ものずき烏の無味乾燥?文

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檀一雄:夕日と拳銃/胡桃沢耕史:闘神

2005-07-16 | 書籍 の 紹介

『夕日と拳銃』 檀一雄
『闘神 伊達順之助伝』 胡桃沢耕史

 胡桃沢耕史の『闘神』が出版された頃、同じテーマで書かれた小説がありテレビ放映された事の記憶があって、二番煎じかと、手を伸ばさなかった。いつでも読める、どこの本屋にも文庫であると思っていたのが檀一雄という作家であった。いざ読んでみようと探したのだが、あるのは令嬢の檀ふみの作品ばかりとなっていた。神保町で探せば、簡単に見つかるものかも知れないが、そこまではと考えていた。ぶらっと立ち寄ったBで、全集本の片割れの1冊で『夕日と拳銃』を見つけました。百五円。すかさず書物の価値を知らぬバカな古本屋だと、ほくそえみながら購入しました。
 主人公は伊達宇和島藩の三男坊で、実在した伊達順之助。「狭い日本に住み飽きた」と満州へ渡り、馬賊となった人物。現代の刑法なら銃刀法違反で即座に、逮捕されるのであるが、満州であろうが日本国内であろうが、平気で拳銃を持ち歩き、標的を描きぶっ放すという、危険極まりない人物で描かれている。西部劇が流行った時代の影響か? まさに無頼派といわれた作家の、作品である。考証は、無視はしていないのであろうが、文体とともに、自由奔放。新聞に連載されたとの事。この時代は、娯楽の一つとして新聞の連載小説が存在したようである。片手間で3日ほどかけて、面白く読了。
夕日と拳銃』 檀一雄全集Ⅴ 新潮社 1977/8/25
 次は、きっかけとなった胡桃沢耕史の『闘神』を読んでみようと、探しましたが見つかりません。作家が故人になった当初は、沢山書店に溢れるのですが、時とともに、その書籍も消えるようです。書店には、読んでくれよと、沢山の本が溢れているのですが、読みたい本が欠けている。現役作家を大事にする、出版社の意向も判らないではありませんが、名作は途切れないように、出版して欲しいものです。


 見つけましたが、背表紙が割れてバラバラになりそうな文庫です。さっそく、わたしなりの文庫の補修をデジカメで撮影しながら行いました。補修方法をブログで投稿しようとしたのですが、ブログでTABLEを使うと、意図した表示になりませんので、別途ホームページに開示しました。古本を利用する方は参考までにご覧下さい。
無線綴じ文庫本の補修

 さて、胡桃沢耕史『闘神』ですが、伝記となっております。出自が宇和島伊達の六男坊のようですし、九州で育ったことになっているのが東京だそうです。馬賊にはならなかったなど、実像を描き出そうとしている記述です。喧嘩で殺人事件を起こしたとか、戦犯で処刑されたなど、大筋では共通しておりました。
 活躍した舞台が、中国の近代史ということで、歴史教育では取り上げられることが少ない、複雑な時代背景(辛亥革命から日本敗戦までの中国)です。大筋では知っているつもりですが、主人公の置かれた状況を把握するのは非常に困難でした。実在の人物であるが、政治の表舞台に登場したわけではないので評伝がない、子息が存命である...などの事由で、描き難い人物なのである。
闘神 伊達順之助伝』 胡桃沢耕史 文春文庫 く3-12 1993/7/10
 一読者としては、細部にこだわらず、主人公の自由奔放さを作品にした『夕日と拳銃』が面白い

2005/07/16 ものずき烏