はじめに。
世の中はたくさんの色にあふれています。そして普段何気なく見ている色には、その色が持っている効果によって見る人に様々な影響を与えています。今回はそんな「色」についてまとめてみました。
また後半にはデザインをする時に、配色に困った時に役立ちそうな情報を盛り込んでいます。
色に関する知識を使って、より思い通りのデザインができればと思います。
では、どうぞ!
色はなぜ見える?
透明も含めて、物にはそれぞれの「色」があります。
でも実際に人間の目で見ているのはその物に反射した「光の色」です。
なので暗い場所では物の色が分かりません。
例えば、リンゴが赤く見えるのは光がりんごに当たった時に、赤い色の光だけが反射されて目に届くからです。
この場合他の色の光は反射されず吸収されて目には届きません。
ちなみに、全ての光を反射した時には白く見え、全ての光を吸収している場合には黒く見えます。
目で見ることができる光のことを「可視光線」と呼び、その他紫外線や赤外線などの目に見えない光を「不可視光線」と呼びます。
物の色は例にあげたリンゴのように、表面を反射する光「表面色」、また物を光が透過して見える色「透過色」によって色が決まります。
この2つの色を「物体色」と呼びます。
色と心理
色には人の心理に働きかける効果があると言われています。それぞれの色が持つ印象効果のことを「色彩感情」といい、その色が何かと結び付いて連想されることを「色彩象徴」といいます。
ここでは代表的な12色を例に、それぞれの色がもつイメージ(象徴)や連想するものをあげてみたいと思います(なんかまじめな感じになってきた)
【イメージ(象徴)】生命・活動的・情熱的・衝動的・破壊・暴力
【連想するもの】血・太陽・火・りんご・トマト
【心理的作用】生きる力や性を表していることから、神経を興奮させる・元気を出すという効果がありますが、悪い意味では闘争心を出したり短気になったりするという一面もあります。意欲を出させる色なので、スポーツで赤を身につける人も多いです。他にも購買意欲を出すために店でも良く見かけますね。その他にも、暖かく感じたり、時間の経過を早く感じさせたりといった効果もあります。とにかく赤は生命・活動の象徴です。
【イメージ(象徴)】家庭・仕事・自由・暖かい・深い知恵・推察力
【連想するもの】夕焼け・みかん・柿
【心理的作用】橙(オレンジ)は解放感を与えて、楽しい気分にさせる色です。また食欲を促進させる色としても有名なので、飲食店や商品のパッケージには橙などの暖色系が多く使われています。赤に比べて少し柔らかい色なので、赤の積極的なイメージから一歩引いた「思いやりがある・親しみやすい」といった意味合いもあります。確かに夕焼けの色もほわーんとした光で癒されて思わず見てしまいます。
【イメージ(象徴)】好奇心・向上心・知識・幸福・軽快・カジュアル
【連想するもの】レモン・ヒマワリ・卵(黄身)
【心理的作用】黄色は暖色系の中でも特に明るく感じられる色の通り、集中力を高めたり気分を明るくする効果があります。他にも注意を促すといった警戒色の効果もあるので道路工事や踏切などでもよく見かけますよね。自信や元気がない時に、黄色いものを身につけると気分も明るくなるそうなので一度試してみてはいかがでしょうか。
【イメージ(象徴)】穏やかさ・調和・自然・平和・バランス・協調
【連想するもの】山・木・植物・野菜
【心理的作用】興奮を静めたり、集中力を増す効果があります。また遠くの緑を見ると目に良いと言われていることからも分かるように、目の疲れを癒す効果があります。また協調性を表し、運気が向上するために資金が集まる色とも言われています。なんだか願ったり叶ったりな色ですね。まさに自然を象徴する色なので、気持ちが落ち着くのんびりした気分になれます。ナチュラルな感じを出したい時にはぜひ使いたい色です。
【イメージ(象徴)】平和・安全・冷静・誠実・清潔・若い・爽やか
【連想するもの】空・海・川・水
【心理的作用】興奮を抑え、冷静にさせる作用があります。青は情熱を意味する赤とは反対に、涼しさや爽やかさ、知性や冷静を感じさせてくれる色です。空をイメージさせる色であることから航空会社(イメージカラーや飛行機の色)でも良く使われています。航空会社以外にも、涼しさを感じさせる清涼飲料水(ポカリスエット)や海を連想させる塩味の商品にも青い色がよく使われていますね。夏では「涼しさを感じさせる色」として青が使われ、冬では「季節感(寒さ)を表す色」として青が使われています。季節に応じて違った意味合いで使われる色です。
【イメージ(象徴)】精神・孤独・気品・厳粛・崇高・宇宙
【連想するもの】ラベンダー・ブルーベリー・あじさい
