50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

啓はもう調子づいて、あの曲の続いている錯覚に任せながら・・・

2016-05-21 07:37:06 | 小説
啓はもう調子づいて、あの曲の続いている錯覚に任せながら、「きっと春には御堂筋で和子さんに、げんげの花冠を贈ろう」と無邪気にも口走った。だが和子はげんげの花冠よりはどうやら初めて呼ばれた名の方に、感激していた。なぜならそのすぐ後、和子はこだわりがない調子で、「げんげ、て何の花?」と言うものだった。

(「南幻想曲」つづく)