お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

『バイリンガル絵本』のおすすめ

2010-07-01 | with バイリンガル育児

今月7月は、3月にひきつづき、英語に翻訳出版されている日本オリジナルの絵本を中心に、日本語と英語で併読できる『バイリンガル絵本』をご紹介します。

すでに繰り返し書いてきたように、バイリンガルの子どもの語彙を豊かにするには、日本語と英語の併読、すなわち同じ本を日本語と英語の両方で読むことが効果的。併読の目的は何と言ってもまずはそこにあります。

でも、”日本の絵本を英語で読む”ことには、実は、もっと積極的な意味があると、私は思います。とくにお子さんが海外で育っている場合には、日本にはこんなに素晴らしい絵本があるのよ、こんなにクリエイティブなアーティストがいて、こんなにきれいな本を印刷できる技術があるのよ、日本の絵本は世界中の子どもたちに読まれているのよ、と伝えることができるからです。海外で育つ子どもたちが母国を誇らしく思えることはとても大事なことです。

バイリンガルで育つ子どもはバイカルチャラルであることを強いられる場合が多いですね。バイリンガルといい、バイカルチャラルといい、いずれも言うは易し、聞こえもよいのですが、でも、生身の子どもにとっては、幼い時から、時には拮抗することもある二つの文化の間で、ともすればすり減りそうになる自我を保ちつつ、なお自己形成してゆくこと。決して楽しいばかりではありません。

バイカルチャラルがどうの……と言ったって、むずかしい話ではありません。たとえば、アメリカでは、幼稚園でも学校でもたいてい朝の最初の時間はサークルタイムといって床にみんなで車座に座ってホームルーム活動をします。床に座るときは女の子も男の子も胡坐をかきます。胡坐!です。いまはどうか知りませんが、実は、娘とアメリカで暮らし始めた20ン年前には日本では女の子は、少なくとも公衆の面前で(ましてや先生の前でなど!)胡坐などかかないものとされていました。それは、日本的にはひどく”お行儀の悪い”ことでした。それなのに、日本の不作法がアメリカではお行儀のスタンダードだなんて……これが身についちゃったら困るなぁ……日本の祖父母にいったい何と言われることか……やれやれ……娘には何と言って説明すればわかることやら……。

胡坐に限りません。たとえば、アメリカでは「会話するときには相手の目を見て話しなさい」と教わります。そう、アメリカでは、会話している相手の目を見つめているのが礼儀。目をそらすことは、時には失礼にあたります。叱られている時も真剣なまなざしで相手の目を見て聞いているべきものなのです。でも、一方の日本では会話の時に終始相手の目を見ている人は少ない。時には、直視しないで目をそらす方が礼儀にかなっている場合もあります。とくに叱られているときなどは俯いているくらいがちょうどよく、真剣な目をしてじっと見つめ返していたりすると、「なんだ、その目は!生意気な!」なんて、かえって叱られてしまうことも。このマナーの違いを日米で使い分けるのは、おとなにも至難の業です。

そう、バイカルチャラルって、日常生活の問題なのです。そして、だからこそ大変なのです。文化の問題ですから、どちらが正しいとか間違っているとかと決めることができず、要するに『正解』がない。なんとも困りものです。要はTPOの問題なのですが、子どもというのは「正しいか間違っているか」という二次元の問題はわかるのですが、「場違い」という三次元のコンセプトはなかなか理解できません。そうなると、バイカルチャラル子育ての親は、ちょっとした注意やお小言で済むはずのことに二倍も三倍も説明を重ねなければならないことになります。この、いつもいつも注意しなければならない、おまけにその都度いちいち説明しなければならないというのがイヤでイヤで、私は娘が小さい頃は、いつも憂鬱でした。

でも、大変なのは子どもであって、親ではありません。自己形成は苦しくても子どもが自分で成し遂げなければならない孤独な作業。そんな子どもに、せめても親がしてやれることは、ふたつの国の文化にできるだけ豊かに接する機会を創り、バイリンガルであり、バイカルチャラルであることが、半分・半分ではなく、二倍に豊かであることを意味するようにと祈ることくらい。

そうは言っても、子どもが小さい時にできるのは、せいぜい美味しい日本食を食べさせることや、日本の優れた絵本に触れさせることくらい。私の手料理はどうだったか知りませんが、でも、娘のために読んだ日本の絵本は、どれをとってもアメリカの絵本に遜色がないどころか、実に掛け値なしに素晴らしかった! 大いに助けられました。感謝しています。

来週からは、素敵な日本の絵本のなかから、3月に引き続き、すでに英語で翻訳・出版されている『バイリンガル絵本』をご紹介していきます。

今日のイラストは、娘と私が初めて日本語と英語の両方で読んだ「はらぺこあおむし」です。この絵本は、ちょっと大げさに言えば、私にとって「子どもをバイリンガルに育てる」と決心するにあたっての試金石とも、記念碑ともなった絵本です。言わずもがな、日本でもポピュラーなエリック・カールの傑作。このブログでもすでに何度かご紹介してきました(にほんごえいご 併読のパワー 2)。どうぞ改めてご参照、お楽しみください!



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