無理して買ったものの、後悔することは間々ある。逆に「本当に買ってよかった」と心底思えることは、なかなかない。「もっと早く買っておけば良かった」と思ったのが、ツァイスの単眼鏡である。
以前から美術館などで単眼鏡をぶら下げている人が気になっていた。ちょうど読んでいた文庫本にも3×12の単眼鏡が紹介されていて、物欲がさらに刺激された。しかしツァイスである。めちゃくちゃ高い。おまけにどの店を覗いても「品切れ・入荷未定」である。無ければ余計欲しくなる。しかし定価47,000円では手が出せない。
そこで同じツァイスの4×12の単眼鏡を買った。コストダウンした機種なのだろう、倍率が高いのに値段は安く2万円台前半で手に入った。しかし天下のツァイス、覗いてビックリした。薄暗いのに肉眼で見るより、明るくハッキリ見えるのである。理屈はわからないけど、覗けば確かに感動がある。単に近くに見える、大きく見えると言うのではない。カメラのファインダー越しとは違う感動だ。まるで目玉の性能がupしたようにも思える。「ああ、これがツァイスなのか」と思った。それにこの単眼鏡は、近接では5倍のルーペにもなる。覗けばいきなりマクロモード。雑誌の付録の望遠鏡を作って喜んだ子供のころのように、本当に面白くて仕方がない。
それ以来、休日の外出時にはGRと共に必ず持ち歩いている。博物館でガラス越しに逸品を舐めるように覗き込むだけではなく、近所の公園だって今までと違った楽しみ方ができる。ケータイのカメラのテレコン代わりに使えば、デジタルズームよりよっぽどまともに撮れる。
お気に入りの単眼鏡だが、気に食わないのがネックストラップ。交換できない本体埋め込みのストラップなのだが、「安手のリボン」にしか見えないのだ。多分ドイツ人ならではの埋め込む理由があるのだろうが、交換できない仕様は唯一不満である。