東葛人的視点

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驚くほど親日的なベトナム、ITサービスのオフショア拠点としての将来性は?

2005-02-08 20:47:27 | ITビジネス
 ベトナムをオフショアリングの拠点にしようという試みが本格化してきた。オフショア拠点としてベトナムに注目が集まり出したのは、確か2003年のことだ。最初にその話を聞いたときは「へぇ」と思ったが、今ではインド、中国に続く3番目の有力拠点として、すっかり定着した感じだ。もっとも実際にソフト開発拠点として機能するには、進出企業によるもうしばらくの試行錯誤を経なければならないだろうが…。

 ところで、ベトナムは本当に親日的な国だ。オフショア拠点としてベトナムの優位性が語られるとき、「日本人とよく似たメンタリティ」が引き合いに出される。インド人や中国人のようにドライではなく、ビジネスにおいても“ウェットな人間関係”が通用する国だとも聞く。しかも、ベトナムは民衆レベルだけでなく、国家レベルにおいても、ものすごく親日的だという。国連など国際会議での日本案に最も賛同してくれるのは、米国ではなくベトナムだそうだ。「共産主義国家」のイメージから意外な感もあるが、日本の外務省も戦略的に重要な国としてODAなどで手厚い援助をしているらしい。

 こうした親日的な土壌に加え、IT産業への期待が親日度をさらに大きくする。あるITサービス会社が現地企業と合弁でソフト開発会社を作ったとき、ベトナムの副首相が来賓に訪れ、「日本を兄のように思う」と言ってのけたという。ベトナムでは大学でIT関連の勉強をしても、就職先がなかなか見つからないとも聞く。そんなわけだから、ITサービス会社が現地法人を作ろうものなら、それこそ熱烈歓迎だ。特に、学生の将来を心配する大学の先生たちからは、とても感謝されるという。

 私も含め、日本人的メンタリティの人間は、こういう話に弱い。「そんなに喜んでもらえるなら」と、うれしくなり一気にベトナム傾斜を深めてしまう。「他の国と違い、あうんの呼吸でビジネスができそうだし、国づくりにも貢献できる。これからのオフショアリングはベトナムだ!」といった具合にだ。

 しかし、ちょっと待てよ、である。確か「これからのオフショアリングは中国だ」と言っていたときも、同じようなことが語られていたのではなかったのか? ドライでビジネスライクなインドでうまく行かず、次は共通の文化的土壌を持つ中国で、それでもダメなので今度は親日的でメンタリティのよく似たベトナムで…そんな文脈で“注目のオフショア拠点”が移動してきた感じがする。

 これでは、真のグローバル化とは程遠い。本来なら、最初は相互理解が浅くても、ビジネスライクに契約を詰め、明確な文書の形(もちろん英語)で発注条件を決め、曖昧さを完全に排除した取引関係を作る。そして、共に利益を得れるWin-Winの関係に発展させることで、相互理解を深めて、互いに大事なパートナーに成長していく。そんな当たり前のことさえできないようでは、グローバル企業にはなれっこないであろう。

 「ウェットな人間関係が通じる」などと言ってるようでは、日本国内の甘い取引関係を外国でも継続したいというクローズドな意識から抜け出せはしない。インド企業や中国企業の“こすっからさ”は国際ビジネスでは当然で、内向きな日本のITサービス会社がグローバル化するためのコーチングを受けているというぐらいに考えた方がよい。逆に、日本に親近感を持ち大きな期待をかけてくれているベトナムに対しては、単なるビジネス上の観点だけでなく、国際貢献の視点に立った取り組みも必要だろう。それが将来のビジネスに対する先行投資にもなるはずだ。