うるしのまわり

   塗師の日々から

玩物喪志

2009-06-02 | うつわ雑感
がんぶつそうし:モノをもてあそんで志を失うこと

日経の5/31日曜日の美術記事にこの言葉が出てくる。
中国清朝の景徳鎮窯が超絶の技巧を極めた後に衰亡への道をたどる様子を
描いた内容だったが、少々ゾクッとしてしまった。

官窯である景徳鎮は、こぞって北宋青磁をはじめとする古名品を、
忠実に それ以上に再現することに熱中し、
一方で、人を喜ばせるためだけに(この場合、皇帝ただ一人)
珍奇なものを 恐ろしい手間ひまをかけて作り上げたのです。

それらが意味したものは、もはや芸術的な挑戦でもなく ただの技術の誇示。
やっている本人が一番楽しいのですが、
本質を見失ったその先にあるものは衰退しかないのでしょう。
もし図書館かどこかでこの記事を見られるならば、
きれいな写真付きですので ぜひ読んでみて下さい。

後世になって振り返るとその様子がくっきりと浮かび上がってきますが
その時代その真っただ中にいる人間が、
自分の方向性の間違いに気付くのは容易ではないかもしれません。

私には当時の陶工のような技術のかけらも備わっていませんが
大なり小なりこの迷宮に迷い込む危険性とは
いつも隣り合わせのような気がします。
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カボチャと豆腐とクリームチーズのサラダ

2009-05-05 | 身のまわり
少し前、ランチの付け合わせで珍しいカボチャのサラダに出会いました。
洋食業界では当たり前のメニューなのかな?

多分こうだろうなと思うレシピで、私なりに再現してみました。
マヨネーズもハーフなどにすると、意外にヘルシーなメニューかも知れません。
おいしかったので、ぜひ一度お試しを。



 カボチャ       1/4 個

(和え地)
 豆腐(絹ごし)    200g
 クリームチーズ    100g
 玉ねぎ        少々
 マヨネーズ      適量
 塩
 ホワイトペッパー

カボチャは皮をむき、煮付けにするときよりは小さめに切る。
しっかり火が通るまで電子レンジにかける。
豆腐はキッチンぺーパーなどにくるんで重しをかけ、しっかりと水を切る。
玉ねぎはみじん切りにして、塩を振りしばらく置いておく。
クリームチーズは常温に戻しておく。

和え地づくり
玉ねぎは出てきた水気を軽く絞り、親指の先ほどの量を用意。
豆腐とマヨネーズと玉ねぎを混ぜ合わせる。見た目は黄色くない卵サンドの具のような感じ。
味見をしてしっかり味があればOK。お好みで塩でととのえる。
クリームチーズをちぎって入れ、少々コショウを振って軽く合わせる。
(混ぜ過ぎず、チーズ感を残すこと)

カボチャはボールに移してブロックがやや残る程度にサクサクと軽くつぶしておく。
和え地をカボチャと合わせ、軽く混ぜたら完成。

あくまで混ぜ過ぎず、カボチャ、豆腐、チーズの存在感を残す感覚でつくるといいと思います。
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うるしの「やけ」 その二

2009-04-16 | うるしのまわり
古いお椀やお盆をお使いになって
あっと気付くと黄色くやけていたという経験はありませんでしょうか。
これは高級品、廉価品、作家ものを問いません。
前に使った時はきれいだったのに、、、
質の悪いうるしなんか使っているはずがないのに、、、
どうしてでしょう?

それは、「長い間使っていなかったから」です。
 =長く仕舞い込んでいた。
 =古物としてお手元にやってくるまでに 長い年月が経っていた。

そんな時、何らかの原因で塗膜は劣化してしまっているのでしょう。
科学的な証明は私にはできませんが、長期間使用していないぬりものが
熱いものに触れた時、変色してしまうことはまず間違いありません。
ちなみに、やける時は熱湯でもぬるま湯でもやけます。

こんな例えはどうでしょう。
人の住まなくなった家屋は傷みが早いといいますね。
どことなくカサカサと乾いた感じで荒れてしまうのと対照的に
たとえ古い家でも住人がいる、それだけで違います。
さらに掃除が行き届けば、その家は味わいをより深めていきます。
うるしも同じ、ぬりものも使ってあげることが大事なんです。

