武器と一口に言われても俺にはピンとこなかった。
人との縁なんてそんなに簡単に切れるものなのだろうか?
そんなことを思いながら俺は人間関係で必要な人か否かを頭の中で整理してみた。
必要ないと判断した人と縁を切れば少しは楽になりつまらなくなくなるのだろうか?
とりあえず必要ないと思った人を片っ端から呼び出したり電話で「もう会わない」と伝えた。
わざわざ伝える必要もなかったとは思うが俺は早く楽になりたかった。
俺「もう会わない」
相手「わかった。じゃあね。」
なんてあっさりなることもなく理由を尋ねられたが「とにかく会いたくない」と押し切った。
しかしどうしても納得してくれない人がいて説得に疲れた俺は熱くなり、ついついこんなことを口にしてしまった。
俺「黙れ、阿保!どっか行け!」
最悪な言葉を発してしまったが俺は今までにない爽快感のようなものを感じた。
俺はこれが武器なのだと思った。
阿保は武器を手にしたら試してみたくなるものである。
俺の口調はどんどん悪くなっていった。
しかし以前よりも心は確実にすっきりしていることにも気がついていた。
その後どんどんエスカレートし「死ね」とか「ゴミのくせに」とか「使えねー」と俺は誰にでも繰り返し使っていた。
確かにこれが武器かもしれないがM先生は「必要ない人にだけ使え」と言っていたのだが俺は武器を振り回しまくりストレスを解消した。
人と縁を切ることより無作為に武器を振り回すことに重点をおいた。
ストレスで自分が潰れるよりマシと思っていた。
同時に親友達の評価もどんどん下がっていっていたようだ。
しかし親友は親友。
俺は親友は裏切らないと思っていた。
そんな傲慢で人の気持ちを考えない俺に罰が当たるのに時間はかからなかった。
ある金曜、俺に一通のメールが届いた。
(誰か忘れた)誰か「土曜のサッカーは中止です。」
サッカーがなくなり土曜暇になったのだが・・・。
土曜の夜俺はジュースを買いに近所のコンビニに行った。
コンビニまでの道のりにいつもサッカーをしている中学校がある。
何気なく中学校のグランドを見るとそこには友人達がいた。
しかも楽しそうにサッカーをしているではないか・・・。
よせばいいのに俺はすぐに状況を理解しグランドに怒鳴りこみに行った。
俺「おい!!!サッカー中止ちゃうんかい!!!」
俺は怒りと悲しみにまかせ怒鳴った。
友人達はシンとして足を止めた。
俺「まさかこんなことされると思わんかったわ!何やねん!全員死ね!!!カスどもが!!!」
皆が静まる中、H君が口を開いた。
H君「あんな、○っ君。何で今日サッカー呼ばれへんかったかわかるか?」
俺「知るか、ボケ!」
H君「・・・。最近の○っ君、よくないで。皆○っ君とはサッカーしたくないって。」
ショックだった。
今にも泣きそうだったがぐっと堪えた。
H君「こんなん言いたくないけど死ねとか言う人とはサッカー出来へんわ。」
俺「・・・。」
俺は何も言わずグランドから出て行った。
知らず知らず俺は「親友」という言葉に甘えていた。
でも「親友」だからこそH君が代表して俺に注意してくれたんだと思う。
そんなこと考える余裕なんてもちろんなかった。
俺は家に帰り布団に包まり一人考えた。
「死ね」とか言うのはよくない→やめる→ストレス→潰れる
「死ね」とか言いまくる→ストレスは発散するが友人達に嫌われる→潰れる
この二つしか頭に思い浮かばなかった。
どっちにしろ潰れるんやったら・・・。
俺の頭の中にある言葉が思い浮かんだ。
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