THE JAZZ COMPOSERS ORCHESTRA
収集していたJCOAレーベルですが、その最後に第1作目を投稿することになりました。"The Jazz Composer's Orchestra" JCOA(USA)LP-1001/1002 Communication #8 soloists: Don Cherry (cornet) Gato Barbieri (ts) Steve Lacy, Al Gibbons (ss) Gene Hull, Bob Donovan (as) Lew Tabackin, George Barrow (ts) Charles Davis (bs) Lloyd Michels, Randy Brecker (flh) Bob Northern, Julius Watkins (frh) Jimmy Knepper (tb) Jack Jeffers (b.tb) Howard Johnson (tuba) Carla Bley (p) Kent Carter, Ron Carter, Richard Davis, Charlie Haden, Reggie Workman (b) Andrew Cyrill (ds) 1968/01/24 Communication #9 soloist: Larry Coryell (g) Communication #10 soloists: Steve Swallow (b) Roswell Rudd (tb) Preview soloist: Pharoah Sanders (ts) Al Gibbons, Steve Marcus (ss) Frank Wess, Bob Donovan (as) Lew Tabackin, George Barrow (ts) Charles Davis (bs) Lloyd Michels, Stephen Furtado (flh) Bob Northern, Julius Watkins (frh) Jimmy Knepper (tb) Jack Jeffers (b.tb) Howard Johnson (tuba) Carla Bley (p) Roc Carter, Eddie Gomez, Charlie Haden, Steve Swallow, Reggie Workman (b) Beaver Harris (ds) 1968/05/08 Communication #11 part 1 Communication #11 part 2 soloist: Cecil Taylor (p) Al Gibbons, Steve Marcus (ss) Bob Donovan, Jimmy Lyons (ts) Lew Tabackin, Gato Barbieri (ts) Charles Davis (bs) Lloyd Michels, Stephen Furtado (flh) Bob Northern, Julius Watkins (frh) Jimmy Knepper (tb) Jack Jeffers (b.tb) Howard Johnson (tuba) Bob Cunningham, Charlie Haden, Reggie Johnson, Alan Silva, Reggie Workman (b) Andrew Cyrill (ds) 1968/06/20 21銀色で文字だけでデザインされた、たった2枚なのにBOXに入っている威圧感すら与えてしまう、贅沢なレコード。(のちにECMとかトリオで再発売したのは普通のダブル・ジャケットで、威圧感はなくなった)
アルバムの名義人はマイク・マントラーなのにセシル・テーラーの仕分けにしているレコード店もある。わたしも、セシル・テーラーと並べていた。リーダーは誰にするか、迷ったけど名義どおりにすべきであろうとの結論に達した。有名どころがジャケットの表には書いてあるので、誰にしても間違いはなさそうなのであるが、今回ブログで投稿するのに考えた。名義人はマイク・マントラーなのに、演奏はしていない、作曲と指揮がマイク・マントラーとなっている。そうです、クラシックと同じ扱いなら、明らかにマイク・マントラーのアルバムなのです。
このマイク・マントラーなんですが、ヨーロッパの現代音楽をそのままアメリカに持ち込んでフリー・ジャズとのコングリマットをやろうとJCOAを組織したと考えられるのです。このアルバムには豪華パンフレットが付いているのですが、各楽曲の譜面の部分まで載せているのです。クラシックの演奏家であれば、譜面どおりに綺麗に音を合わせるのでしょうが、ジャズの演奏家ですから、それぞれの個性で解釈してしまいます。出てくる音色は不気味なブホォーー(言ってみればブラス・バンドの音合わせで、聴く気のない人には不快感を与えるであろう音色)、それをバックにソロイストがいつものスタイルでやらかすわけです。
1曲目(Communication #8 )が、ドン・チェリーとガトー・バルビエリ。
2曲目(Communication #9 )が、ラリー・コリエル。(アコースティックのコリエルでなくて電気ギターの破天荒なコリエル)
3曲目(Communication #10 )のイントロをスティーブ・スワローがやって、ラズウェル・ラッド。
4曲目(Preview )が、一番短い。この時点でコルトレーンの後継者であるところのファラオ・サンダース。ブレスなしではなかろうかと思う、4分近い大ブロー。
そして5、6曲目(Communication #11 )が、セシル・テーラー。これが、すごい。他人名義だから無茶するのか、ピアノが憎いのか、ものすごいスピードで弾きまくる。これは、ピアノが打楽器であった事を納得させる、セシル・テーラーの最高傑作でもあり、フリー・ジャズの金字塔でもある。
初めて、このレコードに針を落としたのは30年も前になるのだろうけど、その時と感動は変わらない。脳みそがかき混ぜられる快感なんだろう。今でも一度聴いた感覚は、3日ほど残像となり、夢にまで出てくる。という、すべてが、摩訶不思議な衝撃を持つ音楽なのである。
クレジットを打ち込みながら、考えてしまいました。モダン・ジャズの記念碑的大作である。これを発案したのはマイク・マントラーなのだが、これだけのプロジェクトをどうやって実現するか、メンバーに集まってもらうだけでも大変です。なにが大変かというと、俗っぽくなるけど、資金ですよ。ギャラは売り上げを見越しての後払いとしても、このアルバムの収録は’68年に3回にわたっているので、その都度、通信費、とか交通費、宿泊費、食費がかかってしまう筈です。一回で吹き込んでしまえば経費は安くなるのだが、そうはいかない。1回目の反省点が2回目で生きている。そして1、2回目の改良点が3回目となって、セシル・テーラーの大傑作が生まれたのです。
このプロジェクトには、はじめセシル・テーラーは参加する意志がなかったと思いますし、のちのJCOAにも参加していません。クレジットを眺めてください、2回目には参加していませんが、1回目の録音にセシル・テーラのドラマー(Andrew Cyrill )が参加しています。これが物見(偵察)して、情報をセシル・テーラーに伝え、「よし、それなら俺がかき回してやると」メンバー(Jimmy Lyons、Alan Silva そして、Andrew Cyrill )を引き連れて3回目に参加し、この大傑作が生まれたと、想像します。(道場破りとか殴り込みの意気込みと感じたけど、違うかね?)
このアルバム、ジャズのレコード分類なら、セシル・テーラーなのだけれども、明らかにマイク・マントラーのアルバムです。「音楽をジャンル分けして聴くのは間違いだ」と言ったエリントンの言葉の意味を味わっています。
投稿済み・準備中を含め アルバム・ジャケット一覧 を用意しました。
2005/08/31 ものずき烏 記
(参考)
2005-05-04 ドン・チェリー:相対性組曲 JCOAレーベル3作目
2005-05-27 グレシャン・モンカー三世&JCOA JCOAレーベル6作目
2005-05-28 ラズウェル・ラッド&JCOA JCOAレーベル4作目
2005-05-29 クリフォード・ソーントン&JCOA JCOAレーベル5作目
2005-05-30 リロイ・ジェンキンス&JCOA JCOAレーベル7作目
2005-08-30 カーラ・ブレイ:エスカレーター・ オーバー・ザ・ヒル JCOAレーベル2作目