クリスマスは実は"匂い"でもある、ということは案外語られていない気がします。
夕方、寒い外から戻って玄関のドアを開けると、暖かい空気とともに居間に立てたツリーの樹液の強い香りが押しよせてきて全身を包みます。この一瞬、「あ、クリスマス!」と理屈抜きで、まさに全身で実感します。
どんなに美しい人工のツリーが売り出されても、どんなに生木のツリーに反対する意見がかしましく交わされても、多くの家庭でいまだに生木のクリスマスツリーを飾っているのは、このあたりにも理由があるのではないでしょうか。
この季節の味わいと香りは、湯気の立ち上る暖かな飲み物。クリスマスカードを書いたり、プレゼントをラッピングしたりしながら夜更かしするときに飲むホットチョコレート。これにテキーラを垂らすとメキシカン・スタイル。スターバックスで、クリスマスブレンドのコーヒーとともにこの季節だけに供される温めたアップルサイダーは、甘酸っぱい香りを湯気がいっそうひきたてて郷愁を感じさせる味わいです。
暖炉で燃える薪にかざして焼く甘いマシマロ。ピリッと個性的なジンジャー・ブレッド。そして、エッグノッグ!たっぷりの卵とクリームの濃厚な味わいに混じったラムやブランデーのこれまた濃厚な香りは、まさにクリスマスならでは!
幼い頃の娘には、クリスマスを締めくくる匂いは、お皿に盛ったチョコチップのクッキーとミルクだったと思います。絶対に忘れてならない、サンタさんのためのミッドナイトスナックです。ミルクの匂いにつられて犬が来て、飲んじゃったらどうしよう・・・とか、お父さんはミルクじゃなくてブランデーがいいと言ってたけど・・・とか、あれこれ悩みながらも、毎年同じチョコチップのクッキーのお皿とミルクのカップを暖炉の脇に置くと、ようやく安心して寝にいったものです。