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東京大森のタイ料理店メーサイ

タイ料理レストランメーサイのオーナー、伊藤盛のブログです。

霧の納沙布岬

2005年06月03日 | 思い出世界
1987年6月24日

本日は浜中から根室へ向かう。
昨日はあんなに晴れて,日焼けまでしてしまったのに,
今日は一転。降り出しそうな曇り空。

・・寒い!!

異様に寒い。
朝,ガソリンスタンドで給油のときに,温度計を見たら
12度。
なんだかそれ以上に寒く感じる。海からの風が冷たいのだ。
スタンドの室内でストーブを焚いているくらい。
道東はあらゆる点で,道南とは違う。

人間の密度も全然違うので,給油には気を使うようになった。
集落と集落の間が30キロくらい何もない,とかは当たり前の感じだ。
何か,自然が人間のエリアに迫り出してくるかんじで,天気も
道南とか道央が晴れていても雨,というのが多い。
・・もっとも俺は内地からずっと雨男か。関係ないか(;_;)

霧多布から海岸線を走った。
集落を離れて少し走ると,ムツゴロー王国がある。
実はムツゴローさんは大好きだった。
中学生の頃に一生懸命読んだ。

ムツゴロウの青春記,ムツゴロウの結婚記,ムツゴロウの無人島記,
どんべえ物語などなど,何回も読み返した。
特に,無人島記とかどんべえ物語とかは大好きだった。
無人島でロウソクで暮らす一家。
家族のみなさん,よくついてきたなぁ,などと感心した。

ヒグマの子を飼い初めて,地元の人たちにはずいぶんと変人扱いされた
そうだが,それでも印税を稼いで今度は浜中に土地を借りて
ムツゴロー王国をつくった。
・・好きに生きてて,いいなぁ・・映画なんか作っちゃったりしてさ。

そんなムツゴロー王国,玄関先には門が閉ざされて(当たり前か),
中は見えず。
ただ,敷地内にバッファローが一頭,所在なさげに立ち尽くしているのが
見えた。
あらら,あの人,バッファローなんか養っているのか。この北の大地で。
どこぞの動物園から治療かなんか頼まれてそのままなのかな。

好きに生きて,好きな事をしているように傍目には見えるけども,
果たしてそうなのか。
わけのわからない若者たちも入り込んできて,いろんなトラブルも
あるんだろうし,運営だってお金がとても必要なのだし,
苦労がないはずがないね。

納沙布岬に向かって海沿いの道をひた走る。
ダートになったり,舗装になったり,いきなり海沿いの道になったかと
思うと,駅のホームの長さが列車一両分しかないような,原っぱの
ど真ん中の駅に出て,そのまま線路と平行して走ったり,初田牛(ハッタウシ)
などという,無理矢理漢字を当てた駅名に笑ったりしながらのんびり走る。

空気は冷たいけど,美味しい。
昨日はTシャツでカヌー,今日はセーターやダウンジャケットで着膨れている。
道東,恐るべし。
海沿いの崖の風景は,海からの強風に耐えられる背の低い草木だけが
生き残るために,独特の景観だ。
東北などの崖っぷちとはイメージが完全に違う。
荒涼とした感じなのに、それでもそこにしがみつく植物の生命力。

ゆっくり、のんびり走って、納沙布岬についた。
巨大な駐車場,笹川良一記念館^_^;
笹川さんには別に興味はないけれど,展望台に上がって,
望遠鏡を覗く。
北方領土の国後島,歯舞諸島はガスってしまってさっぱり見えない。
まぁ,これも運命ですな,雨男の。

花咲ガニのスタンド店があった。
当然食べてみる。
が,身もあまり詰まってないし,甘みもない。
店の若い女の子いわく,

「お客さん,今の花咲食べてこれが花咲ガニだーって思わないでね。
 8月から身が詰まってきてすごく美味しくなるんだわ,これが。」

だそうで。

「お客さん,バイクでどこから来たの?東京?
 いいなぁ~~」

いいなぁ~~に切実なものを感じた。
そうかもしれない。
ここまで人の密度が薄いと,東京に憧れるのはわかるよ。
でも,東京なんかろくなもんじゃないんだけど・・
人は無い物に憧れるんですね。
ほんとに人なつっこく、素直な笑顔を見ていると、東京なんかに
こない方がいいんでないかい?と言いたくなる。でも言わない。

納沙布から野付半島までの海岸線は枯れたトドワラとか,白樺のような
木とか,なにやら本当に寂しい道が続く。
この日は,野付半島の付け根のところにある民宿のつけに飛び込みで
泊まった。
明日は野付半島を歩こう・・







カヌー初体験

2005年06月01日 | 思い出世界
1987年6月23日

昨日の晩は,霧多布(キリタップと読む)の旅人の宿,
「きりたっぷり」に泊まった。
オーナーの武士さんが握る寿司が夕食,という面白い宿である。
江戸前のネタではなくて,いわゆる地物の魚を明るく楽しいおしゃべりと
ともに握ってくれる。
キングサーモンの握りとか、つぶ貝の握りとか、地物のカニの
握りは美味かった。

この人も旅人で,確か東京から来た人だったと思う。
とにかく,冗談言いながらしゃべる,しゃべる。

「北海道をぐるっと旅して,結局霧多布に戻って来ちゃった。
 北海道で一番好きな場所がここだったのね。
 で,金もないし,しばらくこの町でぶらぶらしてたの。

 ズボンに藁の縄をバンド代わりに,胸はって歩いてたら,
 ある物好きなおっさんが金と場所貸してやるからって・・
 で,こんな仕事始めちゃった。
 みんなも面白い格好して気に入った町を歩いてみたら?
 良いことあるかもよぉ~。」

握ってくれる寿司は一人前を握り終わると,その場のみんなに聞く。

「まだ,足りないよぉーと言う人,手を挙げて!」

当然,若者が数人手を挙げる。
行き渡った寿司の量はけっこうな量だったので,俺は挙げなかった。
普通の2人前近くあるかな。

「よっし,どうぞっ」

手を挙げたお兄さん方に渡されたのは,とびっことイクラを入れた
でっかーい,おにぎりでした^_^;
そうね,一泊二食つきで3800円の宿ですからねぇ。
これでも武士さん,薄利でやっていたと思う。

さて,今日は武士さんの宿でやっているカヌー体験コーナー。
参加料がなんと1000円。
ウエットスーツ,カヌー一式貸してくれて,教えてくれて
同行してくれて,一日遊んで1000円。
(今はいくらでやっているんだろうなぁ・・)

朝9時30分くらいから準備。
ウエットスーツがぴちぴちときついので,なんとか着込んで
待機していると,ワンボックスカーで武士さんがポイントまで
カヌーごと運んでくれた。
武士さんと参加者4人。

湿原の中を,細い川がいくつも走っている。
そういう支流が重なり合ううちに,いつのまにか大きめの川が
できあがる。それが浜中湾に流れ出していく。
その流れにのっていくコース。

カヌーは初めてだったが,なかなか腕が疲れる。
流れはゆったりとしていて,全然緊張感はない。
水深は4~50センチくらい。
深いところでも背が立つ。
運が良いなら,蝦夷鹿とか,鶴とか見ることが出来るそうだ。

