1. 先の展開が分かっている。
ま、これは当然のことだよね。
2. 登場人物や情景が、自分が思い描いていたものと違う。
これも、よくあること。「イメージと違う!」ってヤツだ。ただし『嫌われ松子の一生』の場合、これには該当しない(あくまで僕には)。中谷美紀は松子を見事に具現化していたし、一部を除いて配役は良かったと思う。ちなみに、その一部ってのは、市川実日子演じる妹(だって丈夫そうに見えるもん)と、カンニングの竹山演じる教頭(年齢的に少し無理)である。あと、松子が最後に暮らした部屋が埃っぽすぎるのは少々やりすぎだとは思ったけど、そういう過剰さが中島哲也監督の魅力でもあるんだから、まあいいか。
3. どう脚色されたのかを分析しながら観てしまう。
分析というと大げさだが、「ああ、こんな風に省略したのか」とか「あの登場人物は削ったの?」などと思いながら観てしまうのである。そして、なおかつ「こんなに端折って、原作を読んでいない人に意味が伝わるのか?」なんて心配までしてしまう。落ち着かないこと、甚だしい。ちょっと前に観た『ダ・ヴィンチ・コード』なんて、その典型。単行本で上下2巻の長編小説を2時間半の映画に収めるんだからある程度は仕方ないけど、ちょっと乱暴な脚色が目立つのだ。だってさ、ジャン・レノ演じる警部が……おっと、ネタバラシしそうだから書かないでおこう。ちなみに「上手く脚色したなぁ」と感心させられたのは『博士の愛した数式』だった。あれはお見事。
『嫌われ松子の一生』の場合、あまりにも松子の人生が一気呵成に描かれるので、僕としては「こんな風だと、松子が単なる愚かな女(実際そうなんだけど)にしか見えんのじゃないか?」と心配してしまったのである。優秀な教師であった時期、トルコ嬢(これは立派なサービス業)としての技術を磨くために鍛錬する姿、あるいは美容師の資格を取るために猛勉強するところを、もう少ししっかり描いてくんなきゃ。じゃないと、松子の勤勉さや有能さが観客に伝わらないじゃん。そう思ったのである。しかし、こうした僕の考えは、ほぼ完璧に杞憂だったようだ。なぜなら、この映画を観た人のほとんどが松子に好意的な感情を抱いていたからである。
ではここで、掲示板やコメント欄、直メールで頂戴した『嫌われ松子の一生』の感想を勝手に引用させていただこう。
<良かったですよ~。原作とは別モノらしいですが、観て損はございません。>
<松子、ほっんと~うによかったです。是非、是非おすすめです。>
<私は今年一番くらい気に入りました。>
<めちゃくちゃ良かったわ。全てにおいて…(笑)素晴らし~。誰かにいいたくてメールしました(笑)>
<面白いこと面白いこと。うふふ。そういえば修学旅行の話・・たしかに松子の生真面目さが招いた悲劇というか、悲しいっすな。>
<私は原作読んでないから映画の感想だけになっちゃいますけど、すごい話だなぁ~とか泣いちゃったなぁ~とか松子が歌っていた歌が印象に残ったなぁ~とかです!>
すでに原作を読んでいた女性(30代)も、この映画をいたく気に入ったようだ。
<あれだけ暗い話を、よくぞ分かりやすく面白く仕上げたなぁと感心した。中谷美紀は熱演したねぇ。ただ不満なのは、小説でも映画でも、松子の人生を「つまらない人生」と鼻つまみ的な扱いするけど、本当にそうだろうか? 「嫌われ松子の一生」ってタイトルはインパクトあっていいと思うけど、松子の事そこまで言うのはちょっと可哀想じゃないか?と前から思ってたんだ。>
これには大いに同感。ただ、『嫌われ松子の一生』という題名だったからこそ、小説も映画もこれだけ話題になったんだろうね。作者の山田宗樹自身が考えたのか編集者の発案なのか分からないけど、ネーミングのセンスは相当なものだと思う。余談だけど、あの『世界の中心で、愛をさけぶ』という題名は、作者ではなく編集者が付けたものらしい。こちらも、このタイトルでなきゃあんなにブームにならなかったろうね。
最後に紹介するのは、映画自体はさほど面白くなかったという男性(40代)の感想。
<松子を殺した犯人とそのきっかけが判明したとき、松子が教師だった頃の姿が脳裏をよぎり、それが切なくて、虚しくて。>
な~んだ、僕が心配するまでもなく、観た人はみんな(って広い世間の中じゃごく一部だけど)松子に好意を抱き、その境遇を哀れんだり儚んだりしていたんだ。ってことは、この映画での松子の描き方は決して悪くなかったのかもしれないなぁ。ともあれ「映画には不満だけど、松子は好き」という僕にとって、多くの人が松子に好意的なのはうれしい限りである。誤解されやすいけど、いい子なのよ。ねえ。
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