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IT基盤の核となるアプリケーション・サーバー、そのコモディティ化のインパクト

2004-11-04 15:16:37 | ITビジネス
 オープン系のIT基盤の核となるWebアプリケーション・サーバーのコモディティ化が急速に進んでいる。既に欧米でのシェアは、オープンソースのJBossがBEAシステムズのWebLogicを抜き、2位に浮上している。首位を行くWebSphereにしても、IBM関係者からは「コモディティ化が進む中、タダの製品に対抗するすべはない」と弱気の声も聞こえてくる。

 アプリケーション・サーバーのコモディティ化が進む中で、ITベンダーにとってその戦略的重要性が高まっているのは、皮肉なことだ。オープン系のシステムにとって最も重要なのが、IT基盤を構成するミドルウエアであり、その核になるのがアプリケーション・サーバーであるのは、もはや常識。ベンダーはここを押さえることで、ユーザーをロックインすることを狙う。だから、コモディティ化はベンダーには一大時だ。一方、ユーザーから見れば、JBossなどオープンソースの普及は、ベンダーのロックインを避け、IT基盤を自由に設計する余地が広がることを意味する。

 こうした状況を受けて、IBMやBEAなど大手は自社のアプリケーション・サーバーの基礎的技術をオープンソースに合わせると共に、JBossを振り切るために新しい競争ステージに移行しようと必死である。そのためのキーワードがSOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)である。将来のSOA導入に向けて、IBM製品あるいはBEA製品を選びましょう-----そんなメッセージを両社は今、ふりまいている。

 日本市場となると事情が異なる。オープンソース活用はまだLinux止まりで、JBoseの採用事例はまだ、ほとんど聞こえてこない。IBMやBEAだけでなく、富士通、NEC、日立製作所が自社ユーザーをロックインするために独自のアプリケーション・サーバーの販売に血道を上げている。国産メーカーによると「最近、販売が大きく伸びている」と口をそろえるから、欧米に比べると日本はまだ平和な市場である。

 しかし、国産ベンダーは安閑としていられないようだ。まずIBMが、彼らのカスタマー・ベースに大攻勢を掛けているからだ。「グローバルで戦わなければいけない御社が、海外で何の実績もないソフトをIT基盤として導入してよいですか」というセールストークが、大手企業の情報システム部門の動揺を誘っている。ユーザーだけなく国産メーカー系の販社にも、IBMの手は伸びているという。さらに、実績はまだこれからだが、JBossに対する関心も高まっており、野村総合研究所のようにJBossを公然と担ぐシステム・インテグレータも登場している。

 日本市場も今後、欧米市場のようになるだろうか。ユーザーがIT基盤やミドルウエアの重要性を認知すればするほど、その可能性は大きくなる。ユーザーはSOAの動向もにらみながら、グローバルに普及している商用製品か、オープンソースかを選択するケースが増えてくるだろう。その選択肢となる商用製品の中に、Interstageなど国産製品が含まれている可能性は、残念ながら極めて低い。