「ともに生きる」1万人宣言
◇人権制度の未整備
いま日本に住む外国人は、210万人以上となります。外国人登録者の出身国(地域)数190カ国に及び、ほぼ全世界から日本に来て働き、生活していることになります。また、日本国籍を取得した外国人や、日本人と外国人との国際結婚から生まれた「ダブルの子ども」たちなど、外国にルーツを持つ「日本国民」も急増しています。
このように日本社会は今、「多国籍化・多民族化」が進行しています。しかし日本では、諸外国では設けられている人権法制度、たとえば国内人権機関や人種差別撤廃法、外国人の地方参政権、国際結婚家庭に対する多文化家族支援法、複数国籍の承認など、もっとも基本的な人権法制度が、いずれも実現していないのです。
◇外国人制度の全面的改編と改悪
その一方で今年7月9日、入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定法が施行されます。その改定法の実施に伴って、外登法は廃止されます。
これまでの外登法では、日本に90日以上滞在する「すべての外国人」を対象にしてきました。ところが改定法は、「中長期在留者」という新しいカテゴリーを設けて、特別永住者/中長期在留者/非正規滞在者に分断し、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者の「特別永住者」をこれまでと同様に管理する/「中長期在留者」をこれまで以上に徹底的に管理する/「非正規滞在者」をこれまで以上に徹底的に排除する--という法制度を作り上げました。
とりわけ中長期在留者(約170万人)に対しては、さまざまな管理制度が新設され、それらが彼ら彼女らの日常生活をくまなく監視することになります。たとえば住居地変更の届出が14日を超えて遅れた場合、日本人にも「住民基本台帳法での行政罰:5万円以下の過料」が定められていますが、実際にはほとんどが始末書1枚で済んでいます。しかし、中長期在留者の外国人に対しては、それに加えて「入管法での刑事罰:20万円以下の罰金」、さらに90日を超えて届出が遅れてしまったら「入管法での在留資格取消し(退去強制)」になります。このような「加重された罰則制度」について、日本は、在日外国人をはじめ世界に対して、その合理的根拠を示さなければなりません。しかし、立法府も行政府も、このように日本国民と区別して扱うことに対して正当化できる根拠も、論理も明らかにしていません。
◇外国人の「人間としての尊厳」を奪う改定法
これまでの「外国人登録証明書」に替わって、中長期在留者の外国人が常時携帯を義務づけられる「在留カード」の記載事項に、「就労制限の有無」があります。在留カード表面の中央に、囲み罫で①「就労不可」、②「就労制限なし」、③「在留資格に基づく就労活動のみ可」のいずれかが太字で記載されます。このような項目を設けて特記することは、外国人を「人間」として「生活者」として扱うのではなく、「労働力商品」か否か、とみなす発想に基づくものです。これは、日本社会に暮らし「地域社会」を日本人と共に構成している外国人一人ひとりの「人間としての尊厳」をふみにじるものです。
16歳の誕生日を迎えた外国籍の高校生のことを、考えてみましょう。その多くが「永住者」「定住者」「家族滞在」という在留資格となっている生徒は、16歳の誕生日までに学校を休んで地方入管局へ行って、顔写真つきの在留カードを受領し、それを常時携帯しなければなりません。しかも、そのカードには、在留資格によって「就労不可」「就労制限なし」と記載されます。その上、在留資格が「家族滞在」となっている高校生は、別途、地方入管局で「資格外活動許可」を得なければアルバイトもできません。
このような在留カードを常時携帯させ、しかも、(修学旅行時を除いて)日本への再入国のたびに指紋と
顔画像を繰り返し登録させる。それを16歳の子どもたちに強いる国家と社会は、それこそ醜悪です。この
改定法を支えているのは、日本人であり、この日本社会なのです。
◇私たちは、多民族・多文化共生社会をめざす協働者です
7月9日から実施される改定法に対して、私たちは「NO1」と宣言します。
なぜなら私たちは、東北の被災地において大学進学をあきらめて絶望する子どもであり、配偶者を喪って途方にくれる外国籍女性であり、無年金のまま放置され続けている在日韓国朝鮮人・台湾人の一世であり、配偶者の暴力に、逃げる術もなくうずくまる移住女性であり、金融危機・東日本大震災の「派遣切り」によって職場を追われた移住労働者であり、迫害を逃れて日本に来たものの、収容、そして衣食住が与えられないまま仮放免される難民申請者であり、日本の学校にも外国人学校にも行けず、独りテレビ画面を見つめながら一日中を過ごす子どもであり、そして、これらの現実が大多数の日本人にとって「知らなかった」「仕方ない」ものとされようとすることを見過ごすことができず、彼ら彼女らと共に幸せに生きたいと願う者であるからです。
私たちは、この地、この社会で共に働き暮らす人間なのです。
私たちは、改定法に「NO1」と宣言します。
そして私たちは、この地に住む一人ひとりが「人間としての尊厳」が生かされて輝く社会、多民族・多文化共生社会をめざす「協働者」として生きることを、ここに宣言します。
ともに生きるHP: http://www.repacp.org/aacp/tomoni/
入管のフィリピン人一斉無理やり送還に抗議! チャーター料に目がくらんみ加担したJALも許せない!
