お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

Share - 分かち合いのむつかしさ

2009-03-05 | about 英語の絵本

The Doorbell Rang

アメリカで子どもをしつける際にもっとも頻繁に使われる単語の一つが"share"です。社会性を養うことが教育の至上の課題のひとつとされるアメリカでは、「他者と何かを分かち合える(shareできる)こと」が、ひととしてのきわめて大切な資質だと考えられているからです。

日常的には、たとえばおもちゃの取りっこをしていたり、ブランコなどの遊具を独り占めしていると、先生に"Why don't you share?"(日本語だと「仲良く一緒に使いましょうね!」とか「順番にね!」でしょうか)と言われるし、子ども同士の間でも、お友達のクレヨンを借りたいときとか、ランチやスナックをちょっと分けてほしいなぁというような時には、“Won't you share?"(「ねぇ、ちょっと貸して/分けてくれない?」)なんて言います。

また、幼稚園や小学校ではほぼ毎日Sharing Timeという時間があって、子どもたちがいろいろなエピソードをクラスメートに話して共有します。たとえば「このテディベアは、おばあちゃんが僕が生まれた時に買ってくれた特別に大事なものなんだよ。今日は、皆に見せてあげるために持ってきました。抱っこしてもいいよ」などと言ってクマのぬいぐるみを見せたり、「昨日、歯が抜けました(と言って、口をあんぐりして皆に見せます)。抜けた歯を枕の下に置いておいたら、トゥース・フェアリが来て1ドルと替えてくれました」などという具合です。

順番に誰もが話すので、ひとりだけ自慢して・・・みたいなことにはならず、また、話し終わると、先生とクラスメートが"Thank you for sharing"(話してくれてありがとう!)と言ってくれるので、話し手の子どもは「(恥ずかしかったけど、思い切って)話してよかった!」と感じられる、というしかけです。

大人同士でも「実は、ちょっと嬉しいことがあってね・・・」と友人に打ち明けたり、逆に悩み事を相談したりすると、かならず最初にやさしく"Thank you for sharing this with me!"と言われます。そんなとき、子どもの時からのトレーニングの成果ってすごいなぁ、こういう躾って大事だなぁといつも感心します。

さて、でも、これだけ口うるさくshareと言われるのは、やはり、アメリカ人にとってもshareするのはむずしいことだからに違いありません。ましてや子どもにとっては、そのむずかしさは言わずもがな。(shareするのは大切・・・shareしなきゃ・・・でも、むずかしい・・・、でも、やっぱりshareしなきゃ・・・でも・・・)そんな子ども心の葛藤を描いた可愛い絵本が"The Doorbell Rang"です。

「おやつにクッキーが焼いてあるわよ」とお母さんに言われました。わぁ、おいしそう!きょうだい仲良く分けあって食べようとしていると、ピンポ~ン!ドア・ベルが鳴りました。

ドアを開けるとお友達が立っています。「ちょうどよかった!一緒にクッキーを食べようよ!」と招きいれ、皆がお皿を前に座ったところへ、ピンポ~ン!またドア・ベルが鳴りました。

ドアを開けるとまたお友達。「入って!入って!クッキーがあるよ!」皆でもう一度分けあって「さぁ食べよう」というところへ、またしてもピンポ~ン!ドア・ベルが鳴り、ドアを開けるとまたお友達です。「ちょうどおやつなんだ」と、また皆で分けなおしたら・・・たくさんあったクッキーもついにひとりに一枚だけになってしまいました。「さぁ、食べようよ!」

ところが!ピンポ~ン!またドア・ベルが鳴ったのです!

居合わせた子どもならずとも、思わず顔を見合わせてしまいそうな場面ですね。読み聞かせていると、聞いている子どもが、ここでハッと緊張するのがわかって、実に可愛いですよ。

さて・・・おそるおそるドアを開けると、そこには、おばあちゃんが、焼きたてクッキーがいっぱい載ったお盆を持って立っていました。わぁ、嬉しい!おばあちゃんの焼いたクッキーって、すごくおいしいんだよ!

・・・ああ、よかった!のハッピーエンディングですね。

が、実はこの絵本、お寝み前にベッドで読んでいると、もう歯も磨いちゃったというのに、親子ともどもクッキーが食べたくなるので、要注意!です。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする