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ワカキコースケのブログ(仮)

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オフコース『We are』の後の3枚を聴き直したの巻

2016-11-22 14:24:14 | 日記



なかなか更新しないブログなのに、閲覧数は毎日100前後あって、ありがたいです。
常にランキング上位にいる記事のひとつが、去年(2015年)の春にあげた、「なぜかいきなりオフコースの『We are』をマジで聴き直すの巻」。

あまりに超人気だった反動で未だに音楽通には冷笑の対象だが、実はいいバンドだったぞって、もうそろそろ真面目に言い出すオッチョコチョイがいてもよいのではないか。そういう、むしろ思い切ってセンスのいい人達にバカにされたい、ちゃんと損したいと望む気持ちで書いた。

それでも、「なつかしい」「あの頃は良かった」的なノスタルジーのフィルターは可能な限り外して、虚心で聴き直したいという考えを、理解してくれる方が少なからずいたのは、嬉しかった。

それから、『We are』の後のスタジオアルバム3枚を中古で手に入れ、超久々に聴いた。
謝恩の気持ちを込めて、以下ざざっとレビューします。


『over』
1981/エクスプレス-東芝EMI

前年の『We are』が初めてチャート1位になり、シングル「I LOVE YOU」、ベスト盤『SELECTION 1978-81』がたて続けに発売され、ファン急増(僕含む)の年の、冬に発売された。
そして、後でみんな知ることになるが、結成当時からのメンバー・鈴木康博が、すでに小田和正に脱退の意思を伝えていた頃。

「心はなれて」(インストゥルメンタル)の後、小田の「愛の中へ」。
愛の新出発を歌う。ベースとドラム、重くていいな。エレピの揺らぎがサウンドとして新しかったのは、ここらへんまでだったな、ということも思い出す。スティービー・ワンダーですら、音の乗り換えには苦労した時代だ。ポップス全体の過渡期に大きなスポットライトが当たったオフコースには、フォークから始まったグループがどうアジャストすればよいのか、その苦しみの過程を身を持って示したタフなところがある。そういうところも好き。

「君におくる歌」 鈴木。小田さんとのコーラス、ここまでは緊密なのは『We are』には無かったと思うので嬉しい。こういうところで一喜一憂させてくれる感じは、やはり、和製サイモンとガーファンクル。ただし、別れの歌。

「ひととして」小田 この時期ならではの良さがよく出ている、嬉しい曲。小田・鈴木の2人でやっていた時らしさと、AORのサウンドがとてもしっくり、ぴったり。

「メインストリートをつっ走れ」鈴木 実質もうソロを視野に入れていたヤッさんの、ロック寄り。これは久々に好調の曲かな。ギターをばりばり強調しているし。久々に『over』を聴いて、いちばん思春期の頃の甘酸っぱさを思い出させるのは、この曲のヤッさんの歌声だった。

「僕のいいたいこと」松尾 いいなー。ポエトリー・リーディングのような語り&バックトラック、のはしり、ちゃんとやってるじゃん。ソウルのほうからアイデアをもらっているのでは。転調になると、ストリングスやベースのソロが前に出るなど、構成がプログレッシブ。こういうところは、二人時代には無かったもの。

「哀しいくらい」小田 『over』は意外なほど、よく聴くと『We are』の世界を続けた曲は少ないのだが、これはバッチリと踏襲し、さらに深めたもの。サウンド、各演奏のバランスは見事。スティーリー・ダンにまったく負けてない。

「言葉にできない」小田 今の僕には詞の内容・曲ともども、トゥーマッチ過ぎる気がするんだけど……武道館での涙で伝説的な曲に。小田から鈴木への隠れメッセージという話は本当だろうか。
ハーモニカは、もろに当時人気のトゥーツ・シールマンス風。最後、謎の声がうっすら聞こえる。

「心はなれて」小田 小さな曲でアルバムを締めくくる作り方の復活。大事に思うひとと、くっついたとしても離れたとしても、どっちにせよ抽象的なのがこの時期のオフコースの、小田さんの詞なのだが。これは実感を感じられて……。



『I LOVE YOU』
1982/エクスプレス-東芝EMI

武道館10日間連続の後、夏に発売。
「YES-YES-YES」と「I LOVE YOU」が飛びぬけていて、アルバムとしてはやや停滞、という中学・高校での印象とそんなには変らなかった。

鈴木がすでに脱けるつもりなのだが、人気がピークで決定しきれない。
第三の男・松尾一彦も、コンポーザーとしては今ひとつ伸び切れない。
ツアーと同時進行の制作スケジュール。

こうした要因が重なり、凡曲との落差が、他よりも際立ってしまっている。「かかえきれないほどの愛」なんか、悪い意味でこの後のJ-POPの水準になってしまった。

しかし、独特の勢い。キレてるところは、すごくキレてる。疲労と高揚が表裏一体になっている。ポップスとしては逸脱した暗い疾走感があり、30年以上たってもそれは消えていなかった。

