【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

まずは総勘定元帳から!(税務調査で調べられる帳簿)

2018-03-20 17:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
税務調査では必ず総勘定元帳を調べられます。しかも、最初に調べられます。ですから、税務調査が行われる最初の日には、税務調査の対象期間の総勘定元帳をあらかじめ用意しておき、調査官の指示があったならば直ちに総勘定元帳を提示できるようにしておかなければなりません。

会社に課税される法人税は利益に課税されます。利益は決算書の損益計算書で算出されますが、その損益計算書の基となるのは総勘定元帳です。総勘定元帳は損益計算書を構成する各勘定科目の計算根拠です。売上や経費の中身を知るには総勘定元帳を調べなければなりません。

会社には消費税も課税されます。納税する消費税の計算は、総勘定元帳の中から「消費税を受け取った取引」と「消費税を支払った取引」を抽出し、そこから「受け取った消費税」と「支払った消費税」を計算し、前者から後者を差し引きすることにより行います。

このように、会社の税金と総勘定元帳とは密接な関係があるのです。ですから、税務調査においては、まずは総勘定元帳を調べられるのです。

●総勘定元帳に記載されていることは本当か?

●総勘定元帳に記載されるべき取引が漏れなく記載されているか?

このような観点から、調査官は総勘定元帳を次々に調べます。そして、さらに深く検討すべき事項を絞り込みます。

★総勘定元帳を起点に補助簿を調べられる

総勘定元帳の記載は総括的、集約的であることから、さらに掘り下げた検討を行うには補助簿を調べなければなりません。例えば、総勘定元帳における売上が全得意先の月合計で計上されている場合には、補助簿である売掛帳でなければ得意先別の状況はわかりません。ですから、補助簿を調べるのです。

★帳簿と基資料の照合

帳簿(総勘定元帳や補助簿)は会社が作成するものですから、会社に都合のよい記載をすることができます。虚偽の記載もできます。不都合を隠すこともできます。そこで、税務調査においては帳簿の基資料、それも会社以外の者が作成した外部資料との照合作業を行います。外部資料とは、預金通帳、領収書、請求書、契約書などです。

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消費税の処理には税抜処理と税込処理がある(いずれも利益は同じ)

2018-03-20 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
取引を仕訳するに当たっては、消費税に関連する取引をどのように取り扱うかによって、税抜処理と税込処理の二つの方法があり、いずれかを選択しなければなりません。

◆税抜処理

取引に関する消費税額を抜いて、つまり、取引額を本体価格と消費税額に区別して仕訳するという方法です。消費税が間接税であることからすれば合理的な方法です。

税抜処理においては、受け取った消費税は「仮受消費税」、支払った消費税は「仮払消費税」とし、取引の金額から区別して仕訳をします。納税金額は、事業年度合計の仮受消費税と仮払消費税の差額となり、納税後は仮受消費税、仮払消費税ともゼロとなります。

税抜処理においては消費税に関連するすべての取引を、本体と消費税に区分けしなければなりません。しかし、相手先との価格決定の段階で消費税が区分されていない取引もあることから、納税義務者自らが区分する必要があり大変手間の掛かる方法であります。一般に、税抜処理は事務能力の高い会社が採用する方法です。

税抜処理も会計ソフトがあれば容易に行なえます。ほとんどの会計ソフトにおいて、「『税込入力』の『税抜出力』」ができるからです。しかし、価格表示が消費税込みでされている取引の場合、総勘定元帳や試算表(いずれも税抜き)と現実にギャップを感じてしまいます。例えば、交通費(電車賃など)は、現実の取引においては税込みで行われていますが、総勘定元帳や試算表では税抜きとなってしまいますので、実際よりも費用が少なく計上されているように感じます。

このような実情からすれば、一概に「税抜処理は合理的」ともいえないのかもしれません。

【設例】

年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1000
仮受消費税80
売掛金1080
仕入800
仮払消費税64
買掛金864

(2)損益計算書
売上1000
仕入800
利益200

(3)貸借対照表
仮受消費税80から仮払消費税64を差し引いた16が未払消費税(納税する消費税)として表示されます。

◆税込処理

消費税込みの取引額でもって仕訳をする方法です。収益には受け取った消費税が含まれ、費用には支払った消費税が含まれることから、消費税額が利益に影響します。しかし、最終的な納税額を費用として処理することにより、利益は税抜処理と同様の結果となります。

【設例】

上記、税抜処理の場合と同じく、年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1080
売掛金1080
仕入864
買掛金864
租税公課16→納税する消費税(80-64)

(2)損益計算書
売上1080
仕入864
租税公課16
利益200

最終的な利益は、税抜処理の場合と同じになります。

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現金出納帳(金銭出納帳とも呼ばれる)

2018-03-16 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
現金出納帳とは、会社が保有している現金(硬貨と紙幣)の増減(日付、金額、内容)と結果としての残高を記録する帳簿です。事業活動の結果の多くは現金の動きとして表れますので、この帳簿を正確に作成することは非常に重要なことです。

資産の原形は現金です。会社の設立時には現金が出資され、それが事業のために投下され、再び現金となって回収されます。会社は現金を増やすために活動しているのですから。現金の記録をすることは当然のことです。

複式簿記においては取引を仕訳として記録し、それを分類集計して決算書を作成します。取引には現金の出入りを伴わないものもありますが、その取引の前後では現金の出入りがあります。ですから、現金出納帳は様々な取引の根源なのです。

中小零細企業では、現金の管理がずさんで現金が特定の場所に保管されていないことがあり、現金出納帳の残高と実際の現金残高を照合できないことがあります。また、代表者がポケットマネーで事業関連の支出を立て替え払いすることもありますので、現金出納帳に表れない出金があります。

簡単なように思えて、いざ作成してみると様々な疑問が生じてくるのがこの現金出納帳です。「残高がおかしい?」「何かが抜けているようだ?」といった具合です。

★★★現金出納帳の残高がおかしい?