蒔絵のお椀だから、高いものだからと押入れに仕舞い込んで、
お正月に年一回使うかどうかというのは
ちょっと放って置き過ぎと申し上げたいです。

しかし、そう度々使っていたら蒔絵やうるしがはげたり、
傷付いたりするんじゃないか?という怖れの気持ちもおありでしょう。
それこそ、雑で無茶な扱いをしなければ、そう簡単に壊れるものではありません。
でなければ8000年前から今日まで 素材として使い続けられていないと思います。

使っているうちに蒔絵が少しはげたっていいじゃないですか。
簡単にはげるような蒔絵なら、その消えかかった状態もまた景色。
ぬりものも「道具」です。
むしろ使い込んでこそ活きる という意識に変えていきませんか。


この画像は我が家で6年ほど使い続けている作家もののお椀です。
はじめ艶消だった黒うるしが、だんだんいい艶になってきました。
しかも、ほとんど色に変化はありません。
とはいえ、少しずつ少しずつ気が付かないくらいの早さで色は変化していきます。
しかし、ほんのり色付く程度。
いわゆるやけた時のように、いかにも黄色くなるわけではありません。

真っ当に作られたものは使い込んでこそ
その真価を発揮することの一例だと思います。
「やけ」のメカニズムからいえば
使い込むほど水溶性のものが溶け出していっていてもおかしくないはず。
使うことで塗膜の劣化が食い止められているのか、
それとも何かが代わりに穴を埋めたのか、
それは家の傷みの問題と一緒で、誰にもわからないことかもしれません。

長い間使っていなかったぬりものは、どうしても やけやすいです。
でも、最近作られたものは、使い方を誤らなければ
やけを遠ざけることができます。

まずは家にあるぬりものを、年一回といわず半年に一度、
できれば2、3か月に一度のペースで使ってあげて下さい。
はじめの1、2回の使用でやけなかったら しめたもの。どんどん触れて下さい。

もしやけても、湯飲みのあとが付いたくらいなら、もっと輪を増やしましょう。
団らんの証し、いい景色になるかもしれません。
そして、どうしても見過ごせなくなって、塗り直せそうなものは
塗りに出して下さい。
そうすればまた新品として使い始められます。今度は新たに育てていきましょう。
(ただし、塗ってから3か月くらい寝かせて、完全乾燥させてあげましょう)

塗り替えに向かない品物もあります。
それは、道具としての寿命を全うした、最後にもう一度 道具としての仕事を
果たせたと考えてあげていいのではないでしょうか。

ぬりものと上手に付き合って下さると嬉しいです。


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うるしの「やけ」 その一

2009-04-09 | うるしのまわり
うるしの品物をお使いのみなさんにとって、
黄色く変色する「やけ」は特に気になることだと思います。
お椀の内側が黄色く変色したり、
お盆に湯飲みのあとが輪になって残ったり。。

これはどうしようもないことなのでしょうか?

条件付きで、どうしようもありません。
(条件の内容は後ほど記しますね)

そもそも、「やける」とはどういうメカニズムなのでしょうか。
まだ不明な点は残るそうですが、これまでに分かっている仕組みを
おおまかに言うと次の通りです。


うるしという樹脂の塗膜の中に、
わずかですが水溶性の成分が散らばっています。
それが温かい水気に触れることで溶け出し、そのあとに小さな穴が空きます。
穴が空けばそれだけ光が乱反射し、白っぽく見えるようになる。。


単純にいうとこのような仕組みですが
これだけでは説明がつかないケースもあります。

また、うるしの歴史の中で、採取生産、精製販売のいずれかの段階において
混ぜ物をして増量を図ったという悲しい例もあります。
その混ぜ物が変質を起こして色がおかしくなるという、いわば負の遺産を
現在のうるしのつくり手達が背負わされているという面も一部にあります。

いちど変色してしまったものは塗り直す以外に手立てはありませんが
使い手のみなさんにも多少安心していただけるようなお話を
次回に記してみようと思います。


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将来、何になりたい?