「わぁーい,こんなに天気が良いと日焼けしちゃうなぁー。」 

20才くらいの女の子が叫ぶ。
この宿に連泊しているらしくて,オーナーの武士さんとため口で
冗談を言い合っている。

一生懸命オールを漕いでいて,疲れて休んで流れにまかせてみる。
カヌーが横になったり,縦になったり。

「こらこら,なまけちゃいかーん。ちゃんと漕いで。」
と,武士さん。

水は実に綺麗。
手をちゃぽんと入れて冷たさを楽しんでいると,時々手に
川底が触れる。
あ,良い物見つけた。

「シジミがいるよ。いっぱいいる! でっかいなぁー,あさりみたいだ。」

道東はシジミまででかいのか・・
どれどれ,見せて~と女の子が言うので,ぽーんと放ってあげる。
女の子のカヌーから少し外れて・・手を伸ばしたけど届かず,ぽちゃん。
その子は体勢を崩して,グラグラっとカヌーが揺れる。

「ああ~,私をチンさせようとしてるでしょぉ~?」
と可愛くにらむ。
さっき,宿でウエットスーツを着て足を組み,ふてぶてしく
タバコをふかしていた娘とはおもえん。

河口に着くまで2時間ほど,ゆっくりとしたカヌーの旅を楽しんだ。
着く頃には,海水浴に行ったみたいに日焼けしてしまったが,
ゆっくりと動くってけっこう楽しい・・

宿に戻ってから,霧多布岬へバイクで行ってみた。
珍鳥エトピリカ,という鳥が住むという・・が,海猫に駆逐されて
今はもう見ることが出来ないそうだ。

この海猫・・つまりカモメ(なんで呼び方が変わるの?)なんだけど,
海鳥の中ではカラスの様な存在で,とにかく悪役。
海鵜や,オロロン鳥などの貴重な海鳥の雛や卵を狙うわ,自分が海に
潜って魚を取れないもんだから,他の鳥の取った魚を奪ったり,
はては弱い鳥を襲ってつつき殺して食べる。

はっきり言うと,滅びた方がいい鳥である。
自然の中ではこんなろくでなしでも,重要な役割があるんだろうけど,
にくたらしいことこのうえない。

しかし,そんなクソ鳥でも,岬の断崖の下から海風に吹き上げられて
グライダーのように上昇してくる様子は美しいものだ。
見とれてしまう。

海鵜が遠くの海でぽちゃんと海中に消えた。
そのあたりをじっとみつめていると,しばらくしてぱちゃり,と
水面に出てくる。
それを繰り返す・・
海からの風がきついけど,飽きることもなく眺めていた。
鳥はいいなぁ、奇麗だなぁ。


 

尻羽岬の海猫

2005年05月28日 | 思い出世界
1987年6月22日

朝,起きるとへそのダニとの戦いの跡がまだ痛む。
ユースで赤チンを使わせてもらっただけ。
みなさま,野原で寝転がるときにはダニにご注意下さい。
大自然様は厳しい仕打ちもいたします^_^;

出発する前に,おふくろさんへ何かうまいモノを送ることにする。
和商市場へ出かけて,色々と物色することにした。
いやぁ,すごい。
新鮮な魚介類が道南や道央とは比べものにならないくらいに豊富で,
しかも安い。

はまぐりの様なあさり(北海道はあさりもでかい)が山盛りで300円。
甘えびがてんこ盛りで250円!
ウニがけっこうな量で600円くらい。
でかいホタテが10枚くらい入って、400円くらい。
ホッケやニシンや見たこともない旨そうな魚もばかみたいに安い。
なんじゃこりゃ,という値段。
(18年ほど前の物価なので、その辺はよろしくどうぞ(^^;)

毛ガニだけはそれなりに、いっぱい2000円くらいから、5000円超えるものまで。
まだ、カニの種類はあまりない。これからが旬なのですな。

ウニと甘えびを自分の昼飯用に買い込み,ばかでかい殻つき牡蛎と
毛ガニを送った。
上手く牡蛎を開けられると良いけど・・まぁ子どもの頃に地元の海の牡蛎で
やってるから大丈夫だろう。
炊いた白米と醤油も買い込み,11時すぎにやっと出発した。

海沿いの道路に出て,少し走ると昆布森海岸という海が眺められる丘で
バイクを止める。
さっきのウニをご飯に乗せて,醤油を少しかけてウニご飯。
アーンド甘えび。
旨い!!
そりゃ旨いさ,でも物には限度というものがあるなぁ。
この大量のウニと甘えび,意地で食べきったけど最後は気持ち悪かった。
美味しいものはすこーし食べるのがいいのであります・・・

このあたりの地名ってもろアイヌ語。
ポンヌ飯時(おもしろっ),チョロベツ,セキネップ,ワカチャラセ,
他の地名も音が漢字をあてやすいものは漢字をあてがって地名に
してるんだけど,あまりにも面白い音の地名はそのままカタカナで
地図に載っている。
漢字があてられなかったのね。

豪快な崖が続く海岸線,ときどき湾をながめると,流石に昆布森海岸,
昆布がいやぁぁぁっていうくらいに取れるらしい。
トラックに極限状態まで昆布を積んで,ゆっくりと作業場まで走って
いた。
のりきらなくて,トラックのケツからずるずる引きずっている。
東京で買えばど高い高級昆布なのにねー。

尻羽岬という岬の先端まで行ってみる。
バイクを駐車場にとめ・・ないで柵を越えてバイクで行けるところまで
行ってみた。
道とは言えない。
雨でぼっこりと削れて、でこぼこ。
面白いトライアルコースだ。
高く伸びた草の中をずんずんと岬の先端,崖っぷちを目指す。
着いた。

・・凄い。
高さは100メートルくらいあるだろうか。
崖の前方に向こう側の陸地,その間に海の浅瀬に白波がたっている。
崖の下から・・海猫がばぁぁーっと上昇気流に乗って群で上がってきた。
凄い。
まだもう少し,本当の先端までは距離が数メートル。
でももう足が動かないや。
道東では無名の、お薦めポイントです。豪快で素晴らしい眺めだよ。





釧路湿原のダニ

2005年05月24日 | 思い出世界
1987年6月21日

釧路まきばユースにて,気怠い朝を迎える。
昨日の原始の林道の恐怖に負けたのはショックだったけど,
山深い林道,たとえば人が使わない登山道に近いような道だったら,
どこでも同じくらい恐いはず。
内地と違って,ヒグマというプレッシャーがあるし・・
良い勉強になったよ,ほんと。

今日は釧路湿原を走ろうか。
よく旅行のパンフレットに載せられる,湿原を蛇行する川,まわりを
お散歩する鶴。
あんな景色が見られるのだろうか?

走りだして気がついた。
そうだ,お金をおろさないともうないや。

釧路市内の北海道拓殖銀行(今は亡き・・)
15万ほどまとめておろした。
これから先,道東,道北と回るとど田舎に拓銀があるかどうかわからないし,
不安な分,まとめおろし。

さて,釧路川にそって上がっていき,寄り道しながらダートに入った。
国道を外れて,湿原のど真ん中のダートをゆっくり走っていく。
小砂利を敷いた、フラットな道。

・・なんも見えない。やたら背の高い草しかみえない。
そう,パンフレットによく載るような景色って,展望台の様な小高い場所に
登らないと見えないのである。
ときどきそれっぽく蛇行する川にあたるけど,まぁこんなものかな,と
言う感じ。
釧路湿原は高台から見るべし。
湿原に入るならカヌーが面白そうだ。
というか、カヌーしか湿原を楽しむ方法はないんじゃないかな。

しばらく走ると、踏み分け道があるので寄り道してみることにした。
トコトコとセローで登っていくと、原っぱに出た。
大きな木がある。
木の横にバイクを置いて、ごろんと横になる。
ざわざわ、ざわざわ、丈の高い草たちがゆれて騒々しい。
水に濡れた土と、草の匂い。強い強い匂い。
気持ちがいい・・眠くなりそうだ。
眠ってしまえ。

・・20分くらい寝たみたいだった。
起きあがって遠くを眺めていると、馬の親子をつれたおじさんが歩いてくる。
おじさん、のたまう。

「な、何をしてるのかい?こんなところで寝てるのかい?」

・・うん、気持ち良くて眠いんですよ。
 凄く眠い。
 おじさん、それ道産子の馬ですか? 可愛いねぇ。
 写真撮ってもいいですか?