◆マイナスとなる場合(社長借入金)

入金欄の記帳漏れが考えられます。まずは、銀行預金からの引出し(手元に現金としておいている)と売上代金の現金回収(預金に預けていない)の記帳を確認します。それでも現金がマイナスとなる場合は、「社長(代表者)借入金」の有無を確認します。中小零細企業では会社の資金が不足した場合、社長(代表者)が会社に個人の資金を提供するのが普通です。この社長借入金の入金処理を現金出納帳でしていない場合は、金銭出納帳の残高がマイナスとなる場合があります。

出金欄が二重記入などで過大になっている場合もマイナス残高になります。入念にチェックしてください。

◆考えられないほどプラスとなる場合(社長貸付金)

出金欄の記帳漏れが考えられます。現金出納帳の記帳は毎日行うのが原則です。しかし、現実には1か月分程度をまとめて記帳することがあります。領収書がすべてそろっている場合は問題ないのですが、領収書がすべてそろっていない状態で金銭出納帳を記帳すると残高が異常なほどプラスになることもあります。

入金欄が二重記入などで過大になっている場合も要チェックであることはいうまでもありません。

社長貸付金を記帳していない場合も問題が生じます。社長貸付金とは、社長(代表者)に対する資金の使途が明らかでない出金です。これについては、出金時に現金出納帳に記帳をして、後日返金を受けるか、使途を明らかにする(社長貸付金を他の勘定科目に振り替える)かしなければなりません。

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売上を計上する日(代金入金の日ではない!?)

2018-03-14 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
お陰様で平成29年分の所得税確定申告も無事終了しました。確定申告に関してお伝えしたいことはたくさんありましたが、残念ながら確定申告期間中はそれができませんでした。またの機会にお伝えしたいと考えております。

それでは、久々の投稿をさせていただきます。

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企業経営者は、複式簿記や会計理論を離れて、自社の商品や販売形態からして合理的な売上計上の時点(日付)を考えてみなければなりません。

「この段階まで到達すれば販売をしたと考えて間違いがない」という時点を通過したならば、売上としてカウントするのです。

売上計上についての明確な尺度を確立し、それを遵守するということは、企業経営上の最重要事項であるといっても過言ではありません。売上計上のルールなくして、事業活動の成果を測定することができないからです。

★売上の計上は販売の時点にしなければならない(入金の時点に計上するのではない)

帳簿の作成を始めたころ、このことを知って、愕然とする人、反発をする人が非常に多いです。

販売の時点で代金を受け取る小売業などを除いて、ほとんどの業種では代金の受取りは販売よりも遅れます。ですが、売上の計上は入金に先行して販売の時点で行わなければならないのです。

例えば、事業年度が平成29年4月1日から平成30年3月31日で、平成30年3月31日に販売をして、代金の回収は翌事業年度の平成30年4月30日になった場合でも、平成30年3月31日に売上を計上しなければなりません。その事業年度に入金もないのに、売上が計上され利益が増えるということです。

これは「ルール」ですので受け入れるしかありません。このルールは、利益を抑えたい(法人税を少なくしたい)という場合には大変酷です。しかし、ルールなのです。

◇理由?
それは商慣習です。商慣習上、代金は後払いとなっているからです。

◇最終的に代金の入金がされなかった場合!?
大丈夫です。返品、値引き、貸倒れなどとなった場合には後から売上を取り消すことができます。

★業種別の売上計上日(例)

売上の計上が販売の時点であるとはいっても、「販売の時点」が何時であるかは、業種や業態によって異なってきます。

◆小売店

小売店の場合には販売(商品の引渡し)と同時に代金を受け取りますので、売上と入金の時点、つまり日付が一致します。しかし、顧客がクレジットカードでの代金支払いを選択した場合には売上計上が入金に先行します。

◆小売店以外で商品販売する場合(卸売業、ネットショップ、製造業の既製品販売など)

代金後払いの販売です。商品を引渡した日に売上を計上します。商品を発送する場合には発送(出荷)の日をもって売上を計上します。商品の発送を運送業者に依頼する場合には、運送業者が発行する受領書の日付で売上を計上します。

◆注文生産する製造業

注文生産する製造業の場合には、既製品を販売する場合と違って、製品が注文どおりに作られているかを顧客が点検(確認)する作業が必要となります。売上の計上は、この点検が済んだ日にします。

顧客が点検をしたことを証明するために、「受領書」や「引取書」などをあらかじめ用意しておき、それに顧客の署名と署名日の記入をしてもらいます。

◆ソフトウェア製作

既製品を製作して販売する場合には、商品を引渡した日に売上を計上します。その要領は、上記の「小売店以外で商品販売する場合」と同じです。

注文を受けて製作する場合には、完成したソフトウェアをユーザーが使用できる状態になった日に売上を計上します。

◆建設工事

受注した物件が完成し、引渡しをした日に売上を計上します。一軒家の建築工事でいえば、住めるような状態になったということです。なお、完成を見極めるのはあくまでも顧客です。

建設工事の場合は、この完成した日を明らかにするため、「工事完了書」などをあらかじめ用意しておき、それに顧客の署名と完成引渡し日の記入をしてもらいます。

◆サービスを提供する場合

サービスの提供が完了した日に売上を計上します。派遣業であれば派遣期間が終了した日、各種教室であれば授業が終了した日に売上を計上します。

◆ネットショップ(入金確認後に商品を発送)

ネットショップのほとんどが、代金の入金確認(クレジットカードの場合には決済確認)をもって商品を発送していると思います。売上の計上は商品を発送した日にします。

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