載せたのがこちら。

レイヤースタイルで色やパターンを付けるのは、デザインの変更が発生した時にイラストファイルにいちいち戻らなくても色を変更できるようにするためです。
それと簡単にいろんな色の組み合わせを試せるのがいいところですね!
8.完成
各パーツを重ねて完成!

お疲れさまでした。