うるしのまわり

   塗師の日々から

なかなか

2007-03-31 | 身のまわり
展示会の準備その他で頭がいっぱいになってくると、
更新がままなりません。。
書こうと思っていることはまだたくさんありますので
気長によろしくお願いします。

もちろん、これまでの記事についての質問がありましたら
遠慮なく書き込んで下さいね。
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講演

2007-03-24 | うるしのまわり
個展まであとちょうど2か月となり、それに向けての作品づくりも本格化してきました。

私は蒔絵もしますが、本業は塗師(ぬし)です。
塗師とは単に漆を刷毛で塗る人ではなく、
形をつくる人と言った方がいいかもしれません。
仕事のベースとなっている塗師としての感覚を
テーマを絞って観ていただこうというのが今回の個展です。

まだあれこれ頭の中で考えている毎日ですが、
そんな今週火曜日、京都市産業技術研究所工業技術センターへ
漆に関する講演を聴きに行ってきました。
講師が2人の2本立てで、興味深いものがありました。

とりわけ、船曳鴻紅さん(株)東京デザインセンター代表)のお話は
心にズシリときました。
「サスティナビリティとデザイン」というテーマ。
持続可能性とも訳されるsustainabilityは、
環境問題などでよく使われる言葉のようです。
今回のお話は、思いっきり意訳してまとめると
「モノづくりで将来にわたりメシを食っていくために考えるべきこと」でした。

つくっているモノの如何に関わらず、世界市場を視野に入れた思考が不可欠とのこと。
その他、重要なお話の詳しい内容はここでは述べません。
ただひとつ、自分のつくっているモノをきちんと説明し表現していくことの大切さも
かなり強調されていました。

以前このブログに「ホンモノ」と題して、ことさらに本物であることを喧伝して
差別化を図るのは無用なことではないかと書きました。
つくり手が語ることを良しとしないならば、
見る人使う人には判断する眼を持ってもらいたい。
そんな思いから、漆器ってこんなふうに見ると面白いですよと
作品の見どころやチェックポイントなどを書きはじめました。

このブログを読んで下さっている人にはある程度伝わっているでしょうか。
しかし、そうでない方々はどうでしょう。。

「いいモノをつくれば、モノが語ってくれるだろう」
それはある意味幻想のようなものです。

うるしをきれいに塗ってしまうと
その膜の下にどんな仕事がしてあるのか わかりにくい と自分でも書いているのですから、
その膜の下のこともなるべく丁寧に語っていこうと思います。
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黒糖蒸しパン

2007-03-18 | 身のまわり
昨日、夕飯時にテレビで黒糖蒸しパンがでてきたので、初挑戦してみました。

画面で見た材料は、黒糖、はちみつ、小麦粉、重曹。でも、分量は不明。
重曹の箱には、鯛焼きなら小麦粉200gに重曹小さじ1 との説明書き。
それをベースに、黒糖と水を適当に溶かして粉とあわせ、小鉢に移して蒸すこと20分。

ビギナーズラックって恐いですね。
なんだか普通に蒸しパンができてしまいました。
でも、甘みがかなり控えめで黒糖の風味が物足りない。

それでは、と、今度は黒糖をドンと増やしハチミツも入れてもう一度。
画像はその時のものです。
表面はきれいで色も黒糖蒸しパンらしい!美味しそうなのに、、、
中はベタベタでした。

今度は糖分が多すぎたのでしょう。
重曹じゃなくて、ベーキングパウダーならうまくいくのかもしれない。
他に気になったこともありました。

お菓子づくりは科学だっていいますが、後日リベンジします。

でもしばらくはいいかな。
食べ過ぎました。
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隅 その二

2007-03-16 | うるしのまわり
前回はおもに比較的新しい器をイメージしてお話ししました。
今回は古道具や骨董などの古いものを選ぶ際に、ぜひ気を付けたいことです。

街を歩いていて古道具屋があると、つい のぞきたくなってしまいます。
そうそう掘り出し物があるわけもなく、たいていは不発か高価で手が出なかったりです。
たまたま、面白そうな箱や蓋物、お膳があったとしましょう。
欲しいなぁと思ったら、手に取って状態をチェックします。

