小笠原諸島が日本の領土に返還されてから50年。
私にとって忘れられない思い出があります。
私の人生を決定づけたエピソードがあります。
それ故、一時も忘れた事はありません。
今から50年前の今頃です。
当時学生でした。就職活動の真っ最中です。
朝日新聞の学生向け英字新聞を取っておりました。
決して英字新聞を摺読出来る能力は持ち合わせておりません。
手元に英字新聞があるだけで、自己満足していたのです。
小笠原諸島返還のニュースが新聞に大きく取り上げられております。
新聞のコラムに記事が掲載されております。
それは日本語版の新聞です。
後日、このコラムが英字新聞に掲載されておりました。
地名のローマ字から小笠原諸島返還に関する記事だと推測できました。
日本語版のコラムを切り抜き、英字新聞の記事と並べて判読しました。
私の英語の勉強です。
法学部に所属してましたから、就職試験も憲法関連の例題に挑戦。
練習問題集の最初の問いが「天皇の国事行為について」。
試験勉強は根気のいることです。
中々、長続きはしません。
それでも、勉強開始の最初の問いの回答は、しっかりと記憶されております。
世の中には不思議な事があるものです。
小笠原諸島返還から遅れること5ケ月。
10月に会社の入社試験に臨みました。
試験は英語の長文を判読し、その感想を筆記するものです。
そして、専門課程の法科に関する論文です。
学科試験はこの2問だけの入社試験です。
問題と答案用紙が配られるまでは、不安の連続。
もともと勉学は出来の良い方ではありません。
ところてん方式で押し出されて、卒業年度まで来た感じです。
それでも希望だけは高く掲げておりました。
目の前に配られた問題を見た瞬間、あ然とした。
何て、偶然だろう。
その幸運に身振りを感じた。
英語の問題は小笠原諸島返還のあの新聞コラムの英文化されたものでした。
そして、もう一つの専門課程の論文は
あの練習問題集の最初の設問でした。
何の苦労も伴わず、解答用紙を埋め尽くすことが出来ました。
無事に学科試験を通過して、最終面接試験です。
緊張して臨みました。
経営首脳陣が並ぶ前に座らされて、
人事担当者が「学科試験は優しすぎましたか」の質問。
これには緊張感が一気に消えてしまいました。
気が緩んでしまったのか、
今までの経緯の種明かしをする羽目になって仕舞いました。
そして偶然が重なっての幸運の喜びを素直にお披露目しました。
それしか取り柄の無いこともお話しました。
それが良かったのかも知れません。
後日希望する会社からの入社内定の知らせが届きました。
懐かしい50年前の思い出の一コマです。