お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

マネーボール and/or アカデミックボール

2009-12-02 | from Silicon Valley

Source: www.stanfordphoto.com

日本の『早慶戦』と同様、アメリカにも永年のライバル同士が対決する恒例戦があります。ここベイエリアではフットボールのライバル戦「Cal vs Stanford(UCバークレー対スタンフォード)」がそれ。恒例の"Big Game"は毎年サンクスギビング前の土曜日に開かれます。戦略的にわざわざ小さく作られている(チケットを高く設定するため)と言われているスタンフォードのスタジアム(それでも4万人弱収容できます)はもちろん全席売り切れ。試合当日には、プレミアム付きチケットが一枚$100以上で売られていました。

スタンフォード大学のキャンパスでは、このゲームのために遠路はるばるキャンピングカーでやって来た先輩たちが駐車場のそこかしこでBBQパーティ。勝つものと決め込んで、早々にお祝いのシャンペンを冷やしている人もいます。在校生も負けじと学寮を開放してビールパーティ。誰もかれもが試合の前に半分以上”出来上がって"いて、その勢いで応援席にくりだします。

一方ビジターのUCバークレー側は、キャンパス内の駐車場には優先権がないので、離れた路上や駐車場に車を止め、黙々と20分でも30分でも歩いてスタジアムに向かいます。全員がひいきチームのスクールカラーで身を固めているので、すれ違うだけで、言わずもがな、どちらの味方かは一目瞭然。Big Gameではスタンフォードは赤。バークレーは黄色とネイビーブルー。味方を見つけたら"Go Bears!"(バークレーがんばれ!)と声を掛け合って気勢をあげ、にわか応援団を形成しにビジター観客席へ。

アメリカではカレッジ・フットボールは一大ビジネスです。人気があるだけでなく、しっかり稼いでいます。雑誌Forbsによれば、アメリカでもっとも評価額が高いチームはノートルダム大学のフットボールチームで評価額は総額$100M、このチームが年間に稼ぎ出す総収入は$46.2Mだそうです。ちなみに第二位はジョージア大学で評価額$90M、売上高$43.5M。第三位はミシガン大学で評価額$85M、売上高$36Mです。スタンフォード大学もUCバークレーもFoebsの上位20位までにはランクされていませんが、それでも毎年「億」の単位の収入を大学にもたらしていることは確か。

こんなプロも顔負けの選手たちに対しては、恐れ多くて「勉強しろ」なんて誰にも言えない‥‥と考えられてきた節があります。実際、強い大学ほどフットボール選手たちの卒業率は低く、メジャーチームの新入生が卒業する割合は2人に1人だけ。もちろん中には学生のうちにプロに転向する学生もいますが、それはやっぱり少数派。ほとんどは「フットボールをしに大学に入ったんだぜ、勉強しなければなんて思ってもみないよ」というのが実態。そういうわけで、フットボール選手は、大学のあらゆる運動選手の中でも、とりわけ学業成績が悪く、ドロップアウトが多いというのが誇れない定説になっています。

そんな悪しき伝統を覆えそうと地道な指導を重ねてきたのがUCバークレーのテッドフォード監督です。監督就任と同時に「アカデミックゲーム」作戦を開始。選手一人一人にバインダーを持たせて、徹底した個人指導体制での学業管理システムを実施してきました。

シーズン中は毎週水曜と日曜に練習の後で選手全員が各ラインのアシスタントコーチと学業の進捗状況について個人面談します。ここで活躍するのが選手ひとりひとりにアサインされている個人バインダー。バインダーの章だてはフットボール用語で統一されており、たとえば「ラインナップカード」という章には日課から週ごとの計画、月間スケジュールまでが記入され、「スコアボード」の章には試験などの成績が全部記録されているという具合い。しかも点数の記録は「実際の点数(earned score)」とともに「見込み点/期待値(possible score)」の記入欄までがあるという徹底ぶりです。

「最初は、正直、『なんだ、こりゃ?』って思ったよ!」と率直に語るのはラインバッカーのマイク・モハメッド選手。「だけど、時間をかけているうちに、だんだんわかってきたんだ。こうやって、勉強でもなんでもきちんと管理していくことが、いかに大切かってことがね」の感想には、今日ではチームの誰もが同意するといいます。

そんなテッドフォード監督の「アカデミックゲーム」作戦に、今年、始めての「評価」が下りました。つい先月、彼が監督に就任してから採用した選手の卒業率が発表されたのです。彼が採用した選手の入学者に対する卒業者比率は71%でした。この数字は、バークレーの過去10年の平均を48%も上回る結果!バークレーの男子学生全員(運動選手でない生徒も含む)の平均卒業者比率87%には、残念ながらまだおよびませんが、劇的な改善で、ベアーズ(フットボールチームの愛称)が「正しい方向に進んでいる」ことは明らか。

テッドフォード監督は「やった甲斐があった。選手ははじめはまごつくが、正しい方向に導き続けさえすれば、必ず目標を成し遂げられるようになる。実は、その結果、自己評価(self esteem)が高まる。この『自分にはできる』と思えることがすごく大事なんだ。」と語っています。

さて、今年のBig Gameはバークレーの勝ち。シーズンの立ち上がりはよかったのに、ランニングバックの花形選手が怪我で抜けたまま、しばらく負けっぱなしだったチームとはとても思えない粘りづよさを発揮した試合でした。監督のもろもろの戦略がここにも効いてきているかな?




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