「そりゃあ、なんだか嬉しいけども・・」

おじさん、なんだかとてもうぶというか、顔を赤くして馬の前で
どうしていいか分からない様子。
おじさんと道産馬の親子を撮ると、馬の前に立って、おじさんに
カメラのシャッターを押してね、と頼んだ。

「こ、こうかな?」

とおじさん。
信じられないことに、ファインダーを覗かずにカメラも構えず
えいっとボタンを押すみたいにシャッターを押す。
デジタルカメラはまだこの世に生まれてないっちゅうの!

・・あ、ああのぉ・・おじさん、それじゃあ駄目だよ。
カメラのこの小さい窓のところを覗いて押してね。

今度はなんとかやってくれた。
おじさんのあまりの浮世離れした様子に、なんだか呆れるやら
感動するやら。
是非、写真を送りたい。住所と名前を聞くと、
おおざっぱにこのあたりの地名と名前だけ書けば届くという。
地番とかいらん、という。
うう・・まぁいっか。
やってみますよ。田舎ならばありえる話しだし・・
(東京に帰ってから写真を送った。そしたら娘さんの代筆で
 絵はがき数枚とお礼の手紙を送ってくれた。
 おじさん、字が書けないのだそうだ・・・
 なんというか、考え込んでしまったけど、北海道の僻地なら
 あり得る・・)

夜、ユースの風呂に入り、部屋のベッドでさぁ、寝ようと思ったら
へそのあたりに激痛。
・・いて、いてててててて!
慌ててシャツを脱ぎ捨ててへそを見ると、大きなダニが血でぱんぱんに
腹をふくらませて頭をへその肉の中にめりこませている。

おおおっ
これがあの有名なダニってやつですか!!
よっしゃ!
ライターを出してダニの尻をあぶる。これで逃げるはず・・・
逃げない!もっと痛くなってきた!
ああ、もう駄目。
おもむろにがっとダニの身体をつまむと、ひきちぎった。
見事に頭が肉のなかに残っている。
うえ・・・
スイスアーミーに付いている毛抜きで頭をほじくり出す。

ううーむ。
どこで食いつかれた?
湿原の中で眠ったし、道産馬が可愛かったからすりすりしたし、
あれかなぁ・・
ダニの感想ですか?
激痛です、はい。





恐怖の道東林道

2005年05月21日 | 思い出世界
1987年6月20日。

朝7時くらいに起きて,念入りにバイクの点検をする。
というのも・・
実は北海道林道の中で,メインの目標にしていた留真林道。
この日はここを走る予定にしていた。
全長およそ70キロ。
浦幌温泉から白糖丘陵を越えて国道392号線にいたる険しい山岳ルート。

昨日泊まった池田町のまきばの家。
近くのラーメン屋に旅人ノートがあった。
「明日はいよいよ留真林道を走る。俺のXL が壊れないよう祈る。
 明日の新聞をこうご期待!!」
・・・・・なんじゃこりゃ。

あと,類似の書き込みがいくつか。
相当に手強いことで有名で,当然あの村野さんの本にも出ている。
「この林道でパンク修理するのは,相当に勇気が必要である。
 なぜなら,クマが出没するから。」

うーん,でも俺だって,自殺の名所青木ヶ原樹海の林道を走って
富士山5合目まで登っていた男だい。
(で,スバルラインを料金払わないで夕方下る。せこい。)
あの道ほど荒れて急勾配できつい道があるはずがない。
トライアル車でもビギナーは登り切れないくらい。
・・と思っていたけども。

さてさて,思いきり気合いを入れて,セローを走らせる。
スーパーでジュース2本とパンを買い,ガソリンを満タンにしてオイルを
交換。
さて,林道の入り口に・・
入山の届け書,というのがあった。
つまり,この道に入っていって,何かあったら行方不明者,って
やつになってしまうので一応書いてね,ってことですな。
少し迷って,やっぱり書かない。
いくらなんでも大げさだい。

さて,どんな林道なのか。
ぱっと見て,一言で言うならば「恐い」。
要するに人間が通った気配がない。

林道の入り口あたりから数キロ走ると,もう道の真ん中に草ぼうぼう。
道の両端から伸びている雑草が木の様に多い被さってきて,
草に触れずに走ることが出来ない。
要するにだーれも,ここ使ってないのね。わあお。

とにかく前へ・・
すぐにタイトなコーナーが続いて,少し直線,またコーナーが続く。
そんな繰り返しだけどスピードがのらない。
なにしろもの凄い山奥だ。
ここまで完全に人の気配がない道は初めてである。
道幅は四輪の車幅ぎりぎり。
でも草が多い被さってくるから実際の道幅は登山道くらい。
コーナーの深さとか全く読めないし,山深いので午前中なのに信じられないくらい
暗い。
いきおいスピードは弱気になっていく・・

15キロほど走っただろうか。
太い鎖が張ってあった。
通行止めの看板。
なにやらかいてある。
「クマ,出没。危険」

あ,ダメだわ。
伊豆あたりの林道走ったときは,こういう鎖は崖っぷちを回避して
越えたり,強引にくぐったり,シリンダー錠を開けたり(壊してはいません。
念のため。・・でも良い子は真似をしないで下さい^_^;)したけど,
もうあきまへん。
本当に今すぐにでもクマが出てきそうなムード。

ああ,俺の負けだわ。
・・と引き返すことに決めた時,あきらかに安堵している自分がいた・・
もしもバイクが壊れたら。
もしも道に迷ったなら。
もしも夜をここで明かすことになったなら。
想像すると高速道路の時速200キロより恐い。

深山の道というのは恐いものなんだなぁ。
その時初めて実感しました,はい。

千春のおうち

2005年05月18日 | 思い出世界
1987年6月19日

朝,塩狩温泉ユースでの朝食後,今掘あてに葉書を書く。
たぶんサロマ湖で会えるであろう。
少し早めに出て,距離を稼いで黒岳に登りたい。

しばし富良野とはお別れだ。
キック一発,今日もエンジンはごきげん。
ここまで全開走行しなければリッターあたり35キロ前後は走ってくれる。
バランスの良いバイクだなぁ~
地震で層雲峡が崩れて,国道が交通止めになっていたんだけど,
昨日やっと開通したとのことで,今日は層雲峡眺めながら走ろうか。

昨日,Nさんと美瑛でのんびりしたあと,彼女の友達のアパートへ
おじゃました。
お友達の赤ん坊を抱きながら,Nさん達の会話のそばでぼぉっと
コーヒーを飲む。
場違いな感じだけど,二人ともごきげんだし,昔話してるし,
勝手にくつろぐ。
「そうだよねー,2回目の家出したときだったよね~。」
などと,なんじゃいそりゃあ,と突っ込み入れたくなるような
お話をしている。
考えてみると,女の子の部屋でのんびりしてるなんてのは何年も
無かったなぁ。
仕事しすぎだわ。

3時ころにお別れしたんだけど,別れ際に言われた。
「なんでもいいけど,事故るような走りはしないようにね。
 まぁ・・伊藤さんの走りなら大丈夫か。ゆっくりだから(^_^)」

