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ブログ人HARIMAO

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【我訳】糸ノコとジグザグ

2021-03-24 21:48:13 | 本と雑誌と新聞

「箱の針の一突き光はジグザグに跳び込み青           暗い僕の心に光明は真っすぐに射さず

空スモッグ型ウロコ雲を描くその完全無欠の輝               青空はスモッグで覆われネオンが輝く

きに圧倒されたボクの内臓は大好きなチェロの               僕の精神は好きなチェロの音にも似た

響きを残し暗闇の坂道をころげて行く                   重低音をたてて落ち込んで行く

 糸ノコ無しでは東京は切れない               都の区割は複雑怪奇にてジグザグ

 成長を続ける二十三の瞳はジグソーパズルの               発展し続ける東京二十三区は楽しい

恍惚だけを残してボクは声の無いデンワをかけ               一区が一ピースにて電話をかける真似

るコブの無い一コブラクダの背にまたがる退屈               精根尽きて楽だ堕落した退屈な僕英雄

なロレンスが十本のボウリングピンの向こうに               新宿副都心の十本の高層ビル群の向こ

沈む夕陽に照らされる時ありきたりの天然記念               うに沈む夕陽に照らされ、田舎者の僕

物に結晶するボクの神経性骨軟化症育ち過ぎた               は自覚し神経質骨身を削る。高層化し

十本の雨後の竹ノコが陽の当らぬ花壇を造れば               ビルがアパートに日蔭を造り延長化し

陰性植物の根の様な都市のデンワセンがボクの               電話線が僕の精神を病ませ、まいらせ

養分を吸い上げてホラこんなにボクはヤセ細っ               しかし待ち続ける僕のところに電話を

たのに待ち続けるボクのデンワは一向に鳴らな               かけてくれる友人さえいない

い                                                             電話を電話を電話を電話を電話を電

 デンワヲデンワヲデンワヲデンワヲデンワヲ               話を電話を受話器を取りたいのだ 

デンワヲデンワ

 死に急いだ憶えはないのにボクはゆっくり死               死に急いだ憶えはないのに僕は日増

んで行く誰か早くデンワをかけてくれ今すぐボ               しに死への思いが高じてくる。誰か早

クの朝などブラッドベリの壜に浮かぶカビだら               く電話をかけてくれ、今すぐに。ブラ

けのギョーザの皮みたいでもう今や一匙で唯一             ッドベリ (米の作家) の短編『壜』を一

人殺せない者は無い毒だ                  度読んでみよう、猛毒だ

 糸ノコ無しでは東京は切れない               都の区割は複雑怪奇にてジグザグ

 ジグザグウロウロゴチャゴチャザワザワイラ               都市はあらゆる騒音に満ちている道徳

イラガヤガヤゴトゴトグニャグニャベトベトニ               迷子因縁衆声隔靴掻痒騒動機械音消沈

チャニチャクラクラハラハラ一つのカップに放               涙汗不浄目眩不安、いっしょくたにし

り込み心も軽くシェイクすれば手軽にできる東               たカクテル、スクリュードライバー飲

京スクリュウドライバー型分裂症乾杯だ諸君!               み干す、パラノイア分裂症自暴自棄。

 首吊り型の吊り紐が殺人電車から毎朝ボクを               吊り革が首吊り紐に見える。死ねば

救ってくれるなんて素敵だろう身動きならず屠               この苦しみから逃れられるだろう。思

殺場へと急ぐ牛の頭の群れの間から見え隠れす               えば殺されに行くモー人種窓の外に見

る十本のボウルピンをあっさりとなぎ倒すスト               える新宿副都心の十本の高層ビル群を

ライクを夢見て本を読み便器に跨り煙を吸って               破壊するゴジラの映画を見、読書排便

何かやり残したことがある朝のカードに今日一               喫煙人生の目的は? タイムカードが

日のラク印を押し酒を飲み煙を吐き女の足を見               だけが日課となり、飲酒し欲情のはけ

て何をやり残してるのだろう? 立ち停まるこ               口もなく、やり残してることも忘れた

となく行列をすませれば蹴飛ばされる背中で閉               時間は止まらない。強引にも引きずる

まる自動ドアふと見上げれば都庁にキラめく六               東京都シンボルマークは六法手裏剣だ

方手裏剣唸りを上げて回転カッター今日は何人               過労死しても補償さえもらえないのだ

死んだやらボクはと言えばアルミの羽震わせる    僕はと言えば軽金属のような羽を震わせる

蝉のようにあやういところで十時の方角へ逃げ    蝉のように危ないところで北西の方角へ帰宅する。

帰る日々のうちについに気づいたそうだ! こ    そのうちに悟ったのだ。

の映画はお終いまで観てはいけないのか!            このまま生きて行くには忍びないのだ。

 ENDマークは六方手裏剣と共にやって来る    臨終は東京都の福祉政策の世話にならずに迎えるとも。

最後の始末までお世話になるには及ばないミル    皇居を中心に環状に広がる輪は環状八号線まであって

クに垂らした一雫く王冠は皇居にふさわしく広    ミルクに垂らした一滴から広がる波紋を連想させる

がる輪はついに八つになり六つめの輪はボクの               環状六号線が僕のアパートを横切る

アパートに押し寄せる南へ沿って波乗りすれば               唯一愛する北海道の形をした目黒区。

唯一愛する北海道糸ノコ無しで切れるただ一つ               直線である中央線は僕のアパートを

の東京はボクの塒を貫いて走るけれどもはやそ               貫くけれども北海道には飛び帰れない

れも滑走路にさえなり得ないまだらの紐で囲ま               国鉄山手線で囲まれた部分は『大島』

れた都会のオアシマその波浮の港も三原山もボ               の形をしているが、その三原山に当た

クは愛したことがないなだらかな東京蟻地獄の               る皇居も好きにはなれない。起伏のない地形の

スロープをジグザグ滑り降りかくも賑やかに馬    繁華街をさまよい歩き、虚勢をはった馬のように

のごとく

 貧 貧貧貧・・・・・・                         ヒンヒンと叫び声をあげて午前二時に中目黒公園の

 と嘶いて今夜は午前二時屈斜路湖にて退場し               いきもの池で入水自殺しなければ人間としての価

なければボクは人間ではあり得ない」                   値を失うだろう。


松本清張著「砂の器」

2020-11-05 06:32:20 | 本と雑誌と新聞

(上巻)
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。
だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。

(下巻)
善良この上ない元巡査を殺害した犯人とは誰か? そして前衛劇団の俳優と女事務員殺しの犯人は? 今西刑事は東北地方の聞込み先で見かけた〝ヌーボー・グループ〟なる新進芸術家たちの動静を興味半分で見守るうちに断片的な事実が次第に脈絡を持ち始めたことに気付く……新進芸術家として栄光の座につこうとする青年の暗い過去を追う刑事の艱難辛苦を描く本格的推理長編である。


島田荘司著「盲剣楼奇譚」

2020-09-19 02:30:11 | 本と雑誌と新聞



江戸時代から続く金沢の芸者置屋・盲剣楼で、終戦直後の昭和二十年九月に血腥い大量斬殺事件が発生した。
軍人くずれの無頼の徒が楼を襲撃、出入り口も窓も封鎖されて密室状態となった中で乱暴狼藉の限りを尽くす五人の男たちを、一瞬にして斬り殺した謎の美剣士。
それは盲剣楼の庭先の祠に祀られた伝説の剣客〝盲剣さま”だったのか?
七十余年を経て起きた誘拐事件をきっかけに、驚くべき真相が明かされる!?