少年トッパ

はじめてのやすくにじんじゃ <こうへん>

 映像ホールに着いたのは、上映開始の1分ぐらい前。展示室と同じく、ここも素晴らしくキレイだ。先客は10名弱。前の方には誰も座っていないので、3列目の中央に座る。椅子の座り心地はすこぶる良い。床に段差が設けられているので、混んでても前の人の頭が邪魔にならないだろう。前の座席との間隔が広めなのもありがたい。名古屋シネマテークやシネマスコーレがこんな風だったらうれしいなぁ、なんて思ってしまった。
 上映開始直前、前方の扉が開いて女性係員が登場。ごゆっくりお楽しみください、みたいな挨拶をする(すんません、あんまり覚えてません)。さあ、いよいよ『みたまを継ぐもの』が始まる。どんな映画なんだろう。わくわく。

 えっと、いきなり結論から言っちゃうと、ごく普通の映画だった。いわゆるトンデモ映画を期待していた僕としては、かなり肩すかしを食らった気分。いや、決して出来が良いとは言えないんだけどさ、年間100本ぐらいの日本映画を観ている身としては、これよりヒドい映画がたくさん世の中に存在することをよーく知っているのよ。昨年なら『少林少女』とか『コラソン de メロン』とか『魁!!男塾』とか『クロサギ』とか『カンフーくん』とか『Girl's BOX ラバーズ☆ハイ』とか『愛流通センター』とか『ドモ又の死』とか『七夜待』とかね。そういうのに比べれば、ものすごく普通の出来。「無理矢理すぎる設定」や「とんでもない展開」や「やりすぎ描写」はなく、ぬるーいだけ。新藤兼人監督の『石内尋常高等小学校 花は散れども』を見習えよっ(特に大杉蓮の特殊メイク!)、と言いたくなっちまった。あと、金子修介監督の『プライド』も。大林宣彦監督の『転校生 さよならあなた』や『その日のまえに』は見習わなくてもいいけど、あれくらいのインパクトがあればそれはそれで話の種になったのになぁ。まったくもって残念。

 簡単に内容を説明すると「自堕落な生活を送っていた青年が、英霊の心に触れたことで次第に自分を変えていく」という物語。靖国神社に参拝したり、遊就館で英霊の遺品を見たり、英霊の遺志が綴られた本を読んだりすることで、「真っ当な生き方」に目覚めていくわけだ。ついさっき実際に若き兵士や女工たちの写真を見て胸を打たれた僕としては、そういう気持ちはよく分かる。なので、その部分には共感できるものの、映画としての面白さは……いや、それを期待する方が間違ってたのか?
 だってさ、靖国神社で上映されている映画なんだから、当然「主人公が自衛隊に入る」というような展開を期待するじゃん(でもない?)。なのに、普通のサラリーマンになることを拒んだ彼が選んだ道は……あ、ここから数行、ネタバレです。この映画をご覧になる予定のある方は(って、そういう方がこれを読んでるとは思えないけど)、次の改行箇所まで飛ばしてください。えっと、彼は結局、コーヒー職人になるわけです。まあ、それに関しては伏線も張られていた(序盤で恋人から「コーヒーだけには、うるさいんだから」と言われる)し、コーヒー栽培の支援を通じてかつて戦地となった途上国に貢献していることも描かれているので、それなりに説得力はあるんだけどさ。

 この映画では、若者の就職難も描かれている。ってことは、けっこう時代を先取りしていたと言えるかも。あと、主人公が知的障害者への偏見を正す場面もあるんだけど、これはちょっと題材を欲張りすぎじゃない? あれもこれも描こうとしたあまり、どれも散漫になってしまっているのよ。
 ちなみに、主人公の青年は田中哲司を若くした感じで、悪くない。問題はヒロインで、えーっと、アジアンの隅田を少しだけ美人にした顔立ちなのよ。うーーん、映画なんだからさ、もうちょっと「華」がある女優を使ってくれないと。

 結局、この映画の最大のツッコミどころは、ヒロインが遊就館で人間魚雷「回天」を触りまくる場面だった。てっきり「展示物に触れてはダメ」と思っていた僕としては、目からウロコが落ちる思いだったのだ。よーし、あとから目一杯触りまくるぞ。なぶり倒すぞ。文句を言われたら「映画の中では触ってましたが何か?」と言うぞっ。
 映像ホールを出て、再び展示室を通り、まだ行ってなかった大展示室へ。おおっ、回天がある。やっぱりデカいなぁ。さあ、触りまくろう。指紋を付けまくろう。と思ったけど、やっぱりペタペタ触るのとバチが当たるような気がして、ほんの少し指先で触れるだけにしておいた。この小心者!

 さすがに時間がなくなったので、急いで出口に向かう。しかし、そんな僕の足を止めるものが!



 休憩所みたいなスペースでビデオが上映されているのだが、その監督がなんと三池崇史だって。うぉー、これは気になる。



 モニタの前に置かれたボードを見ると、古谷一行に松坂慶子に藤村俊二に萩原聖人と、有名な役者の名前が並んでる。こっちの方が『みたまを継ぐもの』よりも遥かに豪華じゃん。
 しかし、ゆっくり見るのは無理なので、泣く泣く(ってほどでもないけど)退散。さらば、遊就館。来てみて良かった。

 歩いて神保町に行き、「さぼうる」へ。文学者など数多くの著名人が通ったことで有名な喫茶店だ。前に東京へ来た時も寄ってみたんだけど、またしても来てしまった。すんません、ミーハーなヤツで。



 というわけで、まとまりのない靖国神社レポでした。「右翼の兄さんに絡まれて泣きそうになった」みたいなトラブルが起きなかったので、さっぱり面白くなかったですよね。失礼しました。
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