Play With Me
エッツのロングセラー絵本 "Play with Me" (邦訳:わたしとあそんで)は、持つ手にぬくもりが伝わってくるような暖かなクリーム色を基調とした色使いと、繊細で柔らかな線で描かれた挿絵で、眺めているだけで穏やかな気持ちになる絵本です。誰かと遊びたくて野原に出かける女の子のお話。
「バッタさん、あそびましょ!」
でも、捕まえようとすると、バッタは逃げてしまいます。
「カエルさん、あそびましょ!」
でも、捕まえようとすると、カエルは池に跳び込んでしまいます。
カメにも、リスにも、かけすにも、ウサギにも、ヘビにも、
みんなに「あそびましょ!」と声をかけますが、
でも、捕まえようとすると、みんな逃げてしまいます。
誰も遊んでくれない・・・。
女の子は、しかたなく、池のそばの石に腰掛けてじっとしていました。
すると・・・、
バッタが戻ってきて、草の葉にとまりました。
カエルも戻ってきて、草むらにしゃがみます。
カメも、リスも・・・みんなもどってきました。
それから、それから、
シカの赤ちゃんがやってきて、少女のほっぺたをなめたんです!
ああ うれしい!
みんなが、わたしとあそんでくれる!
シカの赤ちゃんにほっぺたをなめられている女の子の幸せそうな笑顔!
幼い子に素直にさらっと読みきかせることもできますが、大人にも深く示唆的で、いろいろな読み方のできる絵本です。
以前ちょっと書きましたが(プリスクール初日のキーワード:2008年11月11日)、娘が、ひとことの英語もできないまま、遊び友達がほしい一心でアメリカのプリスクールに通い始めたのは、まだ日本語もおぼつかない2歳になったばかりの春でした。
でも、何もわからないからこそ張り切って出かけることができた初日がすぎ、2日、3日と日が経つにつれて・・・言葉のわからないお友達の輪に入れてもらうむずしさがだんだん身にしみて・・・、家を出る時にも、プリスクールの入口でも、娘は毎朝べそをかくようになりました。
「だって、誰も遊んでくれないんだもん!」
娘の気持ちは痛いようにわかりました。とはいえ、ここでやめて家に戻ったら、また元のお友達のいない暮らしで一日中退屈するだけです。なんとかならないものかしら?
先生が抱きとってくださっても駄目。しがみつくので無理に下ろすこともできず、ほとほと困って、あきらめかけたある朝、とことこと近づいて来た小さな女の子が、私に抱きついている娘の手を握ってにっこりしました。
べそをかいていた娘がつられてにっこりしたのを、ここぞとばかりプレイグラウンドに下ろすと、娘の手をとったまま女の子が "Do you want to play with me?" と聞いてくれたのです。言われたことが理解できたとはとうてい思えないのに、娘は、それまでべそをかいていたとは信じられない程のはきはきした声で "Yes!" と言うと、振り返りもせずに、その子と手をつないでブランコの方へ歩いていきました。