アメリカでは、満13歳になるまで子どもをひとりにしておくことができない ---- という確固たる現実は、これまでに何度もご紹介してきました。
ブログ記事:『それぞれの独り立ち スイート16』
ブログ記事:『はじめてのおつかい』
ところが一方こちらでは、夜や週末に夫婦そろって出かける会合や集まりが実に多いのです。学校の保護者会ですら夕方以降に開催されることが度々で、ベビシッタ―を頼まなければならないことがよくあります。
わが家のようなひとりっ子は留守中シッタ―さんと2人だけなので、よほど信頼できる方でないと怖くてお願いできないというのが親の本音でした。そうなると、友だちの紹介など口コミに頼ることになり、情報が限られてします。知り合いが頼んでいるシッタ―さんは、その知人と私の予定が重なればこちらが遠慮するのが筋でお願いできない・・・など、いろいろ苦労があります。うちの娘などは、まだ英語が十分に話せない幼い時には言葉の壁の問題がありましたし、大きくなればなったで親が安心できるシッタ―さんは「退屈だからイヤ」などとうるさい注文が出るようになって、また難儀。シッターさん探しも大変でした。
最近はインターネットのおかげで、情報取得は簡単にできるようになりました。
調べてみると、マッチングサイトもあります。シッタ―さんの写真付き紹介が掲載され、直接交渉もできるようになっています。 ◆babysitters.com
赤ちゃんだけでなく、お年寄りやペットさらには留守宅の面倒を見るハウスシッターまで、あらゆる"Sitter"を紹介するサイトもありました。 ◆sitters.com
便利になりましたね。でも、それでも、子どもを預けるのはやっぱり慎重に。こちらでは、紹介のない知らない人に頼む場合はできるだけきちんとしたエージェントを通し、契約する前にFBIの記録などを照会して犯罪歴のチェックをするのが常識です。
私もたくさんの方にベビーシッタ―をお願いしましたが、すべて直接の知り合いかその紹介でした。通っていたプリスクールや小学校の先生に週末や出張時の夜間ベビーシッタ―をお願いしたり、先生方の娘さんに頼んだこともあります。大きくなってからは近所の高校生や大学生に来てもらったり、また娘の日本語のためにと、日本からのシッタ―さんに住み込んでいただいたこともあります。
当時の私は非常に出張の多い仕事をしていましたので、学校に上がらないうちはプリスクールを休ませて一緒に出張に連れて行き、出先で友人に預かってもらったり、ホテルのベビーシッターサービスを頼んだり、サーカスやミュージアムに連れて行ってくれるエスコートサービスを頼んだりもしていました。でも学校に上がったら、お休みさせると叱られるうえ、出席日数が成績にも響くことがわかって連れ歩けなくなりました。悩んだ挙句に住み込みのシッタ―さんに来てもらったのも、このあたりの事情からです。過ぎてしまえばそんな苦労もほとんど忘れてしまいましたが、子どもを育てていた一時期は、寝ても覚めても仕事の段取りと子どものスケジュール、それにベビ-シッタ―の手配で頭がいっぱいでした。
さて「ベビシッタ―の料金は?」というと、上に書いたような実に個人的な関係の中での話なので、基準もきまりもありません。シッタ―さんの年齢や経験によって異なり、また時間帯や依頼する内容によっても違います。面倒をみていただく子どもの数や年齢、お願いする内容(食事をさせてもらうか否か・食事は作っておくかどうか・夜、寝かしつけてもらう必要があるか否か・宿題を手伝う必要があるか否かなど)でも違ってきます。20年前はたいてい1時間数ドル程度でした。この頃は不況で失業中の人が多いので、ベビーシッタ―は「買い手市場」だと聞いたこともありますので、あまり料金は高くないかもしれません。それでも"良いシッタ―さん"は常に取りっこですので、市場環境とは関係ないでしょう。
憶えておきたいのは、「冷蔵庫に入っているものは何でも食べたり飲んだりしてよい」という不文律があること。ですから預ける親たちは、ベビシッタ―が好きそうなソフトドリンクやスナック、簡単な食事になりそうなもの等を入れて出かけます。留守番が食事時間にかかる時には、ベビシッタ―と子どもが一緒に食べられるものを用意するか、外に食事に行くように、あるいは何か「テイクアウトするように」と食事代を渡していくのが常識です。さりげなく美味しいものを用意しておくのも、シッタ―さんと子どもの関係を友好に保つ戦略ですし、「ベビーシッターさんが来ると(親には連れてってもらえない)ファーストフードのお店に行ける!」と子どもが楽しみにするというのもちょっとした戦略。日頃から戦略的に「親はなかなか連れて行ってくれないところ」「親はなかなか食べさせてくれないもの」などを決めておくと"お留守番の楽しみ"に使えて効果的です。
ちなみに我が家では、長いあいだ「『目玉焼き』はお父さんの”十八番”で、お母さんはどうしても上手にできないから作らない」ということになっていました。「お母さんが出張すると、お父さんが普段はなかなか食べられない目玉焼きを作ってくれるから嬉しい!」というのが小さな頃の娘の"お留守番の楽しみ"でした。今は昔、我が家の笑い話です。
さてベビーシッタ―は、家に入って家族や家庭の事情を間近に見ることになる仕事です。家庭と言うのは、改めて言うまでもなく、外からでは決してわからないいろいろな事情を抱えているものです。十の家族があったら、十の物語が書けるはず。絶対に覗くことのできないよその家庭の話は、「へぇ!そんな家もあるの!」と驚いて聞く時も、「どこの家庭も同じね~」と身につまされて聞く時も、なかなか興味深いものです。
若い読者向きのメガヒットとなった「ベビーシッタ―ズ・クラブ」シリーズは、読者のそんな好奇心をかきたてて成功したミリオンセラーのロングセラー。本だけでなく、テレビ、映画にもなり大人気を博しました。
クラブの公式ホーム―ページがあり、テレビシリーズのテーマソングがYoTubeにアップされています。メガヒットですのでWikipediaにもしっかり掲載されているほどです。