お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

税務署を訴える!

2010-03-01 | from Silicon Valley


3月、日本は確定申告の季節ですね。アメリカの確定申告(Tax Return)は、日本からはひと月遅れの4月15日が締め切り。日本と違って、こちらでは一定以上の所得のあった人全員が申告しなければならない決まりです。

どこの国でも税務署は手ごわいお役所。アメリカの内国歳入庁(IRS: Internal Revenue Service)も、もちろん例外ではありません。ところが、そのIRS相手に単独で訴訟を起こして勝訴し、メディアを賑わせた女性がいます。メリーランド州で看護師として働いているローリー・クラークさんです。

ローリーは看護師として働きながら、管理職への昇任に必要なMBAを取得すべく、フェニックス大学ビジネススクールの通信教育を受講。2006年春の確定申告で大学の授業料$14,787(約150万円)を控除申請し、還付を受けました。ところが同年のうちにIRSの監査が入り、控除を取り消されたのです。

アメリカでは、働きながら大学や専門学校などを受講した時、授業料が控除扱いになる場合があります。社会人の教育費が税制上優遇される理由は、日本と違ってアメリカでは「社内研修」制度が一般的でないためで、昇任/昇格を希望する勤労者は自分で外部教育機関でしかるべき研修や教育を受け、それを雇い主に示して昇任資格を認められることになっているからです。が、実際には資格条件や手続きがきわめて煩雑でわかりにくいため、控除申請をする人はほとんどいないのが実情でした。

しかし、ローリーは違いました。税理士のアドバイスに従い、しっかり調べてしっかり控除申請し、しっかり還付を受けたのです。それなのに控除取り消し!悔しい!でも、普通はここであきらめてしまうところでしょう。ところがローリーはあきらめませんでした。脅し、すかしに近い監査のプレッシャーにもめげず、控除申請以上の粘り強さで何度も手紙のやり取りを繰り返し、大学院の授業料は控除対象となる資格要件を満たしているとねばり強く主張。しかし、2008年秋に受け取った最終通告もなお「控除取り消し」。

こうなったら最後の手段は訴訟(Tax Court)です。ローリーは敢然と訴えました。

ところが、いざ出廷してみると・・・

"対峙"の構図は、がらんとした法廷で、大きなテーブルを挟んで、向い側にはIRS職員がずらっと座っている前にローリーただひとり。弁護士を立てずに自ら訴えたローリーは、弁護士2人にそれぞれ複数のアシスタントがいるIRSチームとたったひとりで闘ったのです。

しかし、結果はプロを相手に堂々の勝訴!担当判事も「彼女は実に周到に準備して出廷してきました」と高く評価。2008年中にTax Courtに提訴された300以上の訴えのうち、納税者の言い分が通ったケースは10%未満だったというのですから、まさに快挙!

しかもローリーの勝訴は、彼女ひとりの控除を実現するに留まりませんでした。ローリーの勝訴により、IRSが「2009年度からローリーと同様のケースには課税控除を認める」と発表したからです。ローリーの勝訴は、長引く不況のさなか苦労して働きながら学ぶ社会人学生への思いがけない大きなプレゼント!となりました。

新聞記者ならずとも「専門家相手にひとりで渡り合う、そのタフな交渉力はどこで身に付けたのですか?」と聞きたくなりますね。ローリーの答は「毎日、病院で、ドクターと患者さんという、それぞれに要求も不満も多い顧客に挟まれて年がら年中話し合いや交渉を繰り返して働いていますからね。たいていは緊急事態で」でした。ローリーはもう昇任したでしょうか?ローリーなら病棟管理にも病院経営にも素晴らしい手腕を発揮することでしょう!


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