様々な事情によって帰国できない人を「同意無きチャーター機による一斉強制送還」とは、外国人の人権をまったく無視。
在留カード実施で、いよいよ踏み出した難民も含めた「不法滞在外国人」の大量送還の始まりか?
7月17日のSYI(収容者友人有志一同)の法務省申し入れ・抗議行動での声明
法務大臣 谷垣禎一 様
法務省入国管理局長 榊原一夫 様
チャーター機による強制送還および移民の「不法」化への抗議
今月6日、約70人のフィリピン国籍者を、貴局はチャーター機で強制送還しました。この措置に私たちは強く抗議します。
送還された当事者や、東日本(牛久)入管センターの被収容者の話によれば、今回送還された人々の多くは、10年、20年と長期にわたって日本に暮らしていました。そうした人々は、すでにこの国に生活基盤をもっており、出身国には生活のあても頼る人もありません。ましてや、若くして来日した人や日本で生まれた人にとっては、送還先はほとんど、あるいはまったくの見知らぬ国であり、言葉すら通じない土地です。実際そうした人々は、送還後に行き場がなく、とりあえずシェルターに身を寄せる以外にないと、報道されています。
そうした人々に対して「不法滞在」という言葉を貴局は用いますが、これまで彼らの在留を正規化してこなかったのは、他ならぬ貴局です。近年、外国人労働者の積極的受け入れが政治の場で議論されていますが、まず受け入れるべきは、すでにこの国に暮らし、働いてきた人々ではないでしょうか。外国人を、国の都合次第で自由に処分できるモノとしてではなく、対等な人間として受け入れるというならば、すでにこの国に長く暮らし、しかし権利や公共サービスから排除されている人々こそが、まず正規化されるべきではないでしょうか。
強制送還のさいには、拒否者に対してはスタンガンすら用いらされ、飛行機内でも手錠と腰縄は外されず、ドアを閉めてトイレを使用することすら許可されなかったと、被送還者は証言しています。被送還者たちはまた、長くは一年以上にわたって、入管収容所に閉じ込めてきたはずです。収容所では、ビザがないというだけでほとんどの自由を奪われ、刑務所同然に生活時間をコントロールされ、外部との通信も大きく制限され、食事や居室環境も悪く、適切な医療へのアクセスも断たれます。刑務所への収容であれば、裁判という法的手続きがとられ、期限も最初に定められていますが、入管収容は、手続きも明確な期限もなく、すべては当局の判断次第で行われます。これらすべてのことに、日本の入管行政における人権の系統的な無視が表れています。法務省は日頃、日本社会に人権を啓発し、外国人の人権も数え入れていますが、実際には当の法務省管轄下の入国管理局こそが、その業務において、外国人の基本的権利を踏みにじっているわけです。
日頃より貴局の職員たちは、自分たちだけが「法律」をつねに正しく代行しているかのように主張します。貴局はつねに「合法的」で、貴局がビザを与えていない外国人はつねに「不法」なのだと称します。しかしながら、外国人を対等な人間ではなくモノのように扱っている入国管理局は、かりにもこの国の運営原則とされている民主主義に、真っ向から反しています。したがって、私たちは以下を要求します。
1. 今回、フィリピンに強制送還された約70人の無条件の再入国および在留を認めること。
2. 現在、貴局が把握している約6万人の非正規滞在者をただちに正規化すること。即時の措置が不可能であれば、長期在留者から順に滞在資格を認めること。
3. 非正規滞在者の収容をただちにやめること。
2013年7月17日
SYI(収容者友人有志一同)
7月6日 NEWS TBS
不法滞在のフィリピン人75人、チャーター機で一斉送還
法務省がフィリピン国籍の不法滞在外国人75人を民間のチャーター機で一斉に強制送還したことが分かりました。チャーター機を使った一斉送還が実施されたのは初めてです。