2009-04-07 | うつわ雑感
夕方のラジオニュースを聞いていたら
新小学1年生に聞いた将来就きたい職業のアンケートの話題があった。

男の子の1位がスポーツ選手なのはわかります。
なんと2位が「職人」なんだそうです。
驚きました。

「手に職」「ものづくりの喜び」というキーワードでしょうか。
イメージがいいのでしょう。
もっとも、ここで言う職人とは「大工 左官 木工など」だそうです。

将来、工芸関係に進みたいと思っている人がいたら、
いつもこう言うようにしています。
「商売ってどういうふうに成り立っているのか
  働いて世の中の仕組みを知ってからでも遅くはないよ」



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炉縁

2009-04-06 | うるしのまわり
桜の季節 真っ盛りです。

最近のお仕事の中で桜に関係するものがありましたので
少しだけご紹介します。

品物は桧木地の炉縁。
白木のまま、内側面に桜の焼印が捺されています。
面取の部分を朱で塗り、青海波の蒔絵を入れるという作業です。

出来上がりはシンプルで簡単そうですよね。
むろん、ちゃちゃっと塗って さっさっと描けば
それらしくはなります。
しかしそれでは人をがっかりさせてしまいます。
顔を近付けて見れば見るほど きちんとした仕事だと
確認していただけるようにしておかなければ
つまらないじゃありませんか。

何だってそうですが
気付かれなくてもよし、わかってもらえたら尚よし、です。
いや、説明もしますけどね。。

次のシーズンに向けて、こんな松の木の炉縁も手掛けています。
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「千家十職×みんぱく」展

2009-04-05 | うるしのまわり
大阪の千里万博公園内にある国立民族学博物館へ
「千家十職×みんぱく」展を観に行ってきました。

展覧の内容は大きく分けて3つの構成。
まず、十職それぞれの家のお仕事を紹介。
メインとなるコーナーでは、
民博が所蔵する世界中の民族学資料品を各当主に感性で選んでもらい、
そこから得たインスピレーションで新作をつくるという企画。
最後は、切る、削るなどの「動作」を切り口とした
所蔵品と十職の仕事の並列展示。

いやぁ、モノ好きにとってはたまらない見応えのある内容。
民博の所蔵品は一点一点どれをとってもすばらしい。

一方で、ある意味 残酷な企画展でもあったように思います。
「茶の湯」という自分の土俵から少しはみ出した時に
各当主に突き付けられる モノをつくる人としての実力。
力のある人とやや劣る人の差が歴然としていたように見えました。

もちろん、世界各地から選りすぐられた
名も無きつくり手の生涯の傑作と
わずか2、3年の準備期間で対抗しようというのですから
そもそも分が悪いともいえます。

お茶に関わりがなくとも楽しめる展覧会ですので
ぜひお弁当でも持って万博公園へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

国立民族学博物館 HP
会期 6月2日(火)まで 水曜休館
午前10時~午後5時まで
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片口

2009-02-22 | うるしのまわり
現在開催中の片口展に展示されている私の作品です。
はっきりとした画は載せないことにしておりますので
小さな画像ですみませんが、雰囲気は伝わるでしょうか。

製作の過程において、機能ということを考えた時に
昔からある`片口らしい形’にはそれなりに理由があることが分かりました。
液体の動きの制御がうまくいけば、後の造形は自由であることも分かりました。
でも、お酒を美味しく演出する器になることが一番難しいことも分かりました。
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されどかたくち てん

2009-02-14 | お知らせ
明日、2月15日から片口の企画展が始まります。
先日お話しした、乾漆でつくった私の作品も2点並べていただきます。
会期が比較的長いので、近くまでお越しの際は ぜひお立ち寄り下さい。

うるしは私と鈴木睦美さんの二人だけです。
名のある作家さんたちと同じステージで展示していただけるのがとても幸せです。

「されどかたくち てん」
2009年2月15日(日)~3月1日(日) [ 2月23日(月)休廊 ]
11:00am ー 7:00pm

ギャルリー田澤河原町店 HP
  京都市中京区河原町通り夷川上る西側
  TEL 075-231-8198

出品作家(五十音順・敬称略)
 岩渕祐二 勝間田千恵子 鈴木睦美 永沢節子 福本双紅
 松田百合子 三浦景生 森野彰人 柳原睦夫 吉村敏治
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はじめてのせっこう

2009-01-31 | うるしのまわり
1月もあっという間に過ぎていきます。

新しい仕事のやり方に挑戦したり、いい出会いがあったりで
面白い幕開けになった気がします。
ただ、品物がなかなか仕上がっていかないのがもどかしい。。

そんな1月を象徴するのが、石膏型による乾漆に初挑戦したことです。
石膏なんて何を今さらと思われてしまうかもしれませんが、
習うチャンスがなかったことと、作業場が結構 白く汚れるという話を聞いていたもので
二の足を踏んでいました。

