『夕日と拳銃』 檀一雄
『闘神 伊達順之助伝』 胡桃沢耕史
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主人公は伊達宇和島藩の三男坊で、実在した伊達順之助。「狭い日本に住み飽きた」と満州へ渡り、馬賊となった人物。現代の刑法なら銃刀法違反で即座に、逮捕されるのであるが、満州であろうが日本国内であろうが、平気で拳銃を持ち歩き、標的を描きぶっ放すという、危険極まりない人物で描かれている。西部劇が流行った時代の影響か? まさに無頼派といわれた作家の、作品である。考証は、無視はしていないのであろうが、文体とともに、自由奔放。新聞に連載されたとの事。この時代は、娯楽の一つとして新聞の連載小説が存在したようである。片手間で3日ほどかけて、面白く読了。
『夕日と拳銃』 檀一雄全集Ⅴ 新潮社 1977/8/25次は、きっかけとなった胡桃沢耕史の『闘神』を読んでみようと、探しましたが見つかりません。作家が故人になった当初は、沢山書店に溢れるのですが、時とともに、その書籍も消えるようです。書店には、読んでくれよと、沢山の本が溢れているのですが、読みたい本が欠けている。現役作家を大事にする、出版社の意向も判らないではありませんが、名作は途切れないように、出版して欲しいものです。
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→ 無線綴じ文庫本の補修
さて、胡桃沢耕史『闘神』ですが、伝記となっております。出自が宇和島伊達の六男坊のようですし、九州で育ったことになっているのが東京だそうです。馬賊にはならなかったなど、実像を描き出そうとしている記述です。喧嘩で殺人事件を起こしたとか、戦犯で処刑されたなど、大筋では共通しておりました。
活躍した舞台が、中国の近代史ということで、歴史教育では取り上げられることが少ない、複雑な時代背景(辛亥革命から日本敗戦までの中国)です。大筋では知っているつもりですが、主人公の置かれた状況を把握するのは非常に困難でした。実在の人物であるが、政治の表舞台に登場したわけではないので評伝がない、子息が存命である...などの事由で、描き難い人物なのである。
『闘神 伊達順之助伝』 胡桃沢耕史 文春文庫 く3-12 1993/7/10一読者としては、細部にこだわらず、主人公の自由奔放さを作品にした『夕日と拳銃』が面白い。
2005/07/16 ものずき烏 記