関係者によりますと、不法滞在のフィリピン人75人は、6日午前、成田空港から日本航空のチャーター機でマニラ空港に強制送還されました。警備のために入管職員60人余りが付き添い、マニラ空港到着後、75人はフィリピン政府の関連施設に向かったということです。
強制送還は、通常、外国人1人に複数の入管職員が付き添い、一般の旅客機で実施されますが、法務省はトラブル防止や経費節約を目的に今年度からチャーター機の活用を検討していました。
法務省によりますと、不法滞在外国人は今年1月時点でおよそ6万2000人いますが、なかには日本に長期滞在して生活の基盤ができていたり、家族で子どもだけ在留が認められたケースもあり、支援団体が集団送還に反対の声をあげていました。
7月6日 東京新聞
フィリピン人ら70人を一斉送還 チャーター機利用
法務省入国管理局が6日、不法滞在のフィリピン人ら約70人をチャーター機で一斉に強制送還したことが関係者の話で分かった。コスト削減と安全確保が狙い。チャーター機による強制送還は密航者を除き、ほとんど前例がない。入管によると、不法滞在者には法務省が退去強制令書を発付し、民間航空機などで帰国させる。航空券代は自己負担が原則だが、送還を拒否している場合は国が負担せざるを得ず、付き添いの入国警備官数人分の費用も必要になる。
特にアジア系の外国人を狙い撃ちの生活保護「不正受給」キャンペーン
生活保護並みかそれ以下で暮らす日本人の非正規労働者の不満をそらす狙い。
5月20日の産経
10月16日 東京新聞
生活保護受給の外国人、年金保険料免除除外
日本年金機構が、生活保護を受給している在日外国人について、国民年金保険料が一律全額免除となる「法定免除」の適用外とする見解をまとめたことが十六日、分かった。これまで各地で日本人と同様に法定免除としてきた運用を事実上変更し、所得によっては保険料の一部の支払いを求める。人権団体は「国籍による差別だ」と反発している。
機構本部は、地方組織である年金事務所からの照会に対し、八月十日付で(1)困窮する永住外国人らには日本国民に準じて生活保護を給付しているが、外国人は生活保護法の対象ではない(2)国民年金法上、法定免除となるのは生活保護法の対象者なので、外国人は該当しない-と回答。申請すれば所得に応じて免除の割合が決まる「申請免除」で対応する意向を明らかにした。
例えば、一人暮らしの場合、前年の所得が五十七万円を超えると、年額約十八万円の保険料は全額免除ではなく一部免除にとどまる可能性がある。機構を監督する厚生労働省は「方針を変えたわけではなく、本来の姿に戻すだけ。所得にもよるが、実際には全額免除となる人が多いだろう」(事業管理課)と話している。
7月7日改定入管法に反対し、ともに生きる宣言集会が行われました。
◆プログラム/ 発言・出演者
司会 : 大曲由起子(移住連)
◇開会のあいさつ 田中宏(一橋大学名誉教授/外国人人権法連絡会共同代表)
【第1部】改定法の「現在」を検証する
外国人を徹底的に管理する改定法への全面批判
旗手明(自由人権協会)
「労働者としての権利」を剥奪する改定法
烏井一平(全統一労働組合)
監視される“高度人材',留学生
白石勝己(アジア学生文化協会)
特別永住者は“特別”なのか
金朋央(コリアNGOセンター)
「もう生きていけない」難民申請者
佐藤直子(難民・移住労働者問題キリスト教連絡会(難キ連))
「見えなくされてしまう」非正規滞在者
鈴木江理子(国士舘大学准教授)
「移住女性」を追い詰める改定法
山岸素子(カラカサンー移住女性のためのエンパワメントセンター)
「税金は取るが、サービスはしない」自治体
山田貴夫(フェリス女学院大学非常勤講師)
第1部のレジュメ 「0707.pdf」をダウンロード
【第2部】ともに生きる私たちは、主張する
◇寸劇:川崎市南部のフィリピン人グループ
シリアスな内容だが、素人らしさが一杯、会場を沸かせました!