・・おいおい。林道ではけっこう飛ばすんだけど・・ま,いっか。

北海道をぐるっと回ったら,また富良野に寄るので会いましょう,と
いうことで(^_^)/~

軟弱にも黒岳ロープウエーを使って,観光客コースで黒岳を登ってみた。
うーん・・旭岳のほうが綺麗。やっぱり観光客が行きやすい所は荒れた感じが
する。
早々に切り上げて,層雲峡を右手に見ながら走る。
石柱状の岩が切り立った崖にへばりついた感じ。
感動するほどの事もないけど,見応えはある。
なんというか,素晴らしい景色に慣れて来てしまった感があるかな。
贅沢な話。

足寄に寄った。なんでかというと,松山千春の家が観光スポットになっている,
という話を聞いて,これは面白い。是非行ってみようか,と。
いやぁ,わろた。
千春さんの家の前は巨大な駐車場になっていて,トイレまで設置されている。
家の玄関のところに巨大な千春のポスター看板!!
(この頃はまだ髪の毛がある。しかも長髪である)

大きな観光バスが何台も来る。
バスが止まるときゃあきゃあと女性達が降りてきて,写真を撮ったりして
20分くらいそこにいる。
そして彼女らが引き上げると次のバス。
また,次のバス。また・・・エンドレス。
はぁぁ・・にゃるほどねぇ。
まさしく観光スポットだねぇ。

 






Nさんとデート

2005年05月11日 | 思い出世界
1987年6月18日

朝9時過ぎに,富良野YHにNさんが訪ねて来た。
念願かなって・・のバイクでおデートである。

「おはよぉー,場所は知ってたけど,来るのは初めてだわ。
 何か綺麗な建物ね。ユースホステルじゃないみたい。」

・・そうだよね。ペンション風だもん。
 中身もペンションみたいだよ。

昨日電話でどこに行く?と聞くと,
「このあたりはなんにもないよ。
 畑ときつねくらいしかないよ~」

・・え~,畑も綺麗じゃんか。
 まぁ最初に麓郷に行ってのんびりしようか。

てなわけで,とりあえずは麓郷に向かうことにしていた。
やっぱり地元の自然とかには興味がないらしい。
そんなもんなんだろうなぁ。
良いとこなのに。

Nさんがバイクを富良野ホワイトの前に止めると,待っててもらうことに
して俺がセローを引っぱり出す。
「伊藤さん,伊藤さん。 可愛いじゃないですかぁ~,いいなぁ。」
と,小さな声で仲良くなったスタッフが声をかけてきた。
・・いいだろぉ~。
と笑って,スタッフに手を振ってNさんのところに戻る。

Nさん,バイクのミラーでお化粧していた。
「へへ・・何か久しぶりにお化粧しちゃった。」

ふぅん,ボーイッシュな人だと思ってたけど,なんだか女っぽい。
女性は深くて面白い。
というか,可愛いので驚いた。
麓郷までゆっくり流して走り,駐車場にバイクを止める。
おや,パリダカ仕様がある。
Aさん,また今日も来てるのか。

「伊藤さん,私もここは初めて来たよ。ていうか,私が住んでいたころは
 無かったものね。」

・・ああ,北の国からが始まったくらいの頃?
 ここであのドラマを撮ったのかぁ~

「私,おにぎり作って来たんだわ。食べようか?」

おおっ,これは素直に嬉しい。
男まさりの走りをする人なので,そんな女性らしいことを
するとは思わなかった。わーい(^_^)

ベンチに座って早めのお昼ご飯になった。
ここって要するに観光客の為のスポットなんだけど,地元の親子づれらしき
人たちも多い。
何があるってわけではないけど,丸太小屋とかに撮影の写真とかドラマの
ワンシーンとか,ファンにはたまらないのであろうか。

「伊藤さん,この人が噂の女性ライダーですか?」

おおっ,パリダカAさん。いきなし登場。
とりあえずご紹介する。
あらたまって一緒にデートなんてなぁ,というムードだったので
彼のかるーい冗談話しでお気楽になった。

キツネが餌あさりに来ていた。
おおっと,以前ブーツを盗まれかけた俺は身構えてしまう。
観光客らは大喜びでパンやらお菓子やらあげている。
なごむ雰囲気なのである・・が,キツネの目を見ると眼光鋭く上目遣いする。
毛は冬毛ではないからやせて見えて汚い。

「キツネはエヒノコックス・・だったかなぁ。虫を持ってるのよ。
 人間に移ると体の中で生きてるからなかなか直せないの。」
と,Nさん。

「ええっ,そうなの?俺は昨日何度もさわっちゃったよ。
 すぐ逃げるからなでられないけど,少しなら触れるんだよ。
 あなた,詳しいですなぁ,流石,流石。」
とパリダカAさん。

言葉かろやかに冗談を連発していくAさん,とても暗い過去を持つようには
見えないぞ。
しばらく三人でほのぼのとそこでおしゃべり。
こんな日もありだよな。









美馬牛の朝日

2005年05月03日 | 思い出世界
1987年6月17日

今日の起床時間,なんと午前3時。
パリダカAさんとのそのそ起き出す。

そっと富良野ホワイトユースの玄関を出て,エンジンをかけても
大丈夫なところまでバイクを押す。
いくらなんでも,こんな時間に宿の近くでエンジンはかけられない。
まだ顔も洗ってないので,寝ぼけて足がもつれた。

わぁっ,・・ガシャーン・・
初めて愛車セローを倒してしまった!
ダートの高速コーナーでも,内地のガレ場でも倒したこと
ないのに~・・
バックミラーがあさっての方を向いてしまった。
メガネレンチでぐりっと直す。
このバイクではまだ一回も転倒してないのに,傷が付くときは
こんなもんだ。

前夜,同部屋になったヤマハDT200の若者とパリダカAさんと3人で,
美馬牛で朝日が登るのを見よう,と盛り上がった。
3時に目覚ましがなり,必死に起きてパリダカAさんとDT200君を起こしたが,
DT200君,どうしても起きれない。

「うう・・すいませーん。やっぱり駄目です。
 置いていってくださーい。」

・・はいよ,じゃあねー。
と,あっさりと見限り,部屋を出ていこうとすると,
「あああ~,根性なしと思われただろうなぁ~・・」
などとつぶやいていた。
面白いやつだね。

さて,まだ暗い富良野の町を走りだす。
いつもはねずみ取りが恐いのでゆっくり走る道を,夜明け前なので
気楽に飛ばす。
とても風が冷たい。
あっと言う間に美馬牛到着。
農道をゆっくりと上がり,適当な撮影ポイントを探す。

前日,富良野を10年以上撮り続けている前田真三という人の
撮った絵はがきを見て,
「伊藤さん,是非こんな写真を撮ろう!」
とかいう話になった。
同じ写真なんか撮れるはずないけど,こういう光景があるなら
見てみたい。
俺が昨日見た夕焼けの富良野は凄かったけど,前田さんの撮った
朝の美瑛,美馬牛も素晴らしかったから。

朝日が登る。
明るくなってきた。

・・・・・・,ああ,早起きして良かった・・

パリダカAさんと顔を見合わせ,あそこから
撮るべきだ,いや,あっちだ,と走り回る。
結局・・こんなの写真に撮ろうとするだけ虚しいような。
目に焼き付けておいた方が良い。
パリダカAさん、あの朝日に向かって走るんだ!と
飛び出せ青春みたいなポーズを取る。
しゃあないので、撮ってあげる。
ユースに帰って,もう一度寝よう・・

二度寝の後,起きるともう小雨になっている。
連泊しようかな。
さて,朝食後に旭川のNさんに電話してみた。
明日は暇だから,バイクでくる,という。
「麓郷にまだ行ってないの?じゃ一緒に行こうか。
 富良野ホワイトって私知ってるよ。私がそこまで行くわ。」

おお,単純に嬉しい(^_^)
連泊に決定。明日はデート。







富良野よいとこ2

2005年05月01日 | 思い出世界
1987年6月16日・・のつづき

ロープウエーで旭岳の中腹まで向かう。
人の手の入らない原始林がずっと続いている。
9月になれば,ここが一気に紅葉するのだという。
日本で一番早い紅葉かな?