「YES-YES-YES」 この曲はねえ、オールタイム級で、ぜんぶが好き。
去年、『We are』のブログを書いた後、読んだぞという小学生からの友達に、「小田さんの詞は、途中から『あなた』が『君』に変わったよな」と教えられて、ああ、そういえば!となった。
この曲は、「あなた」と「君」が混在している。いや、微妙な関係にいる女性との現在の状況を内省している間は「君」だけど、いつかもっと幸せにしたい、願望・決意を歌うサビでは「あなた」になるんだよな。

東京の雑踏、のSEの部分で小さく、小さく「ねえ、私のこと……」と女性の声。
これも、同年代の友達、ショーコから教えられて、エエー!となった。
「えー、当時から、……の部分がなんて言ってるのか、話題だったでしょ」と、驚いたことに驚かれた。いや、女子のほうがなにかとアンテナの範囲広いからさー……言い訳。

なんにせよ、1フレーズぶんを抜いて、こういう音の情景を入れ込む。小田さんの映画に行く興味、ここらからもう顕在化していたのだ。
それにアルバム・ミックスらしい。シングル・バージョンと改めて聴き比べたい。

鈴木のほうは『I LOVE YOU』では、フォークシンガーな心のまま、舞台装置、道具付けだけが都会的になっている。「愛のゆくえ」で描かれる終わりは、フィクションだろうか。ポールとアートのように、互いへのメッセージを当時の年上のファンは汲み取っていたんだなあ。

面白いのは「哀しき街」。松尾の曲の詞ができなくて、小田さんがワッと仕上げたという。女たちは、男たちは、と珍しい三人称。自分の、ではなく、ひとびとの心象。共作だから、いつもと違う詞作になったのか。

ライブバンドとしての実力が分かる「揺れる心」。演奏はいちばんノッている。と、同時に楽器の響きなどミックスがもうかなり80年代。

問題作は「決して彼等のようではなく」。ロックのリズムに合わせたリフレインの多い曲を、小田さんがついにモノにしている。しかし歌うのは、孤立と決別。改めて、77年のアルバム『ジャンクション』の「HERO」と並べて検討する必要あり。

「あなた」のためには歌うが、「君」とは「心は通わないだろう」。
うわー、そういう使い分けなんだ。小田さんの中に、かなり厳しい、人への峻別がある。
歌詞の中で「君」の使い方を大事にするのは秋元康。この曲には、会場を乗せながら落とす攻撃性があるので、AKBグループがカバーするとどうなるかと、想像してしまう。

「I LOVE YOU」は、ボーカル自体にエコー。ヒンヤリしたところ、好きだといってももうそれは小田さんの赤心ではない、って分かるところに初めて聴いた時は戸惑いと、ある寂しさは感じましたよね。
でもそれは、何かの皮肉ではないんだ。結局、自分にやれることはラブソングづくりしかない、という諦念じみた迫力を感じる。
これもアルバム・バージョン。感想部分でダビングされている英文ニュース読み上げは、もろにジョン・レノン暗殺のことだと聴き取れる。それにオーラスの大コーラスは無い。……と比較している、ということは、僕はシングル・ヴァージョン、覚えているのか。これも再入手したくなった。



『NEXT SOUND TRACK』
1982/エクスプレス-東芝EMI

30年近く振りにピンクのジャケットを手にして、もろもろ、懐かしい。ひゃー……である。
1982年の9月にTBS系で放送された特番のサウンドトラック。いよいよ、5人のオフコース最後のアルバム。放送当時、食い入るように見てそれっきりなので、内容についてはなんとも。

長いメドレーは楽しい。大ヒット「さよなら」の前のシングル、79年の「風に吹かれて」がひときわ光っている。昇り調子の時期に、ひとりだけ置いていかれた、みたいな曲だったので新鮮。

オフコースの名がつけばなんでも売れる時代に、ドカンと特番を作って店仕舞い、という混沌の中での制作なので、新曲は2曲のみ。
でも、そのひとつ、「NEXTのテーマ-僕等がいた-」は、小田さんの全キャリアの中でも屈指では。

またサイモンとガーファンクルの例えになるが。
1970年のいったんのラストアルバム『明日に架ける橋』は、もう一緒にやるのはこれが最後になるな、と分かっている2人が互いへのメッセージを歌詞に託し込んだ、相聞歌集として吟味すると、ちょっともう堪らない……となる、劇的な作品だ。

小田さんも、ヤッさんへの様々な思いを「NEXTのテーマ-僕等がいた-」に盛り込んでいる。そうなってしまったのはなぜか、別れの事態をなぜ今自分は甘んじて受けようとするのか、一緒に音楽を始めた友達が去るのに、どうして続けるのか。そこまで内省して歌っている。
小さな手作り工芸品のような音楽をコツコツ2人で作るのが向いていたのに、アイドルよりもアイドルになって、大げさではなく、カート・コバーンのような追い詰められ方は、していたのではないか。

「歌が僕等を離れていったのは」というフレーズ。
相当、苦しんだのだと思う。同時に、アマチュア精神を大事にしてきた小田さんが、プロとして腹をくくる過程だったのかも。

あと、「YES-YES-YES」のSE。「ねえ、私のこと……」は、『I LOVE YOU』よりも「(好き?)」とより聴こえるような気がした。


 


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