ダイジェストビデオ3分 「2012_0707.wmv」をダウンロード
「2012_0707.mp4」をダウンロード ipod用
寸劇音声ファイル 15分 「2012_0707.mp3」をダウンロード
◇外国人住民からのアピール
ミャンマー、ペルー、フィリピン、韓国、ウガンダほか
◇各地・各団体からのアピール
APFS労働組合
7.7集会への賛同アピール
7.7集会に参加されている皆さん。
日本社会で懸命に生活している外国籍住民、移住労働者の皆さん。APFS労働組合は皆さんと共に、今回の入管法改定に反対します。当組合員の7割以上がビルマ、エチオピア出身の難民であり、未だ在留資格を取得できていない人も多い状況です。
こうした人々にとり、今回の「改定」は自らの存在そのものを否定される「改悪」に他ならないことは間違いありません。このような制度には断固反対の声をあげ続けなければなりません。共に闘いましょう。
すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)
私たちは、改定入管法の施行によって日本に住む外国人の在留管理がいっそう強化されることに抗議する。
今後外国人は、各自の在留資格で定められた活動を問題なく行っていること、義務付けられた報告を怠りなくしていることを、入管局に絶えず監視されていく。そして、外国人の所属機関も外国人に関する情報を国に提供する義務を課せられ、外国人を監視する役割を担わなければならなくなる。このように外国人が管理監視の対象とされるなか、特別永住者も含め、外国人は自らの「適法性」を証明するために「在留カード」や「特別永住者証明書」を至る所で提示せざるをえない状況も生まれてくることが考えられる。これは外国人に対する明らかな差別政策である。
私たちはこれまで多くの外国人から相談を受けてきたが、現在でも在留資格制度の枠のなかで、人権侵害を受けた被害者が入管局に在留を認められず断腸の思いで帰国せざるをえなかった事例を数多く目にしてきた。今回の改定は日本における外国人の人権状況をさらに悪化させるものと言わざるをえない。
国籍や在留資格の違い、有無によって、基本的な人権が制限されることは決してあってはならない。外国人の管理ではなく、外国人への権利を!
