『イングロリアス・バスターズ』の感想、改めて書いておきます。
正直言って、今までタランティーノ作品が特に好きだったわけじゃない。特徴とされる残酷描写は怖がりの僕には苦手なものだし、「本筋と関係ない長い会話」がそんなに面白いとも思わなかった。なので今回も期待値は高くなかったのだが、始まって数分でのめり込んでしまった。とにかく、緊張感がスゴい。まさに手に汗握る展開。例によって長々とした会話が続く場面が多いのだが、いつ感情が爆発するのか、いつ撃ち合いが起こるのかと身構えながら観るので、疲れるったらありゃしない。そして、そうやって疲れることこそが、映画を観る醍醐味だと改めて気付かされる。なのでまあ、映画に「癒し」を求める人には向いてないだろう。
ストーリーは章立てされて進む。別々の場所で似たようなことを画策している者たちが、終盤で1ヶ所に集結した時に惨劇が起こる……わけだが、そこまで引っ張る語り口がとにかく上手い。巧みだ。成功の要因は、おそらく「細部を執拗に描いたこと」じゃないだろうか。まったく関係ない作品を引き合いに出すのもナンだが、ゴミ屋敷で暮らす男を描いた橋本治の小説『巡礼』を読んだ時も同じようなことを感じたものだ。よく「神は細部に宿る」と言われる通り、微視的な筆致で描くことで普遍性と説得力が生まれ、観客もしくは読者はそこから巨視的な考察を得るのである。
まあ、そんな理屈っぽいことはともかく、『イングロリアス・バスターズ』はめっぽう面白い。例によって悪趣味な残酷描写もあるのだが、そもそも戦争は残酷なものである。現実に戦争の場で行われていることに比べれば、ここで描かれた悪趣味さなど、むしろ可愛げのあるものだろう。
そんなわけで見応えたっぷりの冒険活劇(と呼んじゃってもいいはず)なんだけど、ツッコミどころもある。惨劇の舞台となる映画館の警備が、あまりにも手薄なのだ。だって、ヒトラーが来てんのよ? 他にもナチスの偉い様が勢揃いしてるんでしょ? そんな状況なのに上映中はロビーに見張りがいないなんて! まさに「ありえねー」ですわ。
なので、僕としては「実は総統は影武者だった」というオチかと思ってた……けど、違いましたね。まあ、そういう分かりやすすぎる結末を用意するのは、あんまり得策じゃないかな。
飄々と残酷さを見せるブラッド・ピットもいいが、「ユダヤ・ハンター」を演じるクリストフ・ヴァルツ(寺島進に似た風貌)が素晴らしい。悪の魅力を発散しまくりで、途轍もなくイヤなヤツなのに憎めないのだ。
女優たちも素晴らしい。復讐の鬼と化すショシャナを演じたメラニー・ロランと、二重スパイである売れっ子女優に扮したダイアン・クルーガー。しかも、美女であろうが容赦なく撃たれたり殴られたりする、ってのも痛快だ。そういうところを見て興奮する男子も多いんじゃない? え、僕? そ、それは……。
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