少年トッパ

谷口君の思い出。

 誰かを励ましたり勇気づけたりすることが苦手だ。もちろん、知っている人が落ち込んでいたり苦境に立たされていたりしたら、早く立ち直ってほしいと思う。なので、とりあえず「がんばって」と声をかけようとするのだが、そうした言葉が時には相手にとって重荷になる可能性があることを考えると、ついつい黙り込んでしまうのだ。そもそも自分ごときが励ましの言葉をかけたって、それで喜んでもらえるか? 相手のためになるのか? 満足するのは自分だけじゃないか? そんな風に考えてしまうことが多いのである。

 中学一年生の時、谷口君というクラスメートがいた。でも、入学以来、彼は一度も学校に姿を見せなかった。詳しいことは知らされなかったが、何かの病気で入院していたのだ。そんな彼のために、先生は病院へお見舞いに行くよう生徒たちに呼びかけた。クラスメートたちは何人かで連れ立って谷口君の病室を訪れ、行った翌日は教室で谷口君の様子を話したりした。その姿を横目で見ながら、自分が谷口君に対して何を言おうかと僕は考えていた。入院してる人に向かって「元気?」じゃヘンだよな。「はじめまして」だろうか。なんか照れるなぁ。まあ、とりあえず挨拶は何とかなるとしても、それ以降に話すことはあるのだろうか。共通の話題は見つかるんだろうか。何が好きなんだろ。そもそも僕は人と話すことが得意じゃないし、気の利いた冗談も言えない。病室を訪ねたくせに黙りこくっていたりしたら迷惑だろうなぁ。そうやって考えると、僕はお見舞いに行くことが段々と億劫になってきた。
 他のクラスメートから「一緒に行こうか」と何回か声をかけられたけど、その度に僕は「また今度」と言って、お見舞いに行くのを先延ばしにしてきた。みんなはそれぞれにグループを組んで谷口君の病室を訪れ、それなりに親交を深めているようだ。そうこうしているうちに、気が付いたらお見舞いに行っていないのは僕だけになっていた。どうしよう。困った。中学校に入って数ヶ月が経てば、すでに仲良しグループが何組かできている。僕にも普段話をするクラスメートはいたけど、谷口君のお見舞いに行こうと積極的に誘ってくれる者はいなかった。そう、僕は完全にタイミングを逃してしまったのだ。
 結局、谷口君は一年間休学した。そして、僕は一度もお見舞いに行かなかった。クラスで唯一、僕だけが谷口君と顔を合わせることなく一年を終えたのだ。冷たい奴である。

 ネットを通じて出会った人の中には、不治の病に苦しむ人がいる。自分の余命を知らされ、それでも懸命に生きようとしている人もいる。僕が経験したことがないような辛い目に遭った人たちも多い。そういった人たちからメールなどで悩みを打ち明けられたりするたびに、僕はどうやって励ませばいいのか悩み、結局は当たり障りのない言葉をかけることになってしまう。そして、つくづく自分には人を励ます才能がないことを思い知るのである。う~ん、ちょっと情けない内容になっちまった。すんません。

コメント一覧

トッパさん
聞いてもらうだけじゃ気が楽にならない? そりゃ
ワガママだなぁ。僕も同じだけど(笑)。
モンさん
トッパさん、当たりです。
ボクが偽善について思ったのは、日記を読んでの感想なんで、またまた誤解がないようにね。あ、誤解したのはボクか。
申し訳ないけれど、聞いてもらうだけでは気が楽にならないのがボクです。
そう病気なんです(笑)
トッパさん
日記にトロ? 食べる機会があれば撮影してもいいけど、ほ
ら、ケータイって撮る時に音が鳴るじゃないっすか。なので、
寿司屋とかだと恥ずかしいですよね。それに、そもそも僕は生
魚って苦手なんですよ。嫌いというより、アレルギーで。特に
ダメなのが甘海老ですね。食べると吐きそうになります。トロ
はモノによっては大丈夫なんですが……え? そのトロじゃな
い? あ、吐露ですか。失礼っ。

っつーか、冷たいコメントした覚え、全然ないけどなぁ(笑)。
Bitterさん
SKDさんのおっしゃるとおりだと思います。
相談する方は聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなるはず。
打ち明けられる相手がいるのが、何よりの救いです。

そのぶんトッパさんの抱えるものが重たくなるのだとしたら、日記に吐露するなり、他のモノにぶつけてみるなりして、身軽になってください。
BBSで冷たいコメントされても恨みませんから…。
トッパさん
確かに、悩んでる時は話を聞いてもらうだけでスッ
キリしたりしますからねぇ。僕も聞き上手にならな
きゃ。
SKDさん
昨年とある資格取得の為の講習を受け、学習したこと。
「傾聴・観察・共感」
話を聞かせていただく、それだけでも十分なのでは・・・と私は思います。
トッパさん
モンさん、こんにちは~。すみません、その名前には見覚えが
ないんですが、おそらく前に何度か掲示板に来てくれた○○○
○ちゃんですよね? 息子さん想いで料理が得意な方だったと
記憶してます。違ってたら失礼!

確かに偽善は良くないのかもしれません、でも「どこまでが偽
善で、どこからが偽善じゃないのか」という線引きを明確に行
うのは不可能ですよね。何か行動を起こす時に「これは偽善か
否か」と考え込んでいたらキリがありませんし、それを判断す
るのは自分自身ではないでしょう。
なので、大切なのは「偽善であると思われることを恐れず行動
すること」じゃないかと思います。まあ、それが難しいから、
こうやってウジウジ悩むわけですが(笑)。
モンさん
トッパさん、以前は大変失礼しました。
誤解が誤解を招く・・・とでもいうのかな。
まあ、スミマセンというしかありませんな。
やっぱり偽善はダメだよ。結果として偽善にしかならないのなら、何もしないほうがいい。そんなふうに思いますよ。そんなことを強く思った日記でした。
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