終点につくと,すぐ目の前に北海道最高峰の旭岳ピークが
見える。
登れそうかなぁ。・・登ってみよう。
あら、見たような顔が。

「伊藤さん,会えましたね!」

富良野ホワイトで一緒だった奥村さんだった。
山頂までいって,そこから半日ほど山歩きして戻る,という。

「縦走したいけど,今回は会社の休みが長くとれなかったから・・
 明日には東京にもどんなきゃならないんすよ。
 次回は縦走三泊四日コースだけを目的に北海道に来ます。」

・・凄いですねー,飛行機使って,他には何も見ないで山だけ
 なんですねぇ。そんなにここ,良いですか?」

「滅茶苦茶に良いですよ。
 縦走コースの白雲小屋からスレート平あたりには北大の
 熊研が観察している牝のヒグマも運が良ければ見れるし。
 もう少ししたらこのあたりのお花畑は良いですよぉー。
 トムラウシには是非,登って下さいね。素晴らしいから。
 クマは大きめの鈴を鳴らしながら歩けば、おそわれる事は
 滅多にありません。」

・・ひ,ヒグマっすか。そうすか。勘弁して下さい。

「なんでぇ? 格好いい生き物だよぉ。筋肉の山みたい。トムラウシも別の個体が
 何頭か、なわばり持ってるみたいですから、運が良ければ・・」

・・いや、その、会ったら運が悪いと思う・・

ヒグマの剥製でも見たことのある人ならば想像出来るでしょう。
あのばかでかい前足に迫力の爪。あんなもんで殴られたら
首がもげて頭が10メートルくらい飛んでくわ。
それに実物を見たことのある人ならわかると思うけど、
あの巨体に似合わず不気味にフットワークが速いんだもの。
逃げられない!

そこらに高山植物チングルマが咲いていた。
まだ他の花には早いようだ。
トライアルブーツのままで,登り始めた。
靴底は登山靴に負けないグリップだけど,すねまで覆って
くれちゃってるので暑い。

しかし暑いのはロープウエーの周辺だけだった。
登り初めたら凄い風。下から吹き上げてきて,体も持ち上がり
そうなくらいだ。
晴天なのがすくいだなぁ・・
ガレ場が続いて,すぐに大きな岩もごろごろしてる道になる。
岩に不思議な白い氷の花が空に向かって咲いている。
岩についた水分が,下から吹き上げる冷たい風で凍って,
そこで結晶になって花のように固まっている。
時々それが強風で吹き飛び,青い空に向かってきらきら光りながら
飛んでいく。
わぁ・・・

「伊藤さん,運がいいじゃない? こんなの滅多に見ることできないよ。」

前を歩いていた奥村さんが子どもみたいな笑顔で笑う。
こんな景色、写真には写せないな。凄いや。

山頂につくと,奥村さんは山の裏側のコースに行く。
お別れを言って,俺は左回りでロープウエーまで戻った。
下界に戻ると,上と違ってかなり暑い。
ロープウエー駅の駐車場に止めておいたバイクにのり,エンジンを
かけると,
バゥバゥバゥッ,ガゥッ,と突然,救助犬?ピレにおそわれた。
脅しではなく,マジで俺の足にかみつこうとする。
慌ててバイクを発進させた。
危ういところで安全地帯まで避難して,後ろを振り返ると
飼い主らしきおっさんがピレを捕まえようと追いかけている。
・・あんなやばいもん,飼わないでよ,もう。
さっきおとなしかったからといって,油断できないなぁ。

北美瑛までのんびり戻り、さぁ、見てやろうじゃないの。
美瑛,美馬牛でのんびりすることにした。
舗装道を車と走っていると気がつかなかった。
農道を入り、少し小高い丘に登ると、全体が見えた。
なるほどぉ~・・

なぜ,ここが綺麗と言われるのか,よくわかった。
なだらかに,優しく小さな丘が連続して,そこを麦の緑と
まだこれから植えるじゃがいも畑の耕された土が見事なパッチワークの
ように組合わさっている。 芸術的。
これを最初から狙って作ったとしたら,すごい。
たぶん,一生懸命麦とじゃがいもを土地の形を生かしながら
作っていたら結果的にこうなったんじゃないだろうか。
農家に質問してみないとわからないけど。

日が暮れてきた。
ポォーポォーと、何かわからないけど鳥の声だけが聞こえる。
フクロウか?
静かな場所が、だんだんと薄い赤で満たされてくる。
夕日がじゃがいも畑の土と,麦の芽をあたりの物,人,全てを赤く染めて,
見たこともないセピアカラーの世界になっていく。
きれいに耕された土が、オレンジのような色で絵みたいだ。
慌ててカメラを三脚にセットして,セルフタイマーで撮影した。
何枚も,何枚も。
見なければわからない。行って見なければわからない。
説明してもわからない。
しゃがみこんで,落ちる夕日を呆然と見ていた。





富良野よいとこ1

2005年04月29日 | 思い出世界
1987年6月16日。

あなたは富良野と言えば,何を思い浮かべますか?
昨夜,富良野ホワイトユースで夕食の後にそんな話題になった。

後からユースにやってきた,パリダカAさん,
「そりゃあドラマ北の国からのロケ地,でしょう。他になんか見るモノあるの?
 あ,倉本聡さんがシナリオ書いてるっていう時計台ってログハウス喫茶店?
 ドラマにもよく使われてるよねー。今日は麓郷でキタキツネとまったりして
 来ましたー。」
 (うう、この人らしい。)

同部屋になった奥村さん,
「大雪山縦走の入り口,旭岳が綺麗に見えますね・・
 ここから近いし,適度に町だし,居心地いいですよ,ここ。
 明日は旭岳登りに行きます。」

女性スタッフ山が大好きのIさん,
「私も大雪山系に早くいっぱい登りたーい。
 ここで働きだしてから,まだ全然山に登ってないもん。
 とーさん、お休みくださーい。」
 
例のスタッフ,
「そりゃあ,冬のダイヤモンドダストでしょう。うっとりしちゃうよ。
 夏のキタキツネは汚らしいけど,冬に雪の上で見ると可愛いよー。
 冬のキツネは毛がふわふわ。ジャンプして、顔から雪にささったりするの。」

ペアレントさん,
「冬のスキーはいいよ~。1月後半からはもう完全なパウダースノーだもん。
 ユースのすぐ近くにあるし。富良野スキー場はコースも豪快で良いよ。」

ペアレントさんの奥さん,
「これからシーズンのラベンダーでしょー。他の花畑もいっぱいあるし,
 綺麗よー。あとこれからじゃがいもとトウモロコシがすっごく美味しくなるし。」

無口なもう一人のスタッフ。手作り家具の作業場で
いつも頑張っている人がぼそりと言った。

「美瑛,美馬牛の麦とじゃがいもの畑。」

・・え?畑?

