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とりあえず西洋絵画から始めて、現代日本作家まで

青木繁の記事中 短編小説その弐

2010-06-07 | 短編 草稿

 

 

 

 

 

 

河辺 千恵子 にちょっと似た、もちょっと丸ぽちゃの少女ぽい女性。

ムキムキの筋肉女性は、身長1メートル90㎝はあろうかと思われる、大女で名前は、マリア・ガルシア。細めの狐顔の美女は、エレーヌ。そして日本語が堪能な日系女性は、田上芳美と名乗った。芳しいに、美術の美と漢字を説明した。

マリアはくすんだ紺色のワンピース。エレーヌは横縞の白とピンクのストライプ。そして芳美は白い半袖だった。

プリンス・ホテルに昼飯が食いたいというので、連れて行った。そこは西部系列のちゃんとしたリゾートホテルである。ここで別れるつもりだったが、一緒に食べましょうと芳美がいった。自分はこのような高級では持ち合わせがないし、食事を奢られるいわれもない。

今日は暇かと聞かれた。明日の夕刻、5時までに山のホテルに戻ればよかった。なので今日はあいている。それを聞いて、ならば観光地を案内して貰えませんかとかいわれてしまった。赤毛の妙齢の美女とか、頭の良さそうな通訳。そして辺りを威圧する、女ヘラクレス。これは、メッタにない経験と、それで観念した。

 

西洋画の巨匠で中山純夫というのがいる。その物故した絵描きの里が此処で、せがれがそこそこしか売れない画家をやっていた。どちらかというと、親の威光で活きている。鑑定なども生業の一部なのか。芳美にきけば、東京の美大で教授もしているのだとか。

ロビーのカウンターで、「観光タクシーを呼んで貰いたいの」といった。「済みません、ご宿泊予約のかた以外は、キャッシュでお願いします。」とかいうので、女はそりゃそうだというテイの表情。財布から壱万円札を取り出して数えてみせる。都合五枚だして、一枚をフロントへのチップだといった。中年のフロントマンは、これでは多すぎますと丁寧に断っていた。ならばと、千円札を取り出して、これは電話代だと押しつける。しかし、「タクシーのお手配は、当ホテルのサービスに含まれております。」とニコッと笑うのみ。

4名で麦酒の小瓶を、3本ほどあけて、パスタとかピザを思い思いに食った。

コーヒーを飲んでいるとタクシーがきた。それで一平は退散しようとしたが、ビールを飲まされてしまったので、自分の車は運転できない。大女に車に押し込められて、観光タクシー車中のひととなった。芳美が四万円を手づから運転手に前金でわたす。フロントは見送りながら慇懃にお辞儀をする。運転手の名調子で、観光地を廻った。鱒釣りをして塩焼きにして喰らう。そして亦、ビールを飲む。この頃までには、一平も打ち解けてきた。というよりは乗せられてきた。気がつくと今日は夕刻になっても、運転して山に帰るのは難しい。

翌朝一平は早めにホテルを出た。

ジャケットのポケットには、壱万円札が何枚かねじ込まれてある。聞けばエレーヌはコレクターの娘なのだとか。あさっての昼に、中山画伯のせがれに逢うのだとか。

 

 

蛙の庵

 

 

 

 黒い水着       黒い水着

 

 

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