専門家なら、構造、技巧の善し悪し、素材の善し悪しといった情報を
ある程度は見抜けます。
そこまでは無理でも、一般の方にぜひ外してほしくないチェックポイントがあります。
それは、内側の隅にヒビが入っていないかどうか、です。

縁や角に欠けがあると、それは残念なことですが、致命傷ではありません。
ことによっては味にもなりますし、趣味で修理することも可能ですね。
ところが、隅にヒビが入っているとちょっと厄介です。
大げさな言い方をすれば、骨組みが壊れかかっているかもしれません。

隅にヒビがあるとはどういうことでしょうか?

うるしの品物はたいてい木地からできています。
大きな木材の塊(かたまり)から削り出した挽物(ひきもの)や刳物(くりもの)以外は
例えば側面と底の板を貼合わせた 指物(さしもの)や曲物(まげもの)がベースです。

新品の時にはきれいですが、時間の経過や環境の変化によって
木が歪んだり収縮したり、もしくは外部からの力(落としたりぶつけたり)で
板の接合部分が離れてしまうことがあります。
うるしはある程度柔軟に木地の変化についていきますが
ある時その限界を超え、ピリッとヒビが入るのです。
つまり、うるしが割れるのは木地の傷みがある程度進行しているからとも言えます。

隅にヒビがあるとどうしていけないのでしょうか?

そのヒビからどんどん破損が広がっていく可能性が高いからです。
もちろん、実用の強度も落ちています。
手入れしようとしてその隙間に水分が入ると、また内部に悪い影響を与えます。

修理の仕事をしていて、ヒビの部分を埋めるために細く切開すると
やはり中では木地が離れ、空洞ができています。
まるで氷山のように、表に見えているよりも
その下には大きなものが隠れているのです。

ですので、古い品物にヒビを見つけたら、ある程度は慎重になって下さい。
それでも構わない!という魅力的な品物に出会えたらそれは幸せだと思います。
また、私たちのような人間はその価値を長持ちさせるためのお手伝いもしています。

美術館などで数百年前の蒔絵の箱などが展示されていたら
その装飾の美しさだけではなく、
長い年月を経ても寸分狂わぬ木地をつくった、
名もない名工たちの木に対する情熱も観て下さい。
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2007-03-11 | うるしのまわり
うるしの品物を見る際に一通りチェックしておきたい部分の、まず最初は「隅」です。

隅は面と面が切り替わる境目です。
ここがきっちりとできていないと、だらしない印象を与えます。
隅は作業上もなかなか面倒なところで、美しい隅が作れる人は
仕事上手でもあります。

隅にも様々なつくりがあります。
例えば重箱のような90度の角度の隅を思い浮かべて下さい。
簡単な図にも示していますが、きっちり面と面が合わさった、とがった隅。
まっすぐな面をつけた隅、丸くカーブした面をつけた隅。
その面の大きさもつくり分けることができます。

なぜこのような面をつけるのか?
補強の意味もありますし、つくり手の作業上の都合もあります。
それよりもっと大事なことは、その器の機能にあります。

重箱のように様々な料理を盛り付けると、
当然その汁や残り物が隅にたまってしまいます。
それを洗い落としやすくするには、
指やスポンジが行き届きやすい形状をしていなければいけません。
もし90度の隅だとどうなるかは想像がつきますよね。

また、お菓子をちょんとのせたり乾きものを入れる器であればそれなりの面で十分です。
それ以外に、器が与える印象を重要視するケースでは、
それ相応の面にすることで あらたまった印象や優しさなどを演出することもできます。


洗いやすいかどうかを気を付けて見ていらっしゃる方は多いと思います。
でも、それ以外にも意図が潜んでいる場合もあるのですよ。
次にうるしに接する機会には 隅っこにもちょっとだけ目を向けてみて下さい。

重箱の隅をつつくような話、でした。


隅の話は次回にも続きます。
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