「そう,畑。 これからの季節,ここの畑は日本で一番美しくなるよ。
 なんで畑がこんなに綺麗なんだろう。
 朝早く行ってみたり,夕方日が暮れる時に行ってみたり,
 いつ行っても見飽きないなぁ。
 そう思って,僕はここに長くいるの。」

かっこいい奴だなぁ。
わかりました。
必ず見に行きますよ,美瑛,美馬牛。

てなわけで,本日は旭岳と美瑛,美馬牛を見にいくことにした。
富良野ホワイト連泊することにして。
天気は久しぶりに晴れ!
パリダカAさんは今日はのんびりするとのことで、街中をお散歩だそうだ。

気分よく走りだした。
豊頃付近のダートでズタボロになったメットのシールドを,
途中の中富良野のバイク屋で買いかえた。
安物だが,シールドを変えたとたんに,走るのが凄く楽になった。
シールドの無数の傷で,前が良く見えなかったんだもの。

ペアレントさんいわく,このあたりは町中だけでなく,あまり
スピードを出すと捕まるよ,とのこと。
晴れた日は,良くネズミ取りをやっているらしい。
気をつけましょう。

流れにまかせてゆっくり目に走り,北美瑛町で右折。
一路,旭岳を目指す。
良く整備された道を,山に向かってはしる。
途中,村落もあるし,田圃も畑もあるけど,でもなんだかもう
山深いムードだ。
すぐに分かれ道。
まっすぐ行けば,天人峡温泉,左に折れてまた走る。
天人峡温泉は大雪山縦走ポピュラーコースのゴール地点だ。

上り坂がはじまる。
けっこう面白いワインディングで,登り道だから安心して
飛ばせる。
しばらく登ると,右手に温泉旅館,通り越してすぐ左手に
白樺荘ユースホステル。
このユースには後々,大変お世話になることになる。

さらに直進すると,ロープウエーの乗り口があった。
このロープウエーで旭岳の中腹までいける。
縦走する人,あと旭岳の4時間コース,8時間コースを
回る人たち,山頂に登るだけの人たち,ロープウエーだけのって,
降りて来る人たち,ロープウエーも使わずにここから登り始める人たち。
いろんな人がいるものだ。

切符を買ってさて,乗ろうとすると入り口付近に馬鹿でかい白犬。
雪山の救助犬でなんとかいう種類・・忘れた。
管理人がめんどうを見ているのかな。ピレ,と呼ばれていた。
おとなしく,首のまわりをこすってやると嬉しそうにしている。
んじゃまぁピレちゃん,いってきまーす。

つづく。

富良野ホワイトYHにて

2005年04月28日 | 思い出世界
1987年6月15日

今日もパリダカAさんと旅は道連れである。
ゆっくり起きて,富良野を目指す。
今日の予報は午後より所によって雨。もう驚かないぜ。

帰りのトムラウシ林道。Aさん,気合いが入っていて,とても
速い。
余裕をもって走っていると追いつかれてしまう。
で、本気で走る。

・・運動神経抜群やんか!スポーツやったらいいねぇ。

「疲れることはやりまへん。一生懸命走らないと,伊藤さんは
 平気で人のこと置いていくからなぁ!」

トムラウシ林道を出て,一般道でとりあえずAさんと
別れて別行動することにした。
俺はトマム林道を走ってから富良野に入りたい。
Aさんは早めに富良野に入って,のんびりとドラマ「北の国から」の撮影現場
麓郷(もう観光スポット化している)で遊びたい。
富良野YHで落ち合うことにした。

新得町から占冠村に抜ける林道を走りたかった。
地図で見るとJR石勝線にからみつくように走っている道だから,
おそらく広い林道だろうと高をくくった。
新得から狩勝峠を越えて落合で左折して林道に入っていく。
ああ,降ってまいりました。
すぐに合羽をきこんでフル装備。もう慣れたものである。

ダートを走り出してすぐに小雨から本降りになる。
やけくそで開き直って走ることにした。
タイプとしては内地と北海道林道の真ん中くらい。
あまりストレートは長く続かないし,タイトなコーナーも
多い。
砂利の大きさが大きいので,前輪が少し取られて危険だ。
顔に雨がぶつかって痛い。
川沿いコースが多くて,山深いけどまだこれくらいなら
恐さはない。気楽に走れる。
(北海道の林道の本当の恐怖を,この時はまだ
知らずにいた。)

途中,休んで川をみつめる。濡れて、寒いなぁ,まったく!
まぁ,Aさん今頃麓郷でのんびりしてんだろうな。

富良野ホワイトYHには1時すぎにはついてしまった。
もう,雨の中にいたくない,といのが本音で,
とにかく屋根の下にいたい。
冬はスキー客が多いので,このYHにはちゃんとした乾燥室が
ある。
濡れた服を乾かさせてもらって一息いれた。
まだこの時間だと部屋には入れないけど,受け付け前で葉書を書いたりして
すごさせてもらう。

実はお盆休みを利用して,友人今掘と植木がバイクで遊びにくる。
俺が長期間ここに来てるから,遊びに行く先を北海道に決めた,と言う。
このYHあてに葉書を出してもらえれば,俺が受け取れる。
ちゃんと今堀からハガキがきていた。
サロマ湖で会うことになっているのである。
どうやって会うか,まだ決めてない。
なにしろ、まだ2ヶ月先の話しだ。

飛行機や,富良野へくるまでの宿とかが決まった事が書いてある。
今堀はセロー(俺と同じバイクだ)に乗ってくる。
飛行機にのせる事が出来るそうで,まぁ高くつく旅だが・・

ここは今まで見たYHとはひと味もふた味も違っていて,建物自体が
おしゃれである。
大きな天井までのガラス張りの居間,吹き抜け,間伐材を利用した家具とかを
作る工場というか、イベント用スペース(おそらく家具工作教室体験、とか)?
そういう場所もあり。
朝はまともなパン食だし、洋食系の食事。
なんというか他のユースとは違って、お客さんを呼ぶ努力を
凄くしている。
狙いは女性客、そしてそれを狙ってやってくる男、ってかんじかな。
この時期でほぼ部屋が満杯なんて、初めてみた。
働いているスタッフは、やっぱり旅人。
お金がなくなって、ここのスタッフになっているけど大雪山に登りに
来ている女の子とか、富良野が気に入って、住むつもりになっている男とか。
色々なやつがいるものだ。
富良野でたまたまここでスタッフやらないかと誘われた若者、
もう一年ほどいるらしいが、

「ここは夏も良いけど、冬がきれいだよ。
 マイナス20度くらいになるから、空気中の水分が凍って、それが
 きらきら光りながら降ってくるの。
 ダイヤモンドダストね。きれいだよ~。」

・・それはきれいだろうね。でも寒くて辛そうだな・・
 もうちょっと気温が下がればバナナで釘が打てるじゃんか。(古い)




 



トムラウシの鹿肉

2005年04月27日 | 思い出世界
1987年6月14日
BS blog Ranking
今日の天気予報。
朝のうちは晴れ,後くもり,所によって雨だそうだ。
俺の向かうところ,晴れなしである。

今日,向かう予定は大雪山系,トムラウシ山の麓のトムラウシ温泉。
山深いので,この予報だとおそらく雨になるであろう。
雨でも,今日は相棒がいるので少しは気楽である。
XL250Sパリダカ仕様のAさんが今日のツレである。

Aさんは神奈川からきた。
ご両親と色々とハードな運命があったらしく,飢え死にしかけたことが
ある,という。
「友達が食べ物持って来てくれて、馬鹿野郎、なんで早く言わないんだ!と
 怒られたっすよ。人の情けが身に染みました。」

本当は詳しく聞いたがあまりに凄いのでここには書けない。
明るくて,楽しく冗談を言う人なんだが,人の内面はとても
難しい。 

朝9時。帯広YHのスタッフ,よっぽどひまなのか,全員で見送りしてくれた。
ライダーの女の子二人と若者っぽく記念写真撮ってみたりする。
気分よくして出発する。
ここのスタッフも全員旅人で,長旅のうちに資金切れで忙しい夏場だけ
お手伝い,という人たち。
多くは北海道を色々見て回って,帯広が適度に小さな街で良いと思った
と言う人が多い。
だが、ちょうどお金が無くなった場所が帯広だったんじゃないかな。
当然みんな,お金はない,でも明るい。

鹿追町あたりまではきれいに晴れていたのに,十勝ダムあたりからだんだんと
天気が崩れてきた。
林道がスタート。小雨もスタートした(T_T)

ここのところ,広くて見通しの良いダートばかり走っていたので,
狭い内地風の林道は久しぶりである。
でも比較的整備されているので走りやすい。
長旅でバイクに慣れて来ているのか,走れていると感じる。
相方になんとなく対抗心を抱いて,飛ばせるだけ飛ばしてみる。

10分も走るとAさんがついてこない。
バイクをとめて,振り返るとすぐに姿が見えた。

「伊藤さーん,駄目だよ。そんなにスピードだしちゃ。
 ついていけん,いけん。」

・・すんません。調子に乗りました。
 パリダカ仕様だし,林道得意じゃないの?