2月に「片口」の企画展に出品することになっていまして、
年が明けたというのに まだ影も形もないのはさすがにまずい。
これから木地を作るのはまず無理だったので、自然と乾漆を選択。
どうせ乾漆にするなら、同じ形を繰り返し作れるようにするのも
今後を考えれば必要な技術だと思い、石膏を使うことに決めました。

いざ、ホームセンターで調達して使ってみると、意外と問題なし。
割り型のような応用編ではなく単純な雄型 雌型であれば、
そう難しいものではないようです。
癖もつかめたので、これから機会があればどんどん石膏を利用していきます。

型を作るための原型づくりで、元日の夜から徹夜するはめになったのは
ちょっと考えものですが、また一つ新しい手札が増えたことは嬉しいです。

今も張り切って製作中の片口の企画展の詳細は、近日中にお知らせします。

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谷口博山さん

2009-01-26 | うるしのまわり
先日、大丸心斎橋店へ 山中の蒔絵師・谷口博山さんの個展を見に行ってきました。

数年前、私が新宿三越での茶道具企画展に初めて参加した時に
ご一緒させていただいて以来のご縁。
業界的には中堅というのかもしれませんが、大先輩です。

老若問わず、筆を置く蒔絵師が増えているこのご時世にあっても
様々なお仕事を続けていらっしゃる姿に、私も刺激を受けています。

ずらりと並んだ棗など 茶道具の蒔絵は清潔感があり
そこにお人柄そのままの柔らかさがプラスされていました。
金銀だけではなく新しい試みもされていて
技術に裏打ちされた若々しい感性は見ていて心地良いものですね。



うるしに限らずやきものでも何でも、工夫や発展が見える人の作品は
好きだなぁとつくづく思います。


谷口さんのブログもあります。ぜひ訪ねてみて下さい。


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仁城さんの木の器

2009-01-22 | うるしのまわり
仁城義勝(にんじょうよしかつ)さんの展示会へ行ってきました。

ご自身で挽かれた栃や栗の木地に、
ある決まった回数だけ透きうるしを塗って仕上げるという、
これ以上ないほどシンプルな手法をとって製作された木の器たちです。

これ以上でもこれ以下でも成立しない地点。
必要なものってなんだろうね?と静かに語り掛けてくるようです。

形が美しい。力強いけど力みがない。やわらかい線だけど甘くない。
初めてお会いした仁城さんもそんな方でした。

驚いたことの一つは、品物の名前をナンバーにしていることです。
さらに、自分は職人だから品物に作家性などいらないとおっしゃいます。
この造形が作家性でないとするならば、
自然な成り行き、つまり、センスでしょうか。

ものすごい数の定番があって、
それをお客とのやり取りの中でサイズを変えたりしながらまた増やしていく。
私のお気に入りは あの○○番、なんていうのも小気味いい気がします。

私はちょうどお鍋の取り鉢に使えるものが欲しいなと思っていましたので
これがいい!というサイズのものを一つ求めました。
今日もうちで使いながら、すごい器だなぁと再認識しています。
使いやすいのは当然として、小鉢としても料理をぐっと引き立たせます。

ふとした瞬間に あ、いいねと思う経験が持てる。
「定番」の持つ力をひしひしと感じています。

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投稿分類一覧

2009-01-03 | うるしのまわり
<うるしと技と見どころの話>
  ホンモノ
  日本産うるし
  蒔絵
  おりだめ
  透かし
  白漆
  うるしの機能
  うるしの機能 その二
  私的うるしの見方
  
  隅 その二
  念願のヘラ木

<つくる日々から見えること>
  伝統
  受け継ぐこと
  受け継ぐこと その二
  受け継ぐこと その三
  受け継ぐこと その四
  美意識の集積
  真似ること
  となりの芝生
  朝顔のツル
  講演
  うれしい便り
  より美味しく
  器の使いみち
  
  朝焼け
  新作
  新作 その二

<修理の話>
  金継ぎ
  角の欠けから見えるもの
  どうぞ、そのままで
  修理あれこれ 
  共色直し

<展覧会と作家の話>
  角 偉三郎
  赤木明登「毎日つかう漆のうつわ」展
  漆三様 展
  仁城さんの木の器
  谷口博山さん
  japan 蒔絵展
  表千家而妙斎家元好み物展
  細川護光 陶展
  残念な知らせ
  復活
  若手さまざま

<京都を少々>
  北山杉の林道を抜けて
  光悦寺、源光庵へ
  祇園祭との関わり
  四君子苑-秋の公開
  桂離宮
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あけましておめでとうございます

