お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

「くるみ割り人形」と遠くへ行った友だち

2009-12-15 | about 英語の絵本

The Nutcracker

居間にツリーを飾ったら、家族みんながそれぞれこっそり用意したプレゼントを順にひとつずつラッピングしてツリーの下に並べていきます。私のプレゼントには何が入っているのかな?とワクワクするのは子どもも大人も一緒。色とりどりの包装紙やリボンにつられて、折々ツリーのそばに寄っては自分宛のプレゼントを眺めたり、耳のそばでそっと振ってみたり、手で持って重さをはかってみたり‥‥そうして、だんだんクリスマスが近づいてきます。

ツリーとツリーの下のプレゼントというと連想するのは「くるみ割り人形」ですね。チャイコフスキーのバレエ音楽として、またバレエの舞台として知られる「くるみ割り人形」ですが、お話の原作はホフマンの童話「くるみ割り人形とハツカネズミの王様」です。

クリスマスの真夜中、少女クララはイブの夜に人形師からプレゼントされた"くるみ割り人形"を見に来て、彼がネズミの王様に襲われているのを発見。履いていたスリッパをネズミに投げつけ、くるみ割り人形を窮地から助けます。すると、くるみ割り人形は凛々しい王子様になって、助けてくれたお礼にとクララをお伽の国に招待してくれます。人形のように小さく変身したクララは王子様と一緒に馬車で出かけます(舞台ではクララが小さくなる場面で逆にツリーとプレゼントが大きくなり、子どもが「おぉ~」と感動します。が、うちの娘は、毎年見ていたのに、20歳近くなるまでこの場面の意味がわからなかったのよと言って、私を大いにあきれさせました)。

道すがら、雪の舞う松林では雪の精の幻想的なダンスが、お菓子の国では大歓迎の宴で、こんぺいとうの踊り、アラビアの踊り、中国の踊りと、短くて個性のあるダンスがつぎつぎと繰り広げられ‥‥音楽もお話も振り付けも小さな子どもでも最後まで退屈しない構成に脚色されたバレー(組曲)です。

12月になると、アメリカ中でプロ・アマ入り混じって、さまざまなくるみ割り人形の舞台が繰り広げられます。可愛いところでは幼稚園や学校のクリスマス会があり、町のバレエ学校もたいてい12月にくるみ割り人形を上演します。もちろん、もっと本格的なプロのバレリーナによる公演も恒例。ですから、12月に入るとなんとなく「今年はどこで観る?」と言いあい、誘いあって、知り合いの子が学校で踊るよと聞けば、プレゼントの花束やチョコレートの箱を持って家族でわいわいと見に行き、そういう機会がない年にはプロの公演を観にいきます。

「くるみ割り人形」にちなんだ我が家の思い出は1991年にさかのぼります。

不況が深刻だったこの年、レイオフはホワイトカラーの中間管理職にまでおよび、街のスーパーマーケットの駐車場ではアルマーニのスーツを着た紳士が「マダム、荷物をカートから車のトランクにお入れしますので、小銭を‥‥」と話しかけ、皆を驚かせました。

この年、私は、ダンスを始めたばかりの娘のために奮発してニューヨーク・バレーシアターのサンフランシスコ公演のチケットを買いました。ところが、かんじんの娘がインフルエンザにかかって高熱を発し、行かれなくなってしまったのです。

熱にうるんだ目で娘が「お友達にチケットあげていい?」と言うので、そのご家族に差し上げたところ、クリスマスの翌日に、お母様からお礼状が届きました。

「素敵なプレゼントをありがとうございました。家族3人楽しんで観ました。どんなに嬉しかったか、おわかりいただけないと思います。実はサンクスギビングの前日に夫がレイオフされてしまい、手に入れたばかりの家を手放しました。明日、実家のあるコロラドに引っ越します。『今年のクリスマスは子どもにプレゼントも買ってやれないね』と夫と話していたところへ、素晴らしいサプライズギフトをいただいて、感激しました。バレーの帰り、見おさめになるサンフランシスコの街のクリスマスのイルミネーションを眺めながらドライブしてきました。ありがとう!そして、さようなら。お元気で!」

アメリカに転居したてのナイーブな日本人駐在員の家族がはじめて知った厳しい現実。アメリカではサンクスギビングやクリスマスのホリデーシーズンは、実は年末決算のシーズン。そして、そのゆえに解雇やレイオフのシーズンなのです。その後なんどか不況と好況をくぐった今では、ホリデーシーズンゆえの悲劇にも耐性ができましたが、それでも、くるみ割り人形を観るたびに、聞くたびに、今でも必ずこのときのことを思いだします。

くるみ割り人形は、絵本も本も写真集もDVDもいろいろ出ていますが、今日のお薦めの一冊は「なんといってもイラストが素晴らしい!」と評判のツヴェリンガーの挿絵のついたお話の本。アンデルセン賞に輝くウィーン生まれの画家が描く、古典的で、透明感あふれる幻想的な挿絵は、画集としてとっておきたい」という読者評まで得てます。




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