おもちゃの病院に(アンパンマン)クレーンゲームが動かなくなった、という持ち込みが結構頻繁にたくさん(くどい)来ます。多いのは前後・左右移動用の9枚歯のピニオンギアの割れの修理(交換)。部品を交換すれば直るのだけれど、合致するちょうどよいピニオンギアが無い(同等部品が見つからない)ので、細いステンレス線でたすき掛けに縛ったりしてしのいだりしています。多分あちこちでみなさん苦労されていると思います。
これに関連して、ピニオンギアの仕様のことをよく知らなかったのでちょっと調査してみました。細かいことを書かずに最低限でざっくり(感覚でなんとなく?)わかるようにまとめたのと、今後の対応の方向性について書いてみました。
ピニオンギアの仕様
一般的なピニオンギア(下図参照)は同じ歯数でも以下のような色々な部分で大きさが違って合わないことが多々があります。歯数が合っていても、これ小さすぎる(空回りしちゃう)やとか大き過ぎる(そもそもギアが入らない)や、ということになります。
- 歯数の違い(→8枚歯とか10枚歯とか)
- 中心穴の大きさの違い(→いわゆるよくあるマブチ系?のモータだと直径2mm程度)
- ギア部の外周直径の違い(→ノギスや定規でピニオンギアの直径を計ったりします)
ピニオンギアの重要な数値「モジュール値」
わかったことで重要なのは、この「モジュール」という数値が合っていなければ、2つのピニオンギアは決して噛み合わない、ということです。
モジュール値とはピッチ円直径を歯数で割った数値です。
もう少しざっくり?、詳しく?書くと
ピッチ円直径(以下Dと略します)とは、「歯車対(つい)の歯と歯のかみ合う点をピッチ点と呼び、そのピッチ点を結んだ円の直径がピッチ円直径」のこと。
→これもざっくり感覚でいうと、だいたいギアの山と谷の中間くらい。なので、定規とかノギスで測ったピニオンギアの外形直径よりは小さく、我々が使う径の小さなピニオンギアだと、だいたい
- ピッチ円直径(D) ≒ ギア部の外周直径/1.2
位のようです(いくつか計算してみてそんな感じ、、)。
モジュール値(以下Mと略します)とは、ピッチ円直径(D) ÷ 歯数(T)。つまり、
- モジュール値(M) = ピッチ円直径(D) / 歯数(T) = D / T ≒ ギア部の外周直径 / 1.2 / 歯数(T)
もう一度書きますが、大切なのは、モジュール値の異なるピニオンギアは決して噛み合いません。

図 各直径の位置づけ
例えば、表記のアンパンマンのクレーンゲームの前後左右移動用のギアは、9枚歯で、ギア部外周直径が約7.6mmですので、モジュール値(M)は、D/T = 7.6/1.2/9 ≒ 0.70 で、0.7となります。これを0.7Mと表記することがあるようです。
なので、モジュール値0.7であるピニオンギアとは噛み合うけれど、モジュール値が0.5とか1.0とか言ったピニオンギアとは噛み合わない、使えないということになります。
一般的な市販品でのピニオンギアの探し方
市販品での探し方ですが、上記のモジュール値と、歯数(T) (→ToothのTですかね)、と中心穴の大きさなどを組み合わせて、例えば、上記のクレーンゲームの前後左右移動用のピニオンギアだと、
- 0.7M 92A または、0.7M 9T hole 2mmとか
というような呼び方をするようです。モジュール値が0.7、9枚歯で中心穴の大きさが2mm。Aはよくわかりませんが、普通のピニオンギアの形態をしたもののようです。これ以外には「肩付き」とか「ボス付き」いう形状を見かけたことがあります。その他、0.5Mの8T系だと、80.8A、81A、81.5A、082Aとか色々あります。これらは8Tでそれぞれ中心の穴の直径が、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、ということになります。
で、クレーンゲームのは、、、
0.7M 92Aというピニオンギアを探すわけですが、真鍮製のものはある(うちのおもちゃの病院にもあります)のですが、樹脂製のものは国内のAmazonや、大陸のeBay、AliExpress、Temuなどを探しても見つかりません。(おもちゃ協議会?が3Dプリンタで作ったものを配布したりもしているようです)
もう少し調べてみると、モジュールの規格の系列には2つあって、系列Ⅰ列と系列Ⅱ列という系列があるようです。系列Ⅰ列は最も一般的なものとしてあって、系列Ⅱ列はそれ以外の特殊な系列