ムスタカー外国人と共に生きる会(代表 中島 眞一郎)
改定入管法に反対し、ともに生きる宣言集会への連帯のアピール
2009年7月に成立した 改定入管法等の完全施行がいよいよ直前に迫ってきました。しかしながら、改定法成立から施行まで3年間という時間がありながら、当事者である在住外国人に対して、法務省入国管理局は、その内容を周知することなく、 圧倒的多数の在住外国人が、その改定内容を正確に知る事もなく放置され、施行日を迎えようとしています。また、地方入国管理局職員は、改定に伴う具体的な運用基準やその方針を施行直前になりながらまともに説明できず、いまだ「本省で検討中」という回答繰り返している有様で、まともな行政機関の態をなしていません。なおかつ、法務省入国管理局のなかで、改定の具体的な運用基準を決定している担当者らは、当初の在留期間原則3年から原則5年に変わるという説明とは異なり、施行直前になって在留期間5年間についての考え方というパブリックコメントを公表し、厳しい条件を課してほとんどの在住外国人が在留期間5年を得ることが難しくなる方針を示すなど従来の入管行政の在り方を一層差別的かつ反動的な方向へ導こうとして
います。
しかしながら、法務省入国管理局は、膨大な権限える一方で、それにともなう事務量が急増するにもかかわらず、法務省入国管理局の予算と人員は限られており、7月9日施行以降、各地方入管局や出張所の現場では、入管行政の混乱と停滞が起きかねない状況となっています。
コムスタカー外国人と共に生きる会は、2011年11月26日 熊本市内での「改定入管法とDV被害者」という集会を皮切りに、2012年7月まで、九州内や熊本県内で、約20カ所の改定入管法と外国籍住民への影響 をタイトルとするセミナーや学習会を開催し、これまで約900人ほどの参加者がありました。そして、参加者の半分以上が、当事者である在住外国人が、セミナーを企画・主催したり、参加しています。そしてこれまで、「物言わん住民」でしかなかった在住外国人のこの問題への関心は強く、講演後の質疑では、多くの質問や意見がだされ、熱心な討議がありました。改定入管法問題を通じて、在住外国人自身の自覚と権意識の向上が感じられることが、大きな希望となっています。また、2012年5月7日を基準日とする仮住民票記載事項証明書などの各市区町村による外国籍住民への送付に対して熊本県内45市町村へのアンケートを送付し、たところ、9割以上の42市町村から回答があり、 回答自治体の6割以上が多言語説明書を同封するなど、外国籍住民への周知させる努力をしている実態も明か
になりました。
コムスタカー外国人と共に生きる会は、施行前日の7月8日に熊本市内で「大丈夫!あなたの在留資格、新たな在留管理制度と外国人政策」というタイトルの集会を開催します。そして、
この改定入管法等問題を通じて、従来の日本人社会から「見えない存在」でしかない在住外国人が自らの権利意識を向上させ、日本社会の構成員として「見える存在」となり、管理と規制しかない入管行政を、外国人の権利を保障する外国人政策に転換させ、日本社会が内外人平等原則を実現し、外国人と共に生きる社会となる事へ向け、今後とも取り組んでいきたいと思います。以上をもって、コムスタカー外国人と共に生きる会からの本集会への連帯のメッセージとします。
◇「ともに生きる宣言」朗読と行動呼びかけ
◇閉会のあいさつ 渡辺英俊(移住連/外国人人権法連絡会共同代表)
敬称略
法務大臣への署名が140団体、個人10,204筆が7月6日時点で集まりました!
◆改定入管法の施行に当たり
非正規滞在外国人への幅広い在留特別許可をお願いします
法務大臣 殿
2012年7月9日より改定入管法が施行され、日本に住む外国籍者への管理がより厳
しくなろうとしています。わたしたちは、この法の施行が、多民族・多文化共生の時
代に逆行することを深く憂慮します。
とりわけ、在留資格のないまま日本に長く住んで来た非正規滞在者にとっては、生
存権を奪われる結果になりかねません。この人びとの多くは日本社会に定着しており、
長年働いて社会に貢献してきました。今回のような、例を見ない大きな入管制度の変
更に当たっては、その影響を緩和するためにも、旧法下での違反者への救済策が考え
られるべきです。
つきましては、この機会に、貴大臣の権限に属する在留特別許可の制度を人道的見
地から弾力的に運用し、以下のことを実施して下さるようお願いします。
1.2009年7月に改定された「在留特別許可に係るガイドライン」に示されている「積
極的要素」を評価し、入管法に関わる「消極的要素」にこだわることなく、でき
るだけ幅広く在留特別許可を認めてください。
2.難民認定申請者で、仮滞在許可あるいは仮放免許可を受けている人には、広く人
道配慮の在留特別許可を認めてください。
3.在留特別許可を申請して現在仮放免許可を受けている人には、人道的見地を重視
した在留特別許可を認めてください。
4.安定して日本社会に暮らしている非正規滞在者には、できるだけ幅広く在留特別
許可を認めて下さい。
呼びかけ
移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
東京都文京区小石川2-17-41 TCC2-203
Tel O3-5802-6033 Fax O3-5802-6034
各自治体で働きかけましょう!
