プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 稲見一良「セント・メリーのリボン」

2023年11月10日 | ◇読んだ本の感想。
これの前に読んだ「ダック・コール」が初稲見作品。
趣味に走り切った短編集ではあったが、大人のファンタジーとして微苦笑交じりで
読めたし、文章は美しかったし、気に入っていた。

そしたらこの本もわりと似たような作り。
猟銃・アウトロー・バイク・犬・美味しいもの。
好きな材料を使って好きな味付けでする料理。
またこれか、とかすかに思うけれども、美味しい料理なら下手に新機軸を狙わず、
いつもの味で作ってくれるのが正解なのかもしれない。

これも短編集でしたな。最後の表題作だけは中編くらいの大きさ。
全体的にハードボイルド……というかかっこつけで、そこが鼻につくといえばつくが、
他のところがすっきりしててかすかに甘めなので、相殺している。
魅力的だと思いますよ。全体的に。

最初の「焚火」はいかにもなハードボイルで少し苦手だったけど。
「花見川の要塞」はファンタジーというかSFというか。
「麦畑のミッション」「終着駅」は今となっては古めかしさのある短編。
短編にしてはシチュエーションが派手め。でもうまくまとまってると思うなー。

「セント・メリーのリボン」は読み終わった後、これ、ドラマになるなあと思った。
話はちょっと古めかしいけど、いろんな人が出て来ていいんじゃないかな。
1時間半くらいで地道に小さめに作ってくれたらちょうどいい気がする。
主人公がこんなにハードボイルドではなく、むしろ気の弱い青年に設定した方が
現代的だろうけどね。作者は不満だろうが。
主人公、柄本時生で見てみたいわー。

女は中村アン。ちょっと明るすぎるかな?
少女は「ミステリと言う勿れ」で見たばっかりで印象の強い原菜乃華。
……全員分のキャスティングをしていると時間がかかってしょうがないから
もう止めますが、そういう想像をさせる小説だった。

稲見一良は今後も読んでいくつもりなのだが、……ずーっとこれだと多分いつかは飽きる。
ハードボイルドが好きな人はいいだろうけど、そもそもわたしは
ハードボイルドがそんなに好きじゃないしさ。
わが身可愛さをどこまで許容できるかによるかな。
あまりかっこつけは好きではないんだ。


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