うるしのまわり

   塗師の日々から

日本産うるし

2007-06-22 | うるしのまわり
日本産のうるしを使っていますか?というお尋ねがありました。

私の場合、残念ながらノーです。
現在はすべて中国産のうるしで製作しています。
高嶺の花で手が出ないというのも一つですが、
費用対効果といいましょうか私のごく限られた経験の中では
お値段の差ほどの品質の差を、明確には感じられなかったのです。

もちろん昔から日本産の漆は上質で丈夫で一級品だといわれています。
生産量は少ないながらも、それは今も変わらないでしょう。
もっと使う機会があれば、その良さを実感できるのだと思います。

かつて中国産は採取したあとの保管と運搬の管理が悪いために
品質が落ちてしまい、二級品との認識があったと聞きます。
近年はそのあたりは改善されたといわれ、
私が漆屋さんで購入したものに関して
特に問題を感じたことはないのです。

もちろん、うるしは天然樹液であり、なまもので気まぐれなところがあるので
昨日まで乾いていたのに今日は乾かないなんてトラブルはあります。

中国産うるしで間に合っているとはいえ、
日本産の危機的状況を知らないわけではありません。
日本国内のうるし液の流通量の98%以上が輸入品です。
昨今の振興策によって国産うるしがわずかながら持ち直してきているものの
風前の灯であることにはなんら変わりがあるでしょうか。

基本的に私は、自分の手の届く範囲でどうするか考えるというスタンス。
自分があがいて、がんばって、工夫して何とかなりそうなものには
ぐっと力を傾けますが、どうしても手が出せないものもあるのです。

例えば蒔絵筆の最高級の素材(ネズミ)が手に入らないので
死活問題だとテレビで蒔絵師が嘆いていれば、
次善の猫の毛でなんとかしたら?と考えます。
実際、ネズミの毛の描きやすさには驚嘆したことがあります。
でも今はお金を積んでも何年待ってもいつ入手できるか分からない状態ですから
私はハナからネズミの筆に期待していません。

国産うるしの振興にしても、やれるものならやりたいのはやまやま、
使いたいのはやまやまですが、旗を振るための握力すらまだひ弱で足りません。
途絶えてからでは遅い。それはわかります。しかしこれも縁です。

そんな中、国産のうるしだけでがんばっていらっしゃる工房があります。
様々な縁があって国産うるしを使われるようになったのだと思いますが、
まさに使命感を持って活動されています。
まだ直接お会いしたことはありませんが、すごいことだと思います。
「和うるし日記 (和うるし工房あい)」
http://waurusi.sblo.jp/
コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カリン酒 | トップ | 念願のヘラ木 »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
漆と筆 (サッキー)
2007-06-23 10:28:58
日本で漆かきをされている方は本当に少ないってNHKの番組でされてました。
あちこちで地方振興とかで漆の木を植えておられるらしいですが、その漆をかく方が本当に少ないとか、

筆にしてもそうなんですねぇ、
ネズミの筆、それも木船に住んでいるネズミの脇毛がが最高とか、


よい作品ををねがいしますね、
返信する
ねずみ (岩渕)
2007-06-24 00:26:40
>サッキーさん
うるし掻きの職人さんたちも、状況は本当に厳しいと思います。山に分け入り、漆の木をメンテナンスしつつ、本当に少しずつ少しずつ大事に大事に掻き集めるのですから、根気と体力のいる仕事です。かといって報酬は。。。

後継者不足は大変な問題ですが、
それを解決する特効薬はないと思います。
さまざまな歯車が少しずつ噛み合って、ぐるりと大きな歯車が一周した時に初めて若いうるし掻き職人の生活が成り立つはず。
行政、うるし掻き職人、うるし屋、作り手、売り手、使い手、メディア、金融、などなど、全てが等しく絡む必要があるでしょうね。

でも、どの地点から動き出せばいいのか、それは私には分かりません。結局はリスクをとる勇気にかかっているのでしょうか。。


舟ネズミのわき毛、よくご存じですね~
いつかお話ししましたっけ?
この話題は皆さんかなり興味を持って下さいます。
うるしをテーマにお話しする際の必須ネタです。




返信する
木船ネズミの脇毛 (サッキー)
2007-06-24 22:24:02
>舟ネズミのわき毛、よくご存じですね~

お話は聞いておりりませんが、アッシくらい年を重ねるといろいろ聞きかじりがありますのでね、

ところで漆を漉す時の紙ってどちらのを使ってられます?
吉野の紙? 徳島の紙?、土佐の紙かな??

いずれにせよゴミは大敵ですものね!!
返信する
うるし掻き (まーぼー)
2007-06-25 15:03:03
昨日のニュースで丹波のうるし掻きのことをやっていました。
樹皮に傷を付けて採取している映像が流れましたが、ほんとに、少しずつ少しずつ出てくるのを掻き取って集めるんですね。
高くなって当然だと思いました。
「●●gで○千円」というのを、聞いたのに忘れてしまいましたが…
「japan」というからには、国策でなんとかならんのかいな?と思います。
返信する
Unknown (岩渕)
2007-06-25 20:01:28
>サッキーさん

いろいろとうるしのことをご存じなのはありがたいことです。
これまたずいぶんとマニアック?なご質問ですが、
漆を濾す紙は吉野紙です。
今は合成紙も使います。

>まーぼーさん

たしかにうるしは高級素材ですねぇ。
昔は濾し紙についたうるしはもちろん
使用後の濾し紙でさえ大事に活用したようです。
今もそうしている現場はあると思います。

国策も、こっちを立てればあっちが立たずで
なかなかうるしの生産現場だけに注力はできないのかもしれません。地方自治体レベルでは、いろいろと振興策は講じられているみたいです。ただ、その一貫性と継続性は問題視もされています。

返信する

コメントを投稿

うるしのまわり」カテゴリの最新記事