不公正な取引 小売業者は早期是正を (2012年07月30日)
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大規模小売業者と食品メーカーとの取引実態について食品産業センターが調査結果をまとめた。不当な値下げや返品、協賛金強要。強い立場の小売りが、弱い立場にあるメーカーに対し過度な金銭負担などを要求している実態が分かった。独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用(らんよう)」に当たる可能性がある。是正すべきだ。
「原価割れの価格を要求された」「新商品導入に伴い半年分の売上高に相当する販促費を求められた」「従業員派遣要請を受け、日当・交通費なしで働いた」。乳製品、漬物、豆腐など23の業種、351社が回答した調査からは、さまざまな名目で経済的要求を受けて苦しむメーカーの姿が浮かび上がる。私たちが日常、食卓を囲んで楽しむ食品の、これが舞台裏かと疑いたくなる内容だ。
「不当な値引き」があったとの回答は17%(前年調査27%)、「不当な買いたたき」は18%(22%)。各種協賛金を求められたメーカーは39%(42%)。禁止行為の「決算対策協賛金」は23%(20%)が要求されていた。スーパーなどの物流施設利用料であるセンターフィーが割高との不満も根強い。
こうした行為は極めて悪質だ。断れず泣き寝入りしそうな相手を選び過度な要求をする。要求された側は、追い込まれて、原料値下げを生産者に迫ったり、偽装に手を染めたり、衛生管理で手を抜いたりする恐れがある。その意味で国民生活に直結する深刻な問題だ。
これでも今回の調査は改善傾向がみられたという。2010年の独禁法改正で優越的地位の濫用が課徴金対象になった点が大きい。これまでに納入業者の従業員の不当使用や不当な返品・減額などを行った3社(スーパー・山陽マルナカ、家電販売・エディオン、玩具販売・日本トイザらス)に億円単位の課徴金納付命令が出され、不正の抑止力となったという。
だが、警戒を緩めることはできない。流通の世界ではスーパーや生協、百貨店で経営統合や提携が進み、バイイングパワー(購買力)が一段と強まる可能性がある。国会審議中の消費税増税関連法案も差し迫った課題だ。増税分の価格上乗せを目指す食品メーカーは小売りの理解が得られるか不安を抱く。
業界自らの意識改革、体質改善が急務である。大規模小売業者は今回の調査結果を取引先の悲鳴として受け止め襟を正すべきだ。そもそも食品を作る人と売る人は依存関係にあり対等ということを肝に銘じてほしい。
公正取引委員会には市場の番人として監視の目を一層光らせてもらいたい。公取は11日、大規模小売業者と納入業者の取引実態を調査結果にまとめた。優越的地位の濫用に当たる行為も一定程度見られており、こうした実態の把握に努め、その違法性について関係者、消費者に周知してもらいたい。地道な活動が不正撲滅への一歩となる。
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大規模小売業者と食品メーカーとの取引実態について食品産業センターが調査結果をまとめた。不当な値下げや返品、協賛金強要。強い立場の小売りが、弱い立場にあるメーカーに対し過度な金銭負担などを要求している実態が分かった。独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用(らんよう)」に当たる可能性がある。是正すべきだ。
「原価割れの価格を要求された」「新商品導入に伴い半年分の売上高に相当する販促費を求められた」「従業員派遣要請を受け、日当・交通費なしで働いた」。乳製品、漬物、豆腐など23の業種、351社が回答した調査からは、さまざまな名目で経済的要求を受けて苦しむメーカーの姿が浮かび上がる。私たちが日常、食卓を囲んで楽しむ食品の、これが舞台裏かと疑いたくなる内容だ。
「不当な値引き」があったとの回答は17%(前年調査27%)、「不当な買いたたき」は18%(22%)。各種協賛金を求められたメーカーは39%(42%)。禁止行為の「決算対策協賛金」は23%(20%)が要求されていた。スーパーなどの物流施設利用料であるセンターフィーが割高との不満も根強い。
こうした行為は極めて悪質だ。断れず泣き寝入りしそうな相手を選び過度な要求をする。要求された側は、追い込まれて、原料値下げを生産者に迫ったり、偽装に手を染めたり、衛生管理で手を抜いたりする恐れがある。その意味で国民生活に直結する深刻な問題だ。
これでも今回の調査は改善傾向がみられたという。2010年の独禁法改正で優越的地位の濫用が課徴金対象になった点が大きい。これまでに納入業者の従業員の不当使用や不当な返品・減額などを行った3社(スーパー・山陽マルナカ、家電販売・エディオン、玩具販売・日本トイザらス)に億円単位の課徴金納付命令が出され、不正の抑止力となったという。
だが、警戒を緩めることはできない。流通の世界ではスーパーや生協、百貨店で経営統合や提携が進み、バイイングパワー(購買力)が一段と強まる可能性がある。国会審議中の消費税増税関連法案も差し迫った課題だ。増税分の価格上乗せを目指す食品メーカーは小売りの理解が得られるか不安を抱く。
業界自らの意識改革、体質改善が急務である。大規模小売業者は今回の調査結果を取引先の悲鳴として受け止め襟を正すべきだ。そもそも食品を作る人と売る人は依存関係にあり対等ということを肝に銘じてほしい。
公正取引委員会には市場の番人として監視の目を一層光らせてもらいたい。公取は11日、大規模小売業者と納入業者の取引実態を調査結果にまとめた。優越的地位の濫用に当たる行為も一定程度見られており、こうした実態の把握に努め、その違法性について関係者、消費者に周知してもらいたい。地道な活動が不正撲滅への一歩となる。