うるしのまわり

   塗師の日々から

新作 その二

2007-02-22 | うつわ雑感
資材などを買いに馴染みの店に行くと、
どこでも決まって「忙しくしてはりますか~?」と尋ねられます。

「もうかりまっか?」「ぼちぼちでんな~」の挨拶みたいなもので
「いやいや、ぜんぜんですね~」「なんかいい仕事ないですかね~」と
応じるのが正解なのだと思います。(その通りなんですが)
そしてお約束のように続きます。
「職人さんたち みんなヒマで困ってはるわ~ ほんまに仕事がないって。。」

私はバブル後の真冬の時代にこの世界に入ったので
漆器がよく売れた華々しい古き良き時代を知りません。
また、近年は日本の会社が中国で作らせた
手頃な漆器が大きなシェアを占めていますから
職人さんたちが腕を振るう機会が減ったのも事実です。

そんな時、私は考えてしまいます。
「自分で仕事をつくればいいのに」

もちろん、それぞれ背負っているものが違いますから
おいそれと手を出せない事情もあるでしょう。
確かに、売れるあてのないものを作ることは大きなリスクをはらんでいます。

私は師匠のもとへまったくの素人で飛び込みましたので
そこでの経験をベースに物事を考えてしまいます。
弟子時代、今日はヒマ、ほとんど仕事がない という日は
一日もありませんでした。

師は名のある作家ですが、年中注文に追われているわけではありません。
平時は常に新しい作品を考え、形にし、実現していました。
また、弟子に少しでも仕事を経験させるために
急ぎの仕事がなければ、5年先10年先まで手間がかかる仕事の
下準備を担当させるのです。
工房の空気として、そこに停滞はありませんでした。
私もそれを見習うために、工房を見回しては
手を付けられそうな仕事を探したものです。

そんなこと、親方に財力があるからだろうというツッコミは本筋と違います。
その前向きな姿勢です。

独立後、私もそれを実践しようとじたばたしていますが、
とんでもなくイバラの道であることを骨身にしみて感じています。

漆に関する雑誌の対談やエッセイでは、
これからも漆にとって厳しい時代が続くが
もはや仕事が来るのを待っている人は淘汰され
考えるつくり手だけが生き残るだろうという意見が多く見られます。

私は考えているだろうか?
生き残ってやる~~
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