2009-01-01 | 身のまわり
2009年、本年もよろしく願いいたします。

雪化粧の朝になるかと思いましたが
予報の雪マークをよそに あたたかな元日を迎えています。

さっそくお正月恒例の花びら餅でお茶をいただきました。

今年は、身近なうつわをたくさん形にできたらと考えています。
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japan 蒔絵展

2008-12-06 | うるしのまわり
京都国立博物館で開かれている「japan 蒔絵 宮廷を飾る 東洋の燦めき 展」を観てきました。
会期ギリギリで滑り込みでしたが、やはり行って良かったと思います。

いやぁ すごかった、精緻で美しかった、
蒔絵がこれほどまで愛されてきたことを再認識して嬉しかった、という感想だけでもいいのですが、
これから東京展(12/23~1/26 サントリー美術館)もありますから
ちょっと違った視点も紹介したいと思います。

まず、平安期から桃山までの蒔絵の純粋な美しさを味わって下さい。
金銀の粒もまだ粗く、技法的にはおおらかながら厳かな雰囲気をもつ平安のものから
次第に発達洗練を経て、
桃山の高台寺蒔絵では 伸びやかな筆遣いで華やかさを爆発させています。

キリスト教の伝来、南蛮貿易の開始から漆器の輸出が始まります。
ここからがこの展覧会の目玉ですが、よくよく観ていると意外なこともわかります。

【 蒔絵が素晴しいのではなく、ボディ=器胎がその美しさの大半を支えているものが多い 】
(木地と漆下地の堅牢さと形の繊細さ)

西洋の王侯貴族が競って買い求めた品物だからといって、
当時の最高品質のものばかりが輸出されていたわけではないようです。

その証拠に、一見きれいに金で蒔絵されているように見えても
すぐに下の黒や茶色が出てくるような消粉に近い蒔絵だったり、さらに
豪華に見せるための高蒔絵の盛上げが実に適当で、
山水楼閣が掘建て小屋かテントにしか見えないもの、
金具の豪華さに助けられているものなどが数多く見られます。
ちょっと意識して観てください、かなりユーモラスなものもあります。

金は金、蒔絵は蒔絵だから口出しすべきことではないのかもしれませんが、
ここを御覧になっている人には チェックしていただきたいですね。

一方で、「マザラン公爵家の櫃」のような飛び抜けて高度なものもあり、
製作工房内の興奮を想像するだけでも しびれます。

「蒔絵に限って」申し上げれば、玉石混淆と言っていいでしょう。(蒔絵展ですが)
それは、質量共に随一といわれるマリー・アントワネットのコレクションも例外ではありません。


しかし展示品全体を見渡せば、
時代を経ても、赤道直下を通る過酷な船旅を経ても、乾燥したヨーロッパにあっても びくともせずに
生き残らせた 木地と下地の技こそが影の主役であることがわかります。

もちろん、どうしようもなく歪んだり壊れてしまい廃棄されるなどして
現代に伝わっていないものもかなりの割合で存在していることは間違いありません。
下地あってこその蒔絵、そのハーモニーだということは押さえておいて下さい。


それにしても展覧の後半から出てくる小物類のつくりの繊細なこと。
ちょっとやそっとでは真似できないものです。
これらは輸出用として作られたのではなく、
日本国内で流通したものや、そのつもりで作られたものでした。
ここにこそ当時の職人たちの本当の気合いが込められています。

そしてもうひとつ、輸出用の品物は図柄のバリエーションが少ないのです。
ひとえに注文主の意向が大きいと思うのですが、ざっと見渡しても意外なほどです。
日本も中国も区別が曖昧な当時の東洋趣味のイメージは、
やはり山水楼閣など限られたものなのかもしれません。

それから、最後の方に王室や貴族のコレクションを並べているコーナーがありますが
中でもバーリーハウスコレクションは出色です。
ここには目利きがいらしたんでしょうね。
蒔絵の質というものをしっかり見抜いた上でコレクションされています。
まだ先がありましたが、個人的にはここが展覧の最後の盛り上がりでした。


とにかく盛り沢山の内容ですので、私でも最後には疲れてしまいました。
第一室から名品の目白押しですが、まずは各部屋ごとにさっと流し見て
目に留まったものを重点的に鑑賞していくことをおすすめします。


振り返って、この展覧会の最大の魅力は
輸出漆器とその歴史を通して 作る人 - 商う人 - 買う人の顔が見えてくるような
人間臭さを感じさせてくれるところにあるのではないかと思います。
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