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窓の向こうの海

素直で純心なきみに、憧れ手を伸ばしていた。いつのまにか、掴まれていた。もう離さないよって、きみが太陽みたいに笑った。

星空ロック 那須田淳

2017-08-08 19:37:02 | 読書



積み本の一冊。


どうして買ったのか、ピンと来たのか、もう覚えてなくて、すこし首を傾げながら読んだのだけれど…すごく、良い本だった。


最近、読む本によくバッハのゴールドベルク変奏曲が出てくる。
好きな曲なので、嬉しくなる。

数年前、不眠症で苦しんでいた時に、眠れない夜のための音楽だよ、と母が、CDを棚から出してくれた。

眠れない長い夜に、何度も何度も繰り返し聴いていた。それはまるで慰めのように、わたしのなかに沁み渡っていた。

酷い不眠が治ってからも、すっかり好きになって定期的に聴いている大事な曲。



青の数学2 王城夕紀

2017-08-04 00:35:42 | 読書


P115 「誰が好きとか、何が得意とか、自分の思い通りにならないんだよ、どうせ」




前巻とは少し空気が変わって、禅問答のような問いが繰り返される。


なんだ、数学って結構、適当で不確実なんだなあ、と思わされた。

正しいことの証明と、正しくないこと、矛盾の証明。

その繰り返し。


Xが0に限りなく近づく……その意味が、高校生の頃は分からなかったけど、やっといまわかった。

数学は案外、曖昧なもの。













大事なのは、才能と意志のベクトルが同じ方向を向いているかどうか。

人は、能力を、才能を、自分で選べない。

だからこそ、与えられたものにどう向かっていくかは、その人次第。


柊先生との旅の中で、ひたすら考え続けた少年が皇さんだったのが印象的だった。

彼には彼の強みがある。


一人ひとりが違う過去を、才能を、考えを背負って数学をしているのが心に残った。



孤高の存在、天才京さんのことが、ますます気になった。



続編も出るのかな?
国際数学オリンピックの行方が楽しみです。





青の数学 王城夕紀

2017-08-03 16:00:40 | 読書



P240 「数学がいいのは、なぜ、と問わないところにある」
「どうなっているかを探求する。どうしてそうなってあるか、は問わない。そうなっているなら、そうなっている。それだけ。そこがいい」


P259 「人はなぜと問う。問うても無意味なのに、問わずにいられない。だからユークリッドは『原論』を書いた。なぜと問うのではなく、誰もが確かだと思うことだけを積み上げるために」


なるほど、と納得させられた。


わたしは高校にはいってすぐに数学に躓いて、心を閉ざして、徹底的にやらずにひどい点数を取り続けながら過ごしていた。
躓いた理由は、『なぜ』を追求してしまったから。なぜ、二次関数はこういう形なの?なぜ、この公式はこうなっているの?
『そういうものだから』も割り切れずに、ぐだぐだ悩んでいた。

でも数学は、神様の定めたひとつの法則、ルールの下に成り立っているのだ。


そういうことにもっとはやく気づけていたら、もっと楽しい高校生活が送れたかもしれないとおもった。

大学に入ってからの統計の授業は楽しかった。
なにかが吹っ切れたからかもしれない。


あの頃、受験のために何もかも詰め込まれているようで、勉強を心から楽しむことができなかった。

せっかく超進学校にいたのに、もったいないなあと思う。


主人公の栢山くんが、数学の苦手なクラスメイトの柴崎ちゃんの言葉をすごくニュートラルに捉えているのが良かった。
彼自身も多分、どうして自分が数学ができるのかわからなくて、不思議に思っているからなんだろうなあ。

栢山くんは一度見た数字を忘れないという才能ともいえる能力を持っているけれど、驕らず、才能に溺れず、本人が自覚もなくどことなくふわふわしているのが高校生っぽくていい。

そんな中で、数学のことばかり考えている同世代の仲間たちとの合宿。


目の前の問題との、仲間たちとの、対話を重ねる中で、知らなかったことや気づかなかったことに対する理解を深め、成長していく。


数学が得意で好きで、才能にも恵まれていた、賢い親友のことを思った。
放課後、毎日のように、東大を目指しているような頭の良い子たちと一緒になって、新しい証明を黒板に書き殴って研究していた。

