同じ日に公開された映画には『パコと魔法の絵本』や『おくりびと』のように前評判の良い話題作があるってのに、なんで僕は『フライング☆ラビッツ』を優先させたのか。理由は簡単。石原さとみと真木よう子が出ているからである。というか、それ以外にこの映画の「売り」はないよね? あ、もうひとつ、「さっさと観なきゃ早々と終わっちゃいそう」ってこともあった。実際、名駅のピカデリーでは、最初から1日3回しか上映されていない。
で、感想。簡潔に言うと、企画と脚本のズサンさを役者の魅力で何とか補った、という印象。石原さとみ、真木よう子、そして柄本佑には敢闘賞を進呈したい。実際、あの役を演じたのがこの3人でなければ、途方もなく薄っぺらで寒々しい映画になっていただろう。
脇役陣も良かった。大杉漣と光石研が上司と部下というのは現在の日本映画界の中でも最良の組み合わせと言えるし、哀川翔や高田純次にはスターが持つ華やかさがある。ただし、高田純次の演技は明らかに「やっつけ仕事」だろうが。
とにかくもう、物語が安直。ありきたり。安っぽいテレビドラマよりお気楽でトンチンカンなノリで進んでいく。ただ、主人公の言動のトンチンカンさは、石原さとみによって「愛すべき天然っぷり」へと浄化される。いや、浄化と呼んでいいのか分からないけどね。ともかく、おそらく作り手が狙っていなかったであろう面白さが石原さとみの演技によって生み出されていたのは確かだと思う。
トンチンカンの極みは、膝の故障で引退しようとする先輩を石原さとみが引き止めようとする場面だ。石原さとみは「簡単に諦めちゃっていいんですか」「好きなものがふたつあるなら、両方取ればいいじゃないですか」というようなことを言って説得しようとするわけだが、そういう問題じゃないことは誰の目にも明らかだ。先輩は膝を痛めているから仕方なく引退するのだ。簡単に諦めるわけじゃないし、バスケを好きな気持ちは少しも揺らいでいないのだ。この場面でのトンチンカンさは、さすがに石原さとみでも救えなかった。
まあ、他愛もない映画なのであんまり細々とツッコミを入れるのはやめるけど、ひとつだけ書かせて。この映画で描かれたことが事実だとするなら、JALって会社は、ものすごく薄ーーーいコネでも入社させてくれる、ってことにならない? 「私、○○機長の奥さんの妹の同級生の娘のバイト仲間と塾が同じでした」とか「人事の○○部長の妹さんの教え子の旦那の愛人の娘と仲良しです」なんて言って入社しようとゴネる輩が現れそう。
真木よう子は相変わらず男前な立ち振る舞い(もちろん褒め言葉)だったんだけど、ちょっと肌が荒れ気味だったのが気になった。石原さとみがスベスベすぎるから、差が目立っただけ? それにしても、ここんとこ、どの日本映画を観ても柄本親子の誰かが出てる気がするなぁ。
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