【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

【会社の税金】一定の水準を超えると税額が激増することも(意識の切り替えが必要)

2018-06-30 10:31:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社を設立して2・3年の間は、納税するといえば「地方税の均等割」と「源泉所得税」だけという場合もめずらしくはありませんが、会社が成長し一定の水準を超えると税額が「激増!」することがあります。税額が10倍になることなんてざらです。100倍になることもあります。

多くの会社は資本金の額を1000万円未満にすることで設立初年度には消費税が課税されないようにしています。設立時の初期投資は多額であること、設立当初は安定顧客が少ないことからそう簡単には利益は出せず法人税も課税されません。

◆これがわが国の税制の仕組みなんですよ!

このように考えるしかありません。大切なことは、この仕組みを理解して、あらかじめ税額を予測し、納税資金を確保しておくということです。

次に大切なことは、有利な方法を選択して税額を計算するということです。消費税ならば「原則課税と簡易課税」の有利なほうを選択する、法人税ならば「青色申告」を申請し各種の特典を享受するといった具合です。

◆消費税は販売価格に転嫁を

消費税については販売価格に転嫁するしかありません。価格設定の段階で消費税の納税を意識しておくことです。

◆法人税はコストとして認識する(法人税を払わなければ蓄積は増えない)

法人税はコストであると認識しなければなりません。

売上-売上原価-諸経費-法人税

これが会社の「利益」なのです。利益は法人税を納税した残りです。利益は「留保」と呼ばれる会社の「蓄積」です。優良と呼ばれる会社は長年にわたってこれを積上げているのです。この積上げた留保(蓄積)を投資して、さらに利益を出し留保(蓄積)を増やしているのです。「利益が出て法人税を払うのが馬鹿らしいので、ゴルフ、宴会、旅行・・・」、これではいつまで経っても留保(蓄積)は増えません。法人税を払わなければ(払った結果として利益が出さないと)蓄積は増えないのです。

★役員報酬や投資を抑えていませんか?

会社が成長を続けているのに、役員報酬をいつまでも設立当初の水準に据え置いていることがあります。代表者としての正当な対価は受け取るようにしなければなりません。適正な役員報酬はコストですので、これを抑えての利益は本当の利益ではありません。

投資(設備、人材、研究開発など)のタイミングは難しいです。また、投資に失敗することもあります。しかし、ある程度の先行投資をしておかなければ収益機会を失う恐れがあります。適正な先行投資は将来の収益機会の獲得と法人税の節税の両面で必要なことなのです。経営者はこれを恐れてはいけないのです。

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会社設立から引退まで

2018-06-30 10:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社を設立してから引退するまでのことを考えてみると、必ず「会社という制度」を意識しなければならない局面に出くわします。

●後継者を育成する(権限の委譲)
設立から事業が起動に乗るまでは無我夢中で、「会社何たるか」を考える余裕などありませが、事業が軌道に乗り、次の展開を考えるようになると後継者(安心して仕事を任せられる者)の育成を考えなければなりません。後継者というからには一般の従業員とは違います。まずは、役員(取締役)でなければなりません。また、株も持たせなければなりません。

●会社を譲る(投下資金の回収)
後継者が育ったならば、いずれは会社を譲ることを考えなければなりません。役員(取締役)は簡単に退任できます。問題は保有している株式です。上場企業ならば株式市場で売却するかそのまま配当を目的に保有してもかまいませんが、非上場企業はそうはいきません。誰かに買い取ってもらわなければ会社に投下した資金を回収できません。また、投下資金の増殖部分も受け取らなければなりません。

●会社を消滅される(一代限りで廃業する)
後継者にバトンタッチして会社を継続するのではなく、「一代限り」というのもそれはそれで良いことだと思います。会社を消滅させるには、設立したときと同じように法務局で手続をしなければなりません。この手続を清算といいます。また、清算の前提として会社の財産を全部換金して負債は全額返済して、残った資金を株主に分配しなければなりません。

★代表者の急死

大変縁起の悪いことですが、代表者(株主兼代表取締役)が急死した場合のことも考えておかなければなりません。

まず知っておかなければならないのは、代表者が死亡しても直ちに会社は消滅しないということです。代表者の存在が大きい(代表者が何もかもを動かしている)中小零細企業では営業そのものは停止になると思います。従業員も会社を去ってゆきます。しかし、会社の法的存在は残り法務局に登記されたままで、預金、車両などの資産、金融機関からの借入金は会社名義のままです。

