どうでもいいことだけど、「あきふかき」と打ち込んだら「空き孵化器」と変換された。使われなくなった孵化器の哀愁を描いた物語か? そこから孵化したヒヨコたちが集まって、なんとか孵化器を修繕して再び使えるようにする、という感動作だったりして。なんじゃそれ。
さて本題。先に感想を書いちゃうと、序盤は愉快、中盤はイライラ、終盤はゲンナリ、という感じ。原作の結末はどうなのか知らないけど、こんな救いのない話を見せられてもなぁ。
チビで冴えない中学教師と、スタイル抜群の美人ホステスの恋物語だ。男は玉砕覚悟で女にプロポーズし、ホステス生活に疲れた女はそれを受け入れる。そして二人は新居で暮らし始める……という序盤は、まさしく男の夢を具現化した展開。しかも、美人ホステスを演じるのが佐藤江梨子、という絶妙な配役だ。マザコン気味で奥手の教師を演じる八嶋智人も好演しているし、なかなか楽しい人情噺になりそうだと思えた。実際、男が勤める中学校に女が勝手に挨拶に行く辺りは、すこぶる愉快。場違いな白いボディコン姿のサトエリが実に麗しく、おかしく、なかおつ愛おしく感じられ、この不釣り合いなカップルを応援したくなってくる。しかし、その後、いわゆる闘病モノの展開になってからは、面白さが半減、いや激減してしまうのだ。
別に闘病モノだから悪いというわけではない。ただ、悲劇に見舞われてからの男の言動が、あまりにも間抜けで情けなさすぎて、こっちは苛々して仕方なくなってしまうのである。無論、同じような状況に追い込まれれば誰もが狼狽し、冷静な判断ができなくなるだろう。しかし、この主人公は、高価な漢方薬みたいなものを次々と購入し(これは理解できる)、金を工面するためにサラ金に手を出し(これもまあ仕方ない)、120万円もの壷を買うことを決意し(これは理解できん)、その金を作るために学校を欠勤して競馬場へ通い(これは分からんでもない)、挙句の果てに生徒の修学旅行の積立金を使ってしまうのだ(これはダメ)。マンガチックなノリで笑わせたかったのかもしれないが、さっぱり笑えない。
それでも、この男が普段は仕事熱心な教師であると窺えるのなら、観ている側は同情したり共感したりできる。だが、そういった描写は皆無であり、「授業中も上の空」「生徒には無関心」という状態しか描かれてなかった。なので、「もともと教師としてもダメな奴だった」としか思えないのだ。もちろん、映画の主人公が立派な人間である必要はないし、愛すべき好人物でさえなくても構わないと思う。むしろ、どうしようもないダメ人間にこそ共感の念が湧くものだ。しかし、これほど愚かで間抜けだと、さすがにシラケてしまう。
※未見の方はここから先を読まないように!※
いろいろと苦言を呈したが、ここまではまあ、大した問題じゃない(という割にはダメ出ししまくったが)。僕を驚かせたのは、男が競馬で一発当てて大金を手に入れた後の展開だ。な、なんと、そのまま女が死んでしまうのだ。うわー、最悪。何の救いもないじゃん。
あくまで好みの問題だろうが、こんな風に人が呆気なく命を失ったしまう物語なんて気が重くなるだけじゃん。その後、女がいかに男を大切に想っていたのかが次々と明らかになり、男は彼女のありがたみを切々と感じることになるのだが、そんなシーンをいくら見せられてもこっちの心は晴れない。こんな結末にするなら、物語の最初の時点で女が不治の病に冒されていることを明かしてほしかった。
何らかの形で「実は生きていた」という結末になることを願いつつ、エンドロールを眺めた。こうなりゃ、超常現象が起きて生き返った、というジャンル無視の無茶な展開でもいい。女が病に伏してからの出来事は夢だった、という反則技でもいい。何でもいいからサトエリを返せっ。しかし、そんな願いも虚しく、エンドロールが終わって映画館の中が明るくなった。ああ、虚しい。悲しい。出来不出来はともかく、こんな映画は好きになれない。観たくなかった。
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