「いえいえ,とんでもございません。あたくし林道は本日が
 初めてでございますよ。街乗りにかっこいいからこれ買ったの。」

・・なんの為のパリダカやねん・・・

再スタート。
なかなか楽しい。内地風林道もやっぱりいいなぁ。
時々バックミラーを見ると,おろろ?
ペースアップしてついてきてるじゃんか。
試しにもう少しペースを上げてみると,しばらくは遅れるが,
またじりじりと追いつきつつある。
おおっ,この人すごーい。もうダートに順応している。

短い林道だし,あっと言う間にトムラウシ温泉についてしまいそうだ。
途中に霧吹きの滝というのがある。
寄り道することに一人で勝手に決めて,バイクをとめた。
追いついてきたAさん,

「どうしたの?伊藤さん。ちょうどのってきたのに~」

・・林道はもうすぐ終わりだよ。
 この下に霧吹きの滝ってのがあるよ。
 おりてみようよ。

「まったく,どうしてこの人はこんなに自然が大好きかねぇ~。
 いいですよ。つき合いますよ・・って,どれくらい歩くの?」

・・ユースのスタッフは20分くらいって言ってたよ。

「死ぬわい・・下るんでしょ? てことは帰りは登るんすか?」

・・そら,きっとそういうことになりまんなぁ~

明るい兄ちゃんである・・^_^;
霧吹きの滝まではスタッフの説明通り,おおむね20分くらい下った。
けっこうきつい勾配なので,確かに帰りが心配。
滝は谷が深い場所にあった。山の木の匂いが濃い。
体を動かしていたから暑いが・・すぐに寒くなった。

「いいね!自然も!けっこう,けっこう!」

やっぱし明るい兄ちゃんである。
登るのは確かにきつかった。
雨で足下が滑り,兄ちゃん大騒ぎである。

林道に戻り,一服。
気持ちいい汗だけど,小雨が気持ち悪い。
すぐに合羽を着なければ風邪をひいてしまう。
東大雪荘にはあっというまについてしまった。
ほんとに短い林道だ。
玄関前にバイクをとめるときに,とめ方で主に叱られる。

「ちゃんと他の人と同じ様にとめないといかんよ!
 他の所にいってもそういう風にやるんだよ。」

うーん,確かに一理あるんだが・・まぁいいや。
どうも俺が童顔なので,学生さんと思われているようだ。
今一つ客扱いされてない。

部屋でここの名物らしき,鹿の焼き肉やらなんやらで
ビールを飲む。
「鹿の肉ですか,さいですか。初めてだなぁ,
 じゃあこの肉の隣で馬の肉を焼いたら? なーんちゃってねー」

明るい兄ちゃんである^_^;
旨いのか,どうかよくわからないけど,怒涛の勢いで夕飯を
食い終わる。 二人とも腹ぺこだったから。

しかし,彼が寝る前につぶやいた言葉は印象的だった。

「いやぁ,親なんて一生ならないと思うよ。
 子どもなんて作ったら,あの親たちと自分がダブルわ。
 仕事も人相手はやだなー。今は派遣で倉庫の運搬機動かしてるけど,
 そういう仕事が一番気楽だわ・・」

俺は自分はめぐまれた人間なのだな,とつくづく思う。









東雲湖の鳴き兎2

2005年04月26日 | 思い出世界
外は曇り。午後から雨だそうだ。覚悟していくぞ!

帯広市内からバスに乗り込む。
バスから眺める風景は、日本とは別の場所のようだった。
牧場があったり、整然とした麦畑、ジャガイモ畑、一つ一つが
スケールが大きい。
でも・・バイクで見る風景とはイメージが違う。
なんだか感動が少ないみたい。
バイクとは、つくづく特殊な乗り物なんだなぁ。

東雲湖につくと、観光客の多いことにびっくり。
みんな鳴き兎見に行くの?、と心配したらそんなことあるはずもなし。
バスで来て、湖眺めてそのまま帰っていくのだそうだ。
湖畔を歩く遊歩道がある。
あまり自然とか、山とかに興味がないのに、なぜかくっついてきた
XL250SパリダカのAさん、すでに腰が引けている。

「伊藤さん、ユースでもらった地図だと遊歩道が切れて、その先に
 行くみたいだよ。あそこから入るんでしょ? 道ないじゃんか。」

・・そうだよ。スタッフの人が説明してくれたし。
 ほら、踏み分け道になってるよ。後は藪漕ぎして行くんだ。
 ほい、れっつごー。

「うえ~、たまんないなぁ。しゃあない、根性なしと言われたくないし、
 行くわ。」

軟弱なセリフを言うAさんに比べ、建築学科4回生くんはとっても元気だ。
ひっきりなしに駄洒落を言っている。
書くと寒いので書かないでおく(^^)

がさがさとひたすらに歩く。
クマザサとかが密集していて、けっこう手強い藪漕ぎになった。
小雨が降っているけど、傘なんか役に立たない。
草や笹の葉についた水滴が、身体にどんどんついてしまう。
アップダウンはないからまだ楽だけど、濡れて体温が奪われるので
2倍くらい疲れる。
8キロって言ってたなぁ。こりゃあきついわ。

少しめげているところ、帰ってくる人達に出会った。

「素晴らしいぞ!頑張って!」

目をきらきらさせて、50才くらいのおっさんとツレの女性が
帰っていく。
・・そうか、そんなに素晴らしいのか?

ずっと森の木と草むらの中を歩いて行ったが、急に岩が多くなった。
草も少なくなり、歩きやすくなる。
目的地についたらしい。あたりはガスがでてしまって、湖の大部分は
霧の中。
岩に腰をおろして休んでいると・・

・・ああ、これか。

すぐにわかった。
霧が晴れてきて、湖の向こう側が見える。
緑のじゅうたんに、きれいに木々が点在して、映画に使われそうな
可愛らしい空間になっている。
誰かが作った大きな箱庭みたいだ。

キュッキュッキュッ、と何かの鳴き声がした。
おおっと一同振り向いて探すと、いたいた。
可愛いリスの大きいやつみたいなのが、岩の隙間から顔を出して
鳴いている。
静かにして見ていると、何匹もいる。
警戒しながらも、顔だけでなく、身体も出してきた。
鳴いてからすぐに顔をひっこめ、また出てくる。
キュッキュッなのか、チュッチュッなのかよくわかんないけど、
仲間に変な奴らがいるから、気をつけろよ、と言ってるのだろうか。
北海道でもほとんど絶滅状態で、ここでしか見られないそうだが・・
確かにすぐ捕まっちゃいそうな感じがするよ。
お人好しっぽいというか、お茶目というか。
可愛いなぁ・・

