『アルルの女』(アルルのおんな、L'Arlésienne)は、ドーデの短編小説、およびそれに基づく戯曲。その上演のためビゼーが1872年に全27曲の付随音楽を作曲しており、ここから編まれた2つの組曲が広く知られている。以下、このビゼーの音楽を中心に説明する。
あらすじ
南フランス豪農の息子フレデリは、アルルの闘牛場で見かけた女性に心を奪われてしまった。フレデリにはヴィヴェットという許嫁がいるが、彼女の献身的な愛もフレデリを正気に戻すことはできない。日に日に衰えていく息子を見て、フレデリの母はアルルの女との結婚を許そうとする。それを伝え聞いたヴィヴェットがフレデリの幸せのためならと、身を退くことをフレデリの母に伝える。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を忘れてヴィヴェットと結婚することを決意する。2人の結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れて、今夜アルルの女と駆け落ちすることを伝える。物陰からそれを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝いの踊りファランドールがにぎやかに踊られる中、機織り小屋の階上から身をおどらせて自ら命を絶つ。
劇附随音楽
作曲期間が短く、また契約の関係で極めて小編成のオーケストラしか使えなかったため、作曲には大変苦労したという話が伝わっている。初演の評価は芳しくなかった。6年後に再演された時は大好評のうちに迎えられたが、その時すでにビゼーはこの世の人ではなかった。
Bizet - L'Arlésienne Suite No. 1 & Suite No. 2 / Nathalie Stutzmann- Georges Bizet: L'Arlésienne Suite No. 1 & Suite No. 2 /
- Nathalie Stutzmann, conductor · Royal Stockholm Philharmonic Orchestra / Recorded at Stockholm Concert Hall,
October 2014. -
ビゼー作曲『アルルの女』
指揮:ナタリー・シュトゥッツマン
ロイヤル・ストックホルム交響楽団
ストックホルムコンサートホール...
2014年10月
37:01
https://youtu.be/hBlNa9_RCNw
楽器編成
フルート2、オーボエ(コーラングレ)1、クラリネット1、ファゴット1、アルト・サクソフォーン1、ナチュラルホルン1、ヴァルヴ・ホルン1、ティンパニ、プロヴァンス太鼓、ピアノ、ハルモニウム、弦五部(第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ1、チェロ5、コントラバス2)、合唱
組曲
一般に知られているのは、演奏会用に劇付随音楽から数曲を選んだ組曲である。
第1組曲
第1組曲はビゼー自身が通常オーケストラ向けに編成を拡大して組曲としたものである。劇付随音楽が初演された直後の1872年11月10日に初演されて成功を収めた。
- 第1曲
- 劇音楽No.1 序曲から。3部構成。第1部の主旋律は、プロヴァンス民謡「3人の王の行列」に基づく。第2部のアルト・サクソフォーンによる旋律は、フレデリの弟の知的障害を表す動機によっている。第3部は、フレデリの恋の悩みを表している。
- 第2曲「メヌエット」
- 劇音楽No.17 間奏曲から。
- 第3曲「アダージェット」
- 劇音楽No.19 メロドラマの中間部から。
- 第4曲「カリヨン」
- 劇音楽No.18 導入曲および No.19 メロドラマ前後部から。ビゼーは「アダージェット」に使わなかった部分を中間部に置く三部形式に構成し直している。
第2組曲
第2組曲は、ビゼーの死後の1879年に彼の友人エルネスト・ギローの手により完成された。ギローは管弦楽法に長けており、「アルルの女」以外の楽曲も加えて編曲した。
- 第1曲「パストラール」
- 劇音楽No.7 導入曲および合唱から。もともと二部に分かれていた曲を、ギローは三部形式に構成し直している。
- 第2曲「間奏曲」
- 劇音楽No.15 導入曲から。中間部のアルト・サクソフォーンによる敬虔な旋律は、『神の子羊』という歌曲としても歌われた。
- 第3曲「メヌエット」
- アルルの女といえば、この曲と連想されるほど有名な曲であるが、実はビゼーの歌劇『美しきパースの娘』の曲をギローが転用、編曲したものである。[1]フルートとハープによる美しい旋律が展開される。
- 第4曲「ファランドール」
- 劇音楽No.21 ファランドールなどからギローが終曲として構成。プロヴァンス民謡「3人の王の行列」(短調)に基づく旋律とファランドールが組み合わされ、熱狂的なクライマックスを築き上げる。「ファランドール」の軽快な旋律は、民謡「馬のダンス」(長調)に基づく。
楽器編成
通常の二管編成(ただしサクソフォーンが加わる)に拡大され、金管楽器が大幅に追加されている。またハルモニウムは省かれ、ハープが追加されている。
フルート2(第2では持ち替えでピッコロ1)、オーボエ2(持ち替えでコーラングレ1)、クラリネット2、ファゴット2、アルト・サクソフォーン1、ホルン4(第2組曲の間奏曲では3・4番ホルンにヴァルヴ付きが指定されている)、コルネット2、トランペット2(省略可。ただしその場合、第1・第2組曲の2つのメヌエットにおけるトランペット・パートはコルネットで代用すること)、トロンボーン3、ティンパニ、スネアドラム(第1のみ)、シンバル、バスドラム、プロヴァンス太鼓(以上第2のみ)、ハープまたはピアノ、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス:それぞれ通常の人数)
備考
- 本来は悲劇的な終末をむかえる戯曲であるにもかかわらず、組曲においては第1組曲とともに明るい曲調で曲を終えている。そのため、組曲がこの戯曲の展開を示すものではないことから、独立した管弦楽曲として捉える方が自然である。
- 第1組曲、第2組曲とも、サクソフォーンをオーケストラで用いた楽曲としてはごく早い時期のもので、一般に知られる曲では最も古い。
ナタリー・シュトゥッツマン
ウィキペディア→http://bit.ly/2cuSQ6y
ナタリー・シュトゥッツマン(Nathalie Stutzmann, 1965年6月5日- )は、フランスのコントラルト歌手、指揮者。
経歴
シュレンヌ生まれ。ソプラノ歌手だった母親の薫陶を受け、ナンシー音楽院に進学後、パリ・オペラ座の付属学校でミシェル・セネシャルに師事した。また、1983年から1987年までハンス・ホッターの下でドイツ・リート等を学んだ。1988年にベルテルスマン国際声楽コンクールで優勝し、コントラルト歌手及びオペラ歌手として国際的に活動を始めた。コントラルト歌手としてのレコーディングは、シューマンの歌曲、ショーソンやプーランク等のフランス歌曲をはじめ、ヴィヴァルディの宗教曲など多岐にわたる。
2008年から指揮者としても活動するようになり、2009年にはオルフェオ55という古楽系室内管弦楽団を創設して指揮者を務めている。
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