代表者の遺族(遺産を引き継ぐ相続人)にすれば、会社の全株式を保有している代表者が死亡すれば、直ちに会社の預金などの財産も遺族のものになると考えるかもしれません。しかし、そのためには遺族を次の代表者に選任して登記するという手続を経なければなりません。このことはあらかじめ家族や近親者に伝えておき、不時の際の具体的手順を明らかにしておかなければなりません。

「会社で契約している生命保険」についても注意が必要です。被保険者は代表者でも死亡保険金の受取人は会社ですので、死亡保険金を遺族が直接受け取ることはできません。会社が受け取り、会社が遺族に退職金として支給する、あるいは株主に対して分配するという手順になります。

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税務調査と在庫(在庫を少なく計算すれば税金が減る)

2018-06-21 10:30:00 | 税務調査
★在庫と売上原価の関係

ここでの在庫とは「期末在庫」の「計算」のことです。「適正在庫」とか「品揃え」とか、営業方針や経営戦略における在庫ではありません。

売上原価の計算は次のとおり行います。

「期首在庫+当期仕入-期末在庫」

期首在庫と当期仕入はすでに計算されていますので(期首在庫は前期末在庫として前期に計算している)、期末在庫の計算をすることによって売上原価は確定します。

期末在庫金額は次のようにして計算します。

「商品ごと」の期末数量×「商品ごと」の仕入単価=「商品ごと」の期末在庫金額

これを「全商品」について合計しなければなりません。

仕入単価の計算方法は「先入先出法」「移動平均法」「総平均法」「最終仕入原価法」などがありますが、多くの中小零細企業は最終仕入原価法で計算しています。

★在庫を少なく計算すれば利益が減る(税金も減る)

売上原価の計算式からすれば、期末在庫が少なくなるように計算すれば売上原価が増え、利益が減ることが理解できます。

少しでも期末在庫が少なくなるように計算しようとする納税者の心理を、当然税務署は心得ています。また、その手法についても熟知しています。

★在庫の意図的な除外

「期末の在庫数量なんて税務署にわかるはずないじゃないですか(笑)。どうせ過去の話なんだから」は甘いです。

年度末が3月31日で、納品書や請求書の納品日が3月31日の仕入であれば、その分が年度末の在庫に含まれていないのは不自然です。さらに、売上計上記録にその商品がなければ、もう、在庫から除外したということは「決定!」です。

★在庫の過小評価

在庫の数量は正確でも、数量に乗じる仕入単価が過少であれば在庫は過少に計算されることになります。仕入単価の計算方法は「先入先出法」「移動平均法」「総平均法」「最終仕入原価法」などがありますが、この計算を間違っていることがあります(不正な計算をしている場合もあります)。

★在庫明細(実地棚卸の記録)

期末在庫の計算をするためには、「実地棚卸」という作業を欠かすことができません。実地棚卸とは、事業年度末に、店舗や倉庫にある在庫を「実際に数える」という作業です。そして、この数えた記録を「在庫明細」として保存しておかなければなりません。帳簿から在庫の数量を計算できる場合でも、帳簿と実際の数量の一致を確かめるために実地棚卸はしなければなりません。

税務調査では、この在庫明細の提示を必ず求められますので、すみやかに提示できるようにしておく必要があります。

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税務調査と買掛金・未払金(計上額の推移、長期間の未払い)

2018-06-19 15:00:00 | 税務調査
これで「税務調査ネタ」の7連続投稿です。本当は税務調査ネタなど書きたくはありません。特に、「読者に恐怖心を抱かせる」「税務署の内情を誇大に暴露する」といった類のネタは嫌です。でも、税務調査ネタはアクセス数が多いので書くしかありません(笑)。

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買掛金(仕入)と未払金(経費)は税務調査の重点的調査項目であるといえるでしょう。