◆自治体要請書 モデル案
2012年 月 日
要望書
(市区町村)長 様
の会
貴職におかれましては、住民の自治の確立と、住民の権利や福祉の向上に日々、御尽力されていることに心から敬意を表します。
私たち の会は、 年に会設立後、外国につながる住民との交流や基本的人権の保障と多文化・多民族共生の社会をめざして活動している団体(※代表、連絡先など)です。
さて、ご承知のように、2009年に改定された入管法・入管特例法・住民基本台帳法が2012年7月9日から施行されます。外国人登録法が廃止され、改定「入管法」、「住民基本台帳法」などによる新たな在留管理制度がスタートします。しかし、今回の法改定は、在日外国人当事者が指紋押捺拒否闘争などによって訴えてきたことや、各地の自治体が積み上げ、2006年に総務省が発表した「地域における多文化共生推進プラン」などの内容が生かされた法改定ではありません。このような「管理強化」につながる法改定が外国籍住民に周知されておらず、今後、外国籍住民がその意思に反して届出の遅延などにより法違反者として刑事罰を受けたり、在留資格が取り消されることになりかねません。
貴職におかれましては、上記のことに配慮され、新しい在留管理制度の下で外国籍住民の基本的人権が侵害されないよう、以下の点について善処されますよう、要望いたします。
記
1 住民登録に移行されない「外国人居住者」の記録の整備
〔課題〕今回の法改定では、非正規滞在者には在留カードも交付されず、また住民基本台帳法にも登録されません。記録なき居住者、UndocumentedResidentsになってしまいます。この点について、改定住民基本台帳法附則第23条では、「仮放免をされ当該仮放免の日から一定期間を経過したもの」、入管法・入管特例法によって「本邦に在留することができる者以外のもの」について、Tなおその者が行政上の便益を受けられることとなるようにするとの観点から、必要に応じて、その者に係る記録の適正な管理の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされています。
〔要望〕
貴(市区町村)も自治体独自の公的な証明となる住民記録を整備すること。
法務省は「市区町村において登録原票に基づき保有する個人情報に係る取り扱いについて、登録原票の写しを保管することの可否も含め、各市区町村における個人情報保護条例などにより判断するものとする」と指導している(『外国人登録』2012年4月号)。
貴(市区町村)も外国人登録原票の複写保管と外国人登録情報を保管すること。
仮住民票の返戻分の取扱について 調査の結果、出国、転居等判明した者を除き、3年間保管すること。
住民記録に移行されない外国籍居住者のうち、短期滞在や、出国済みの人を除いた非正規滞在者と推測される人について、「外国人居住者」の記録の基礎になるものであり、子どもの小学校入学時期を考慮して5年は保管すること。
7月9日以降、外国籍住民からの照会、問い合わせに住民記録担当課・係で対応できるように法改定にくわしい職員を配置すること。
市区町村窓口や国際交流協会などにおいて多言語対応にそなえること。
2 非正規滞在者の生存権、健康を享受する権利の保障
〔課題〕2011年11月の総務省自治行政局外国人住民基本台帳室長通知「入管法などの規定により本邦に在留することができる外国人以外の在留外国人に対して行政サービスを提供する為の必要な記録の管理等に関する措置に係る各省庁への通知について(通知)」によって、非正規滞在者にも提供されている行政サービスは、今回の法改定によって「こうした行政サービスを受ける対象範囲が変更されるものではないと認識」されている。しかし、移住労働者と連帯する全国ネットワークなど市民団体の調査によると、現状でも外国人登録をしていない外国人居住者の健康を享受する権利は保障されていない実態があることがわかりました。法改定により、在留カードを交付されず、住民票にも記載されない非正規滞在者の権利行使はますます困難になります。
〔要望〕
非正規滞在者が受給可能な行政サービスを維持すること。
自治体判断ですでに、「外国人登録をしていない」、「適法な居住」などの理由により、非正規
滞在者に対して、本来受給可能な行政サービスから排除している場合は、改定住民基本台帳法附則第23条の趣旨を実現すること。
