東葛人的視点

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「NTT“グローバル”ソリューションズ」はできないのか?

2005-02-03 16:37:51 | ITビジネス
 2月1日付の日経産業新聞の2つの囲み記事の対比が面白かった。1つは「NTTデータは変われるか」という連載記事の最終回。NTTデータがグローバル企業に脱皮するためにNTTコムウェアなどと合併する可能性を示唆したものだ。もう1つが「米SBC、AT&Tを買収」という記事で、地域電話会社にAT&Tが飲み込まれることからNTTはどんな教訓を学ぶべきか、とういうものだ。

それぞれの記事自体はありきたりで別に目新しくはない。ただ、同時に2つの記事が出たことが、NTTの通信とITをまたぐソリューション事業の問題点と可能性を暗示するようで面白いと思ったのだ。

 さて私は以前、 NTTデータ、NTTコムウェア、NTTコミュニケーションズの3社合併の可能性を書いた。私の認識はそのときとあまり変わっていないが、こうした記事が出たときでもあるので、もう少し考えてみたい。

 NTTデータとNTTコムウェアとの合併は、誰でもが思いつく筋だ。NTTデータが官公庁システムや金融関係のデータ通信事業の運用、NTTコムウェアがNTTグループの業務システムの運用や旧交換機の流れを汲む通信ソフトの開発と、それぞれ独自性はあるとはいえ、ソリューション事業という目指す方向は一緒だ。すでに営業面でのバッティングも起っており、このまま両社が単独で生き残りを図れば、事業領域は重なっていくばかりだ。そもそもITサービス業の事業モデルは単純で、いずこも似たようなものだから、当然と言えば当然だが。

 その両社が仮に合併した場合、そのままでは、あまりメリットはない。規模の利益を追求できるといっても、両社とも特に地方では人員が余り気味だ。ゼネコンと同じ受注産業であることを考えれば、2つある“のれん”が1つになると受注力がトータルで落ちる可能性もある。グローバル企業を目指すという視点からは、この合併で何のメリットもない。NTTコムウェアはもちろん、NTTデータもかつての中国での失敗で懲りてしまい、グローバル展開はITサービス業界の水準からいっても遅れている。

 合併のメリットは、オープンソースへの事業展開を加速できることだろう。NTTコムウェアは、NTTグループ全体がシステムのオープンソース化を進めている関係で、オープンソースの技術者を多数抱え、ノウハウもそれなりに蓄積している。一方、NTTデータはお世辞にもオープンソースで先行しているとは言えない。NTTデータの基幹系システム構築に関する様々なノウハウや経験と、NTTコムウェアのオープンソースの技術力を組み合わせれば、SIの事業モデルを刷新するぐらいのことができるかもしれない。

 一方、NTTコミュニケーションズはどうか。米国のAT&Tや地域会社とは資本構造が違うため、AT&Tのような運命は考えられないが、日本でも電話のIP化により長距離電話会社としての将来は暗い。NTTコミュニケーションズは『グローバル・ソリューション・カンパニー』の方向性を目指すが、“グローバル”ではベリオでミソをつけた。その余波からか、“ソリューション”についても、昨年、将来の社長候補とも言われたソリューション事業のトップがNTTコムウェアに転出するなど、明るい話が聞こえてこない。

 とはいえNTTコミュニケーションズは、NTTグループの中で最もグローバルに親和性が高い。NTTデータ、NTTコムウェアとの3社で合併すれば、ITと通信の両方のリソースを持ち、オープンソースを武器にグローバルにソリューションを提供する“理想のITサービス会社”の原型ができる。NTTコミュニケーションズはNTT東西と違い、特殊会社ではないから、原理的には自由に再編できるはずだ。

 通信業界的にはこうした再編に異論もあるだろうが、グローバルで戦えるITサービス会社が日本にも必要だと思っている私から言うと、ぜひチャレンジしてほしいテーマだ。ITサービス業の業界再編の起爆剤になるかもしれない。もちろん、そのほかにもNTTデータとメーカーのソリューション事業といった、あっと驚くような組み合わせもありかもしれないが。