【心理的作用】青紫は分類で言うと寒色ですが、赤の要素を含む青であるために寒色の中でも深みのある色と言われています(青を含む紫とも言えますけどね)。精神に関するものとよく結びつけられる色で、他にもエレガントな雰囲気や女性的なイメージを与えます。個人的な解釈だと青でもない赤でもない両方の要素を含む微妙な位置づけが、目に見えない精神に関するものに結びついているのでは?と思います。その他にも、上品な感じや高級感を出す色としても使われています。青の要素が入っているために、安定・冷静な雰囲気も合わせもつので、紫の中では広い面積で使う場合でも比較的使いやすい色とされています。
【イメージ(象徴)】高貴・優雅・魅力的・非現実的・霊的・神秘
【連想するもの】ナス・ぶどう・スミレ・あやめ
【心理的作用】想像力をかきたてたり、感受性を高める効果があります。芸術的な意味合いもあるので、自分の中の感性を引き出したりする色です。紫と聞いて連想できるものが他の色と比べて少なく、抽象的な意味合いで連想されることが強いようです(スピリチュアルや芸術の世界など)。悪い意味だと、青でもなく赤でもないイメージから内向的・不明瞭といったイメージも持っています。紫に関する色は全般的に高級感や上品さを表すものが多いため、他の色のバランスに気をつければ視覚で印象に残りやすいです。
【イメージ(象徴)】清潔・潔さ・美しさ・純粋・神聖・天国
【連想するもの】結婚式・病院・雪・綿・牛乳・雲・紙
【心理的作用】汚れていないというイメージから、清潔感・純粋さを与えてくれる色です。そのため病院や飲食店では白い制服が使われていることが多いですよね。その他には、ものを軽く感じさせたり、気持ちをリセットする(始まりを感じさせる)という効果もあります。日本人が好む色のひとつで、商品のカラーバリエーションの中には白が入っていることが多いですね(車なんか特に)。明度が高く光を反射する色なので、明るいイメージで使われることがほとんどですが、悪いイメージだと無機質で空虚感を感じさせる色なので多用は禁物です。
【イメージ(象徴)】調和・憂鬱・不安・過去・薄暗い・思い出
【連想するもの】曇り空・煙・石・コンクリート・ネズミ
【心理的作用】黒でもなく白でもない位置なので、割と象徴するイメージは暗い感じのものが多いですが、バランス感覚に優れ人との関わりが上手な人が好む色だと言われています。はっきりしない色のイメージから、控えめで平凡な印象を与えます。またその意味の延長線上で、上品で落ち着いたイメージも兼ね備えています。灰色は無彩色で、他の色とも相性が良いので合わせて使うことによって効果が発揮される色です。薄い灰色は目に優しく控えめな印象のため、WEBデザインでも背景に多用されています(このサイトも背景は薄い灰色です)。
【イメージ(象徴)】暗闇・死・恐怖・悪・沈黙・高級感・男性的
【連想するもの】スーツ・葬式・髪の毛・カラス・墨・夜
【心理的作用】黒は全ての色を吸収した色といわれていて、何かを秘めた印象や影のある印象を与えます。また男性的で威厳のある感じや、都会的で洗練された印象も与えます。白はものを軽く見せる効果があるのとは逆に、黒は重く見せる効果があります。死を表す色であることから、葬式でも必ず使われる色ですね。黒は一番有彩色を引き立てる色で、明るい色は特に引き立つので相性が良いとされています。
【イメージ(象徴)】冷たさ・金属・洗練・硬い・上品
【連想するもの】小銭・アルミ・スプーン・銀歯・腕時計・アクセサリー
【心理的作用】灰色と似た印象効果を持っていて、上品で落ち着いた印象、また洗練された都会的な印象を与えます。金色に比べて控えめな色なので、派手ではなく、かつ高級感を持つ色です。「銀座」という地名は、実際に銀貨にまつわる名前の由来があるようですが、「銀」という色が持つイメージも相まって自然と高級な印象を受けると思います。自然界では少ない色なので、人工的な印象も与えます。
【イメージ(象徴)】成功・高級・富・頂点・輝き・豪華
【連想するもの】金箔・お金・宝石・金閣寺
【心理的作用】派手で目立つ色、また高価の象徴であることから、特別なものや高級感といった印象を与える色です。お金や富を連想させ、豊かさを感じさせてくれます。歴史的に見ても、富や豪華さを表すために建築や宝飾で金が多く使われていますね。欲を満たすといった気持ちを満足させる意味合いが強い色です。ただし金などの派手な色は使いすぎると、高級なイメージから低俗なイメージ(物欲)に変わってしまうので注意が必要です。
お疲れ様でした。次は配色についてです・・・
というわけで可視光線を含む12色の色についてでした。漠然としたイメージを持つよりも、実際にそれぞれの色にどんな意味合いがあるのか調べているのも面白いですよ。では色について知ったあとは、実際にDTPやWEBデザインなどで色を決める際に、考えれば考えるほど、どの配色が良いのか分からない!という事もあると思います。実際何が正解なんて判断しづらいのが配色の難しいところ。人の見方によってデザインの善し悪しは賛否両論ですが、こういった配色の決め方・ポイントもあるよ!ということで思いつく限りで紹介したいと思いますー。
まずRGBとCMYについて
