和食レストランでバイトしていた時、毎日来る老人客がいました。なにかしら文句?いやみ、憎まれ口を
ひねってくる老人で他のウェイター・ウェイトレスたちは毛嫌いして彼の悪口を言って疎ましがっていました。
私はそんな彼への苦手意識はなくて、嫌いじゃなかったです。奇妙かもしれないけれど、好感さえ持ってました。
彼の憎まれ口、いやみ、減らず口は、憎めないもので、悪い人ではないのは簡単にわかりました。
悪い人はいっぱいいるけど、彼は全然悪い人ではないことはすぐにわかりました。それがわからないのが不思議。
そしてあのひねて世を嫌い、いつでも文句を言っている態度は可愛く、好ましく私は受け取りました。
また彼は、寂しくてその店に毎日昼食をとりに来ているように見えました。居場所の1つなんだろうと思ってました。
そんな気持ちが伝わったのか、私とその老人は心通い合ったように思います。世相や時勢への文句は言っても、
憎まれ口を店員の私に向けることはなく、私が仕事をしていると席から笑いかけて、こっちも笑い返したりしていました。
すごく可愛らしいと思いませんか?ポケットから出したしょうが飴や珍味の個包装をくれたりしました。
私の方も、本当はそのお膳にはつかないはずの食べ物を入れたりしてました。彼は毎日来てる常連だから、
気づいてお膳から顔を上げてこっちを見て、私は笑っていました。
そしてある日、珍しく彼が姿をみせず、「あれ?今日は来ないの…?」と待ってても、来ませんでした。
その日をさかいに、次の日も、次の日も老人は来なくなり、とても寂しい気持ちで気になっていました。
私は彼が入口から店に入って来るのを、心待ちにしていました。でも、来ることはなかったです。
後で、その方が亡くなったことを知りました。とても哀しかったです。
今でも、彼との心の通い合いはずっと、忘れません。