先日のワールドツアー☆インドの動画。
お子さんの演奏に踊ってくれたお母様。
バレエを長くされていて、
最近はベリーダンスも始められたとか。
あの動画を公開しても良いですか?
とお聞きしたら、かまわないけれど
教室の品格を落としそうで心配と
おっしゃっていました。
品格⁉️
いえいえ、音楽は本来そういうもの。
それに私はとても素敵だと思ったのですけどね。
このブログを読んでくださるピアノの先生からも
素敵とコメントを頂き、嬉しく思いました。
さて今日はバッハのお話。
有名なシャコンヌ。
色々な楽器で演奏されています。
私も大好きな曲のひとつです。
このシャコンヌ。
素晴らしい芸術作品ということは
誰の目にも(耳にも?)明らかではないかと思います。
ですが、この曲の原型は
ポピュラー音楽。
シャコンヌの語源はスペインとフランスの
国境で話されているバスク語で chocuna
可愛らしいという意味だそうです。
可愛らしい?あのシャコンヌが???
シャコンヌの起源は16世紀の南アメリカだと言われています。
16世紀といえば、大航海時代。
もともとヨーロッパで踊られていた踊りを
アメリカ大陸に渡ったばかりのバスク人や、スペイン人が踊っていたのかもしれません。
1600年頃、スペインの植民地だったペルーで
このchacona(チャコーナ)が大流行します。
先住民インディオや、スペインから連れてこられたブラック・アフリカンの影響下に生まれた
植民地の底辺にうごめく民衆や、路上の芸人のエネルギーを出発点としています。
なんだか崇高な感じもするバッハのシャコンヌですが、
元は舞曲です。しかも官能的!
いえいえ、それどころかダイレクトに
エロティックな性格を持つ、少々危ない踊りや歌でした。
それを掻き立てるように、カスタネットが加わり
Vida、vida(生!)のリフレインが重ねられて
テンションを上げていき、最後にchacona!
と爆発するというものでした。
chaconaはスペイン語ですが、
ciacona(伊)ciaconne(仏)と各地に広がったので
その土地の言葉で残っています。
植民地ペルーで大流行したこの曲は、
統治するスペインへ渡っていきます。
そしてこの踊りが風紀を乱す、よろしくないものとして、1615年には教会当局や、王の勅令で
舞台上での公演が禁じられます。
しかしスペインでも大流行で
禁じられれば地下に潜って続けられて、
イタリアへ渡っていきます。
イタリアではギターのコードパターンのひとつとして、
魅力的なオスティナートが多用され
躍動感あふれる快活な楽曲として
当初ペルーで大流行したものよりも
洗練されていきます。
ギター音楽としてのチャコーナは
1640〜60年代に全盛期を迎えます。
ですがあまりにも人々が熱狂することで
教会の統治に不満を持つ人々を
煽動する危険のあるものとして、
ここでも教会の弾圧を受けます。
そして禁じられれば、地下に潜る。
その後アルプスを越えて、フランスにも渡ります。
フランスでは本来のエネルギッシュで
土俗的な性格は喪失して、
ゆったりと優雅な、そして威厳すら感じられるような楽曲形式へと変貌を遂げます。
シャコンヌと呼ばれる時は、
この時期のものを指しています。
バロック最盛期の形式を持った
クラヴサン、リュート、ギターなどのための
楽曲となりました。
教会や当時の政府が
人々を煽動する危険な思想に相当すると
警戒したり、風紀を乱すとして禁じられながら、
それでも人々はその魅力から離れがたく、
地下で脈々と受け継がれ、ペルーからスペインへ、
そしてイタリアへと渡るうちに洗練されていき
フランスではもう原型が想像できないくらい、
変貌を遂げ、バッハがそれらを昇華した芸術作品として生み出す。。。
あの「シャコンヌ」には
こんな経緯があったのです。。。
バッハのシャコンヌを聴いただけでは
にわかには信じがたいですが、
元々は民衆が熱狂する舞曲だったわけです。
音楽は面白い。
音そのものを楽しむだけでなく、
楽曲の背景を知るとさらに面白いですね😊
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