Tris(2,4,6-trimethoxyphenyl)Arsene の合成
3 ΦSH + 1/2 As2O3 →As(SΦ)3 (Step 1)
As(SΦ)3 + ΦLi, + HCl → Φ3As + ΦSH + LiCl (Step 2)
Step 1
[操作]
空気中、2,4-6-trimethoxyphenylthiol [M.W.= 170](15 mmol, 2.553 g) / acetone (50 ml) [無色透明溶液] に撹拌しながら As2O3 (arsenic (III) trioxide) [M.W.= 198](3 mmol, 0.593 g) を加え [白色懸濁液]、さらに 1 M HNO3 (15 ml) を加える [白色懸濁液のまま]。これを 50℃ に加熱すると懸濁はやがて溶解し淡レモン色溶液となり、さらに白色の懸濁を析出する。3 h 後、冷凍庫にしばらく静置し、吸引濾過により白色粉末①を得る。この濾液に H2O (100 ml) を加えると白濁するので吸引濾過により白色粉末 [Yd 0.037 g] を得、先と合わせる。
[結果]
白色粉末① 粗 tris(2,6-dimethoxybenzenethiolate)arsene
Yd 2.897 g, 5.0 mmol (100% based on 2,6-dimethoxyphenylyhiol as tris(2,6-dimethoxybenzenethiolate)arsene [M.W.= 583])
1H NMR (60 MHz, in CDCl3) tris(2,6-dimethoxybenzenethiolate)arsene に一致, 少量の 2,6-dimethoxyphenylthiol を含む
δ/ ppm: 7.12 (t, JH= 8 Hz) [4-H], 6.47 (d, JH= 8 Hz) [3,5-H], 3.75 (s) [MeO]
[付記]
1. 文献1)では、反応時間 1 h で行っているが、1 h では完全に反応しないことがあるため、3 h で行った 。
2. 吸引濾過した白色粉末①は、残留酸の影響で粉末の一部が褐色に変色することがある。これを防ぐには得られた結晶を水洗するのが良いと思われる。
Step 2
[操作]
Ar 下、rt、シュレンク内の 1,3,5-trimethoxybenzene [M.W.= 168](18 mmol, 3.029g) / dry toluene (15 ml) [無色透明溶液] に撹拌しながら BuLi (15%) / hexane [M.W.= 64](18 mmol, 11.4 ml) を加え、さらに TMEDA (0.1 ml) を加える [やがて黄色懸濁液になる]。2 h 撹拌後、この黄色懸濁液をシリンジを用いて、別のシュレンク内の As(SΦ)3 crude [M.W.= 583](5 mmol, 2.933 g) / dry toluene (20 ml) [薄茶褐色懸濁液] に撹拌しながら加える [わずかに発熱, 灰色懸濁液]。20 h 撹拌後、この灰色懸濁液に H2O (100 ml × 5) を加え、懸濁を水相に抽出、溶解させる [白っぽい] (最初、懸濁は有機相部に存在するが、回を重ねるごとに水相に少しづつ溶解していく)。水相をシリンジを用いて取り出し 1 M HCl (50 ml) に直接加えると直ちに白濁する。これをしばらく冷室に静置後、吸引濾過し薄黄土色粉末②を得る。有機相 [赤褐色透明溶液] に hexane (100 ml) を加えると白濁する。これを冷凍庫に静置後 (始め茶褐色粘性物であるが、充分静置すれば固化する)、吸引濾過し薄茶褐色粉末③を得る。薄茶褐色粉末③ (0.997g) を MeOH (100 ml) で再結晶し、薄灰色結晶④を得る。
[結果]
薄黄土色粉末② 回収 2.6-dimethoxyphenyithiol
Yd 2.216 g, 13 mmol (87% based on 2,6-dimethoxyphenylthiol, step 1, as 2,6-dimethoxyphenylthiol [M.W.= 170])
1H NMR (270 MHz, in CDCl3) 2.6-dimethoxyphenyithiol を確認
薄茶褐色粉末③ 粗 tris(2,4,6-trimethoxyphenyl)arsene
Yd 1.773 g, 3.1 mmol (62% as tris(2,4,6-trimethoxyphenyl)arsene [M.W.= 576])
Mp 143-157℃ (茶褐色)
IR see 再結晶
1H NMR (270 MHz, in CDCl3) see 再結晶
Solubilities (100 mg)
MeOH ○R 10 ml, △ Yd 46%, Mp 160-162℃
EtOH ○R 12 ml, △ Yd 63%, Mp 156-160℃
iPrOH ○ 11 ml, △ not precipitate
acetone ◎ 2 ml, rt
toluene ◎ 3 ml, rt
hexane ×
Et2O △ 100 ml, △ not precipitate
薄灰色結晶④ 再結晶 tris(2.4,6-trimethoxyphenyl)arsene [M.W.= 576]
Yd 0.468 g, 0.8 mmol (47 / 29)
Mp 157-159℃ (clear)
IR 1576, 1400, 1321, 1223, 1202, 1153, 1119,
1074, 1038, 947, 918, 808, 789, 667, 633, 459 cm-1
1H NMR (270 MHz, in CDCl3)
δ/ ppm: 6.04 (s, 6 H) [3,5-H], 3.77 (s, 9 H) [4-MeO], 3.49 (s, 18 H) [2,6-MeO]
13C NMR (68 MHz, in CDCl3)
δ/ ppm: 163.28 [2,6-C], 160.83 [4-C], 110.90 [1-C], 91.20 [3,5-C], 55.92 [2,6-MeO], 55.15 [4-MeO]
GC / MS (in acetone) 2,4,6-trimethoxbenzene のみを確認
[付記]
tris(2.4,6-trimethoxyphenyl)arsene=sulfide の生成を目的として、得られた tris(2.4,6-trimethoxyphenyl)arsene と単体硫黄を NMR チューブ内 CDCl3 中、rt 及び 50℃で長時間静置後 1H NMR (60 MHz) を測定したが、変化は見られなかった。
[参考文献]
1. M. Wada, S. Natsume, S. Suzuki, A. Uo, M. Nakamura, S. Hayase, T. Erabi, J. Organomet. Chem. 548 (1997) 223.
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- Unknown (伊良林正哉)
- 2009-09-26 09:19:00
- 伊良林と申します。地方大学で生命科学の研究者をしております。トリスというのは、我々の業界では緩衝液として頻繁に使用されております。元々が生物屋ですので、トリスの化学的な性質につきましては知りませんが、実験を行なう上で重宝しているのは事実です。研究者の方なのでしょうか。私事で恐縮ですが、私は研究室の大学院生たちの暮らしぶりをエッセイ風の小説にして出版しております。「大学院生物語」というタイトルです。また、今年の夏には、データ捏造というテーマで「ある博士の自壊」というタイトルで小説を出版しました。ご興味がありましたら、一冊、手に取って読んでみて下さい。
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