色には光の3原色(RGB)と色の3原色(CMY)があります。RGB(レッド・グリーン・ブルーの3色)を加法混色といい、基本は光がない黒の状態でそこに色を足していくことで特定の色を表し、全てが重なった状態が白になります。もうひとつのCMY(シアン・マゼンタ・イエローの3色)を減法混色といい、基本は白でそこに色を足していき全てが重なった状態が黒になります。RGBは光の3原色なのでテレビなどの電子機器に使われ、CMYは印刷物に使われています。ただCMYの3色で作った黒は完全な黒とは色味が違うため、別にK(ブラック)という黒専用のものが用意されています。これは印刷の基本となるプロセスカラー(4つの色)と呼ばれていて、CMYKと表現します。ちなみにブラックがBじゃなくてKなのは、BはBlue(青)を表すためです。
WEBデザインはRGBで、DTPはCMYKを使って配色を決めるのが一般的のようです。フォトショップやイラストレーターを使う時もこの設定を最初にする必要が出てくると思うので、色に関する基礎知識も大切ですね。
色相・彩度・明度について
色相とはそれぞれの色の違いのことで、下記のようにそれぞれの色を順に環(輪)にしたものを色相環といいます。
色相環の隣り合う色のことを類似色、また向かい合う色を補色といいます。明度は名前の通り「明るさの度合い」のことです。一番明度の高い色が白で、一番低い色は黒になります。明度が高いと色の印象が明るくなるので、派手で元気な印象になります。彩度とは「鮮やかさの度合い」のことで、一番彩度が高い色を純色と呼びます。彩度が高いとはっきりとした色に、彩度が低くなるにつれて白に近付いたような淡い優しい色になります。イラストレーターだと補色などメニューで操作できるので結構簡単です。
配色ポイント① 「70:25:5」の法則を使う
色のバランスに困ったらとりあえずこれ!これはベースカラー・メインカラー・アクセントカラーの3色を決めて、それぞれの割合を70%・25%・5%に割り振るとバランスよく見えるという法則です。それぞれの色の選び方はこんな感じがおすすめです。
組み合わせは自由自在なので、色々作ってみてどういった雰囲気が出るか試すのも良いと思います。ポスターなどの印刷物を作るのか、WEBサイトを作るのかでまた考え方も違ってくると思います。WEBサイトの場合はサイズが自由自在でスクロールも出来るので。
最初から基本となる色をしぼってあげることで、色を選びやすくなると思います。
配色ポイント② 視認性・誘目性に気を使う
伝えたいイメージで色を選ぶのも良いですが、視認性(見やすさ)と誘目性(目を引き付ける色)の観点で見るとまた違った色の選び方が出来ると思います。
視認性には大きく明視性(形の認知)と可読性(文字や数字の認知)の2種類があります。視認性を高めるポイントは、背景色と対象になる色の明度・彩度・色相に差を与えることです。具体的にはこんな感じです。
形の認識は、黄色や赤などの暖色に比べて青などの寒色のほうが認識が低く、車の事故も青やグレーの車のほうが事故率が高いという情報もあります。信号や標識でも、黄色や赤などが多用していることから暖色なおかつ明度や彩度の高い色は明視性が高いと言えます。
配色ポイント③ 進出色・後退色を使い分ける
名前の通り進出色は「前に出て見える色」、後退色は「奥に引っ込んで見える色」です。赤や黄色、橙などの暖色なおかつ明度の高い色は前に出て見え、逆に青や紫などの寒色なおかつ明度の低い色は奥に引っ込んで見えます。キャッチコピーなどの主題となる文字がある場合や媒体のテーマに合わせて進出色・後退色を使い分けるとより効果が出ます。
下の作例を見ると一目瞭然です。
配色ポイント④ グラデーションを使う
これ以上他の色は使いたくないけど、なんだか色がのっぺりしていて動きがない。という時はグラデーションを使うと、リズムが出て動きがあるように見えます。
配色ポイント⑤ 国旗の色を使う
国旗の色と言えばフランスのトリコロールが有名ですが、もともとトリコロールというのはフランス語で3色という意味があります。国旗はそれぞれの国の象徴するものを色や形であらわしていて、有名な国旗は見ただけでどこか分かる(連想される)と思います。アメリカンな感じ、和風な感じ、エスニックな感じなど、媒体によっては国柄を示すような雰囲気を出したい時があると思いますが、そんな時は国旗を参考にすると色を決めやすいです。
参考サイト 国旗の一覧(wikipedia)
配色ポイント⑥ 有彩色のイメージを際立たせる場合は、無彩色と組み合わせる。
あれこれ色を使ってしまうと、一番伝えたい色を置いても他の色の雰囲気と相まってなんだか思ったようないかない、ということもあると思います。そういう時は無彩色と合わせる(有彩色と無彩色の2色使い)ことで有彩色が引き立ち、どの色がテーマ色かということが伝わりやすくなります。黒や白がイメージカラーとなる場合は、逆に派手な有彩色を使うとそちらに目が行ってしまうので、有彩色の割合と明度は抑えめにしたほうが良いです。