「支払ってもいないのに費用が増やせる(利益が減って税金が減る)」
「ということは請求書を・・・」

買掛金と未払金を打ち出の小槌のように計上して、ほくそ笑んでいる納税者がいることを税務署は知っています。

しかし、そんなことはさせないのが彼らの仕事なのです。

◆買掛金と未払金が増え続けている

買掛金や未払金は事業年度末には支払っていないかもしれませんが、翌事業年度以降には必ず支払わなければなりません。ですから、事業内容、規模、支払条件などが一定していれば、毎事業年度末の買掛金や未払金もそんなには変動しないはずです。増え続けるなんてことはありえません。

「どの相手先の買掛金と未払金が増え続けているのだろう(減っていないのだろう)」

税務署は調べます。

「やはりここか(笑)!」

税務署は、買掛金や未払金を過大計上(架空計上)していることの裏を取ってから税務調査に臨む場合もあります。税務調査はその確認作業にすぎないこともあるのです。

◆早期計上も見逃さない

「翌年度に支払っていることは確かなんだから」といって、注文、場合によっては見積もりの段階で買掛金や未払金を早期計上することがあります。

納品やサービス提供が事業年度中に終了していなければ、その事業年度に買掛金や未払金は計上できません。税務署はこの点を納品書、請求書などで入念にチェックします。

◆相手先との結託

相手先と結託すれば、正当な請求がありそれに対する支払いであるように装うことができます。立場の弱い相手先であれば不正に協力せざるを得ない場合があり、長期にわたって買掛金や未払金の過大(架空)計上を続けることもあります。しかし、相手先もいずれは限界に達し税務署に本当のことを喋ってしまうのです。

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税務調査と売掛金(計上額の推移、値引きと貸倒れ)

2018-06-13 10:00:00 | 税務調査
売掛金は税務調査では必ずといってよいほど調べられます。

「入金がないのに売上に含めて(利益を増やして)税金を払わなければならない」
「入金がないのだから(売上に含めなくても)税務署も気づかないだろう」

このような納税者の「心情」や「心理」を税務署は熟知しています。だから、売掛金を重点的に調査するのです。

◆売掛金計上額の推移

税務署は売掛金計上額の推移を見ています。第11期末100万円、第12期末105万円、第13期末30万円で、各期の売上がいずれも2000万円だったとすれば、第13期末の売掛金が少なすぎる(売上を過少に計上している)のでは?」と考えます。

税務署が売掛金(売上)の計上漏れを発見する第一の手法は、請求書控と売掛金計上記録(総勘定元帳や売掛帳など)との照合作業です。調査対象の事業年度中の日付で請求書が発行されているのに、「どうして売掛金として計上されていないのですか?」と迫ってきます。

仕入(売上原価)との関係も調べられます。年度中にAという商品を仕入れ(仕入計上記録あり)、Bという得意先に納品しているのにBに対しての売掛金が計上されていないのはおかしいです。

調査対象年度の翌年度の預金通帳も調べられます。特に、年度終了月の翌月の通帳です。翌月中旬頃までの入金は、通常は前年度の売掛金(前年度に販売やサービス提供が済んでいる)と考えられます。この入金と上記の納品や仕入の記録を照合すれば、売掛金(売上)の計上漏れが判明します。

◆値引きと貸倒れ

「値引き」とは計上した売掛金(請求した代金)が、軽微な不良、若干の納期遅れ、不快な接客などを理由により得意先から減額を要求されることです。「貸倒れ」とは得意先の倒産などを理由として売掛金が回収不能になることです。

値引きも、貸倒れも、売掛金(売上)を減額できるのは当然です。

「本当に値引き?貸倒れなの?」
「本当は回収しているんだろ(笑)?」

しかし、税務署はこう考えるのです!それが、彼らの仕事なんですよ!

銀行預金に振り込まれた分をこんな扱いにすることはできません。そこで、現金回収した分を値引きや貸倒れにするのです。

「でも、どうやって税務署は調べるの?」

事業外の預金通帳(家族名義など)、得意先への反面調査、税務署独自の調査網などで十分な裏を取っているから、あんな喧嘩を売るようなことを平気でいってくるのです。

実際には回収できている売掛金を、値引きや貸倒れとして費用処理した場合には、その費用処理は取り消されます。会社の場合には、さらに代表者の給料として扱われ(代表者が回収した売掛金を受け取っているので)、その給料から所得税を源泉徴収しなければなりません。

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