あの頃、彼女たちを眩しく見つめながら、輪に入れずに、机の上に座って文庫本を読んでいたわたし。

それはそれで、愛おしい大切な時間だったことを思い出す。


数年前に彼女の部屋に遊びに行った時、本棚に並んでいた『数学ガール』、ずっと気になっていたけれど読んでみようかなあ。


青春な一冊でした。

2巻も続けて読む。

読んだら感想書きます。


ハコブネ 村田沙耶香

2017-08-02 15:31:43 | 読書


読書の予定をすこし変更して、先に読みやすそうな積み本を引き続き消化している。


これも結構前に買った一冊。


里帆は、知佳子のことをあまりよく知らないから、あっけらかんと生きているように見える知佳子に対して『ごく自然に、常識の中で呼吸ができる人は、苦しみを知らなくてうらやましい』と思ったけれど、実は知佳子は、自分が世の中のルールに混じり切ることができなくて彼女なりにもがいて苦しんでいる。

そのへんがわからないのが若さかなと感じた。


若い女性として社会で求められることは多くあるし、それに伴う嫌なことは大学時代、散々経験した。
もちろん、反対に、若い女性であることで受けられる恩恵だってある。

でも、そういうのに甘んじていると、自分がどんどんすり減っていくのがわかるし、エネルギーが切れて疲れてしまう。


ニュートラルに生きたいのに、それはなかなか難しい。

でも、当時の自分が下手くそだったんだ、と気づくこともたくさんある。


いまならもっと上手くやれるのかもとも思う。


わたしはつらくて逃げたけど。


もう少し歳をとればきっと、もっと自由になるのかもしれない。


終わりのない出口のように感じていた、地獄の中にいたけれど、ほんとうは狭い世界の中で溺れていただけのようにも思う。


知佳子みたいな独自の世界観の中で生きることは、淋しさもあるかもしれないけれど自由でいいなと思った。


彼女は生きるのが上手。


わたしももっと自由になりたいな。



この闇と光 服部まゆみ

2017-07-31 00:18:40 | 読書



またしてもすごい本を読んでしまった。


去年からずっと気になっていて、最近やっと本屋さんで見つけて即買いした一冊。


王女レイアと父王を取り囲む世界の…お話。


美しいもの、耽美的なものを求めて生きるには、
醜いもの、俗物的なものを徹底的に排除しなければならないのかもしれない。


閉鎖された空間(=闇)の中で、美しく輝く光のような物語や音楽。


現実世界は幻滅するようなことも多い。
俗世的なものやひとにげんなりすることも。
わたしだって、心を閉ざして引きこもっている自覚があるから、なんだかレイアと似たような境遇にも思えた。


ただただ環境を作られ、与えられ、そこで生きることしかできなかったレイアと、自分自身で選び、望んでいるわたしとでは、大きな違いがあるのかもしれないけれど。


でも、別荘から出たレイアもまた、美しい幽閉空間の日々を恋しく思っているのだと思う。
捨てきれずに、現実が受け止めきれずに。
もどかしく毎日を過ごしている。心を閉ざし続けている。


それは、一度、ひたすらに美しい世界をその身で体験してしまったから。
観念的な美に魅了され、囚われて、現実世界を直視することを心が拒んでいるのだと思う。


それはある意味では幸せであり、でも現世でしぶとく生きていくには不幸なことだと感じた。


無垢なレイアと、周りの大人たちとの対比がよく描かれていて、興味深かった。


父王の内心での葛藤や衝動的な行動は、とても人間臭くて好きだ。


子どもの目に映る、感じる世界と、
大人たちの捉えている世界とでは、
とても大きな違いがあり、越えられない隔たりがある。


幼い頃、もっと世界は幻想的で、観念的で、美しかった。

ずっとその世界の中で生きられたらいいのに。

幼い頃は自由で、でも大人になったらまた別の意味の自由が与えられる。

中途半端なルールの中で縛られながら生きる、中高生時代が、もしかすると一番、不自由で窮屈かもしれない。
そんな風に思った。

すくなくとも、わたしは息苦しかったし、ずっともがいていた。


いま、再び本来の世界を取り戻しつつあるのかもしれないとも。



この闇と光。


世界の捉え方を自由自在に変えて、柔軟に生きられたら、案外もっとラクになれるのかもしれない。



余談だけれど、最近読んだハルチカシリーズの『惑星カロン』にも、この本にも、【ワルプルギスの夜(ヴァルプルギスの夜)】が重要なキーワードのひとつとして出てきて、とても驚いたし、思わずにやりとした。


こういうことが、読書をしていると、たまにある。

ほんの偶然なのだけれど、世界は繋がっているなあ、と感じさせられる。


どのように世界を捉えて生きるか。
美しさを希求するとはなんなのか。
その功罪。


そんなことを考えさせられる本だった。



服部まゆみさんの本、ほかにも読んでみたいなあ。


独特な世界観がわたしはすごく好きでした。