個展まであとちょうど2か月となり、それに向けての作品づくりも本格化してきました。
私は蒔絵もしますが、本業は塗師(ぬし)です。
塗師とは単に漆を刷毛で塗る人ではなく、
形をつくる人と言った方がいいかもしれません。
仕事のベースとなっている塗師としての感覚を
テーマを絞って観ていただこうというのが今回の個展です。
まだあれこれ頭の中で考えている毎日ですが、
そんな今週火曜日、京都市産業技術研究所工業技術センターへ
漆に関する講演を聴きに行ってきました。
講師が2人の2本立てで、興味深いものがありました。
とりわけ、船曳鴻紅さん(株)東京デザインセンター代表)のお話は
心にズシリときました。
「サスティナビリティとデザイン」というテーマ。
持続可能性とも訳されるsustainabilityは、
環境問題などでよく使われる言葉のようです。
今回のお話は、思いっきり意訳してまとめると
「モノづくりで将来にわたりメシを食っていくために考えるべきこと」でした。
つくっているモノの如何に関わらず、世界市場を視野に入れた思考が不可欠とのこと。
その他、重要なお話の詳しい内容はここでは述べません。
ただひとつ、自分のつくっているモノをきちんと説明し表現していくことの大切さも
かなり強調されていました。
以前このブログに「ホンモノ」と題して、ことさらに本物であることを喧伝して
差別化を図るのは無用なことではないかと書きました。
つくり手が語ることを良しとしないならば、
見る人使う人には判断する眼を持ってもらいたい。
そんな思いから、漆器ってこんなふうに見ると面白いですよと
作品の見どころやチェックポイントなどを書きはじめました。
このブログを読んで下さっている人にはある程度伝わっているでしょうか。
しかし、そうでない方々はどうでしょう。。
「いいモノをつくれば、モノが語ってくれるだろう」
それはある意味幻想のようなものです。
うるしをきれいに塗ってしまうと
その膜の下にどんな仕事がしてあるのか わかりにくい と自分でも書いているのですから、
その膜の下のこともなるべく丁寧に語っていこうと思います。