お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

サンフランシスコに吹く風は

2009-01-14 | from Silicon Valley

映画MILKは、米国で初めて、自ら同性愛者Gayであることを公表してサンフランシスコのCity Supervisorの選挙に出馬し、3度の落選にもめげず、ついに1977年に議席を獲得した伝説的な人物 Harvey Milk のセミ・ドキュメンタリーな伝記です。

原作はMilkの自伝"The Mayor of Castro Street"。Castro Streetはゲイのコミュニティとして開放的な空気の漂うサンフランシスコの街の一角ですが、Milkはこのコミュニティでアクティビストとして知られ、皆から「市長」というニックネームで呼ばれ、親しまれ、頼られていました。

今日では、たとえば議会の中でも外でも人気の高い下院議員 Barney Franksのように、自らゲイであると標榜する政治家も決して少なくありません。が、Milkが初出馬した当時は、立候補するだけで脅迫状をうけとる、そんな時代でした。実際、Milkは、初当選のわずか11ヶ月後に同僚議員の凶弾に倒れて帰らぬ人となってしまいます。

ニューヨーク生まれのMilkがサンフランシスコに転居したのは1972年。当時のサンフランシスコは、1967年の Summer of Love の余韻さめやらぬ熱い政治的な空気に満ち、同時にヒッピー文化に象徴されるあらゆるカウンターカルチャーの発信地。その象徴のひとつがCastro Street、もうひとつがHaight/ Ashbury地区でした。

ビクトリア朝様式の、美しい旧い住宅のたちならぶHaight/ Ashburyの丘の上に、サンフランシスコの医大出身の若い医師Dr. Dave Smithが、お金を持たないヒッピーたちのための無料診療所Haight Ashbury Free Clinicを開いたのも1967年。

今日まで、時代を超え、世代を超えて若者のバイブルであり続けている雑誌Rolling Stoneが、UCバークレーを中途退学した20歳のJann S. Wennerによって発刊されたのも同じ1967年です。

Milkがサンフランシスコに転居した1970年代初め、この雑誌Rolling Stoneでは、その後今日まで、時代とひとをくっきり切り取った数々の衝撃的な写真で評価の高い写真家Annie Liebovitz(有名な一枚は、射殺される数時間前に、自宅で撮られたヌードのジョン・レノンとヨーコのもの)が、サンフランシスコの美大を卒業したばかりの駆け出しのカメラマンとして、修行していました。

Summer of Loveから40余年、Milkの初当選から30年。2008年のカリフォルニア州は、大統領選挙の投票と時を同じくして行われた、同性同士の婚姻を認めるかいなかの州民投票で全米の注目を集めました。

サンフランシスコは全米屈指の旧い街ですが、昔も今も、常に新しい風が吹いている街です。



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