帯広に帰るバスの中、三人ともぶるぶる震えていたが、後悔はないぞ。
消えてしまう前に見ることが出来て良かった。


 



東雲湖の鳴き兎

2005年04月24日 | 思い出世界
1987年6月13日

えー,本日はまた曇天なり(T_T)
帯広YHに連泊することにして,今日は東雲湖に行くことに
した。バイクには乗らない日である。

ユースのスタッフが言うには,湖の道無き道を2時間ほど歩くと,
鳴きうさぎが生息する岩場に出るという。
そこは,霧がたちこめる神秘的な場所で,霧が晴れると湖の
対岸に童話に出てくるような景色が見え,その場所にじっと
音をたてずに座って待っていれば,鳴き兎が可愛い顔を出して
鳴いてくれる,という。
そんなことを言われれば行くしかないだろう!ということで,
XL250Sパリダカ仕様のAさん,俺,某大学の建築学科4回生くん
の三人で出かけることにした。

朝,疲労で起きれない。ゆっくり起きて,
朝食を済ませると,同宿の若者たちはもうあらかた
出発したあとで,スタッフがワイワイとビデオを見ていた。
「トップガン」だった。

広島から来たクラブマン兄ちゃんも誘ったが,

「そんな疲れること,僕しないもーん。」
そうだろう,そうだろう。

雨が降ることを覚悟して,傘と雨合羽持参でお出かけである。
まず,帯広から然別湖行きのバスに乗って,途中でおりて
東雲湖を目指すことになるそうだ。
およそ1時間半ほどバスに乗ることになるなぁ。

スタッフのおねーさん二人と記念写真を撮ってから出発。
おねーさん二人ともライダーである。
カワサキGP250のおねーさんは,チェーンベルトが切れて,
うん万円かかることになってしまってここでバイトすることに
なった・・とのこと。
「すっごい高いんだもん。あたしゃ飛んだよ。」

・・面白いおねーさんですなー

旅に出る若者たち,みんな貧乏な人ばかりではないけど,
予算ぎりぎりで出かけてしまう連中が多いわけですな。
お金が無くなった場所でバイトを探して,たまったらまた
旅に出る,という気ままというか,大胆というか,そういう
旅を女の子がけっこうしているのに驚いた。








尻が痛い

2005年04月23日 | 思い出世界
1987年6月12日

参った。朝起きたら尻が痛い。
大サービスで,ラッキーに長時間乗らせていただいたおかげである。
有り難かったけど,尻には悪かった。
乗馬用の鞍は硬い。
ラッキーは優しく小走りしてくれるけど,それでも乗っている体は
当然,ポンポンと跳ねる。
楽しいけど,尻には優しくない。
そして,相変わらずの雨模様・・うう。

長距離ツーリングしていると,普段の走りではわからなかった不都合が
色々と出てくる。
自分の場合は尻である。
トレールバイクのシートは硬い。
ロードバイクやアメリカンバイクの様な柔らかいシートを期待するのが
そもそもおかしい。
ダートで,ステップに立って足首でグリップしながら膝でタンクを
しめつつ走る事が前提のバイクだし,座ってコーナーを回るにしても、
シートの厚みは不安定さと、足つき性の悪化につながる。
前のバイクはXT250だったので,ある程度のシート厚があったけど,
今度のセローはトレールバイクから一歩トライアルバイクに近づけたコンセプト
だそうで,シートは硬いのである。

大体,一日の走る距離が200キロに近づくあたりで,痛さが倍増してくる。
信号待ちなどで,バイクの片側におりたり,くりくり尻を動かしたりして
痛さを和らげながら走ることになる。
何か対策を考えないと痔か,尻ずれになりそうだ。

自分の荷物を出して並べてみて,使えそうなモノを探す。
あ,そうだ。
大学の時の友人が北海道に行くと言ったら,ツーリングジャケットと
キャンプ用の空気枕を貸してくれた。
友人には申し訳ないけど,空気枕を使ってみることにする。

ビニールテープで空気枕をシートに張り付けた。
乗ってみる。
ブワブワして,体が不安定だ。
空気を半分抜いてみると,ちょうどいい案配に尻が楽になった。
・・貸してくれたあいつには悪いけど,使わしてもらおうっと・・
(ごめんね、ほんとゴメン。時効だということで許して。)

雨の中を走り出すか・・もう慣れたわい。
バイクを眺める。
シートに変なモノがついているし,マフラーにはベニヤ板が張り付いて
いる。
うーん,かっこ悪いね。 しょうがない。

今日もエンジンはキック一発,国道336号線を走り,帯広を目指す。
336号線は別名ナウマン国道。
この道沿いでナウマン象の化石が発見されたからだそうだ。
まだ未舗装部分が多くて,舗装ーダートー砂利道,と変化に富んでいて雨の中を
走るにはけっこう恐かった。
先行車がある時にはもっと問題があることがわかった。
雨中のダートは,グリップしないし,視界が滅茶苦茶に悪い。
細かい泥を跳ね上げて飛んでくるので,メットのシールドがすぐに
汚れる。
車と違ってワイパーが付いてるわけじゃないから,
ときどき汚れをぬぐってやらないと前が全く見えなくなってしまう。

走りながら手で汚れをこすっていたら,泥がシールドに傷を付けて
今度は白い傷がいっぱい。
ほとんど見えない状態で帯広を目指すことになってしまった。
これは心臓に悪い!

豊頃にやっとついて,ハルニレの巨木の前で三脚をたて,
一人で記念写真をとる。
ハルニレの大きさがわかるように撮るためには,かなり離れなくては
ならないなぁ。
でもって,一生懸命走って,セルフタイマーが切れる前にハルニレの前に
立った。失敗。もう一度・・ぜいぜい,疲れた。
端から見ればコントを見てるようなもんか?
それにしても寒い! ほんとに6月か?
雨で体が冷えて,歯がガチガチなってしまう。
疲労もあるんだけど,早く暖かい所で休みたい。

帯広YH になんとか着き,ベッドに倒れ込んだ。
風邪をひかなければいいけどなぁ・・
ぼうっとしていると,黒の皮つなぎを着たおっさんが入ってきた。

「ああ~,もう,北海道ってなんでこんなに寒いんや。
 もう,帰りとうなったわ。」

ぼやきながらひとしきり雨の北海道に文句を言いたれたこの男,
広島からホンダGBクラブマンでやってきた。
いい年に見えたけど,実はまだ26才だそうだ。
会社をやめて,退職金もらって失業保険もらってツーリング。
いいご身分。

「帰ったら一年くらい会社員やって,またどっかいこうと
 思って。 一年以上勤めれば少しは退職金でるもーん。」

・・ははぁ,そんなもんですか。
 働くの,きらいなの?

「大嫌い。 でも親がうるそうてなぁ,しゃあないわぁ。」

この,正直もん! でもこれくらい本音を言われると,なんだか
面白い。
しかし初めて会って一分で,そこまで言うか?
ツーリング仲間の連帯意識というやつである。

「ああ~,しんどい,しんどい!やっと人間界に戻ってきたわい!」
次はなんだかにぎやかな男。
Aさん,26才。神奈川からホンダXL250Sパリ・ダカール仕様に乗って
来た。
ひとしきり、広島の兄ちゃんと寒い、しんどい、
一服だー、二服だ、三服だーとぶーたれ漫才を
やっていた。
それにてしても・・二人の漫才の横でメットのシールドを眺め、
ため息をつく。
細かい傷で真っ白。 使い物にならないな。
高くついた今日の雨中走行だった。