非正規滞在者が受けられる行政サービスについて、その該当者の把握に努め、周知すること。
申請者の住所確認は、住民登録の有無ではなく、氏名、住所地記載のある公共料金等の領収書などで
行うこと。
2009年の国家審議における政府答弁では、「地方公共団体の職員には退去強制に該当する外国人を知った時には通報義務が課せられているが、当該行政機関においては、通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の遂行という公益を比較考量して通報するかどうか個別に判断することも可能」とされている。本来業務の遂行という公益を重視し、人権尊重の立場から対応すること。
3 今後の課題(法改定に関連しないが、従来から指摘されている課題)
〔要望〕
住民基本台帳法に移行される外国人住民にも、住民基本台帳に基づいて一律に各種の通知、案内、調査票などが送付されることが想定される。多言語の案内文を作成し、同封すること。
外国籍市民の行使できる権利また市民としての責任等、異なる文化についての理解のある多文化・多民族共生コーディネーター、多文化・多民族共生ソーシャルワーカーなどの養成に積極的に取り組むこと。
国際職などによる外国籍職員あるいは外国語に堪能な職員の積極的採用の促進、これに伴う外国籍一般事務職員の任用制限の完全撤廃を検討すること。
自治への参画を推進するため、外国人市民会議の設置、各種審議会等に外国籍住民の積極的採用を図ること。
公共施設、庁舎内の多言語案内・表示、ユニバーサル・デザイン等の推進
差別禁止法や外国人人権基本法などの制定によって、総合的な移民政策を樹立すること、及び人権尊重の観点から出入国・在留管理制度の抜本的な見直しを政府に求めること。
4 参考資料
1)非正規滞在者の人権一国内における審議から
*2000年の大脇雅子議員の「外国人の医療と福祉に関する質問主意書」に対する政府回答
(2000年5月26日内閣参147第26号)
母子保健法第15条に定める妊娠の届出は、同法第16条第1項に基づき母子健康手帳を交付し、妊娠期間中及び出生後に健康診査、保健指導等の行政サービスを適切に提供できるようにすることを主な目的としており、通常、短期的な滞在者(中略)。しかしながら、外国人登録を受けていない外国人が妊娠の届出を行う場合の届出先は、居住地の市町村とすることが適当であり、当該市町村が母子健康手帳を交付することとなる。
予防接種法(昭和23年法律第68号)第3条第1項に定める定期の予防接種については、市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものを対象としており、外国人に係る居住の有無は、当該予防接種の実施者である市町村長が外国人登録等により判断しているところである。また(以下、後略)。
*2009年度国会審議における政府答弁
(6月19日衆議院法務委員会、6月30日参議院総務委員会、7月7日参議院法務委員会)
今回の法改正によって直ちに今まで受けられていた行政サービスが受けられなくなるというものではなく、不法滞在者が受けられる行政サービスの範囲は、法改正後も基本的に変更がないものと理解しております。例えば、義務教育や助産施設における助産、結核予防のための健康診断は、不法滞在者もその対象とされているところでございます。
人道的見地から、病院の方で診療しなければいけないという事態に立ち至ったケースにおいての対応もしかるべく行われていると認識しております。定期の予防接種につきましても、地方公共団体の責務として実施する部分につきまして、特に在留資格を問わずさせていただいております。
*2009年7月7日入管法、入管特例法の一部改正法に対する国会附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
③在留カード又は特別永住者証明書の有無にかかわらず、すべての外国人が予防接種や就学の案内などの行政上の便宜を引き続き享受できるよう、体制の整備に万全を期すこと。
*2010年11月及び2011年3月の移住労働者と連帯する全国ネットワークの省庁交渉における厚生労働省からの文書回答:「児童福祉法、母子保健法、予防接種法、感染症法等に定める制度の適用が従来通り可能である。」
2)非正規滞在者の人権一国際人権条約から
*国際人権規約社会権規約(A規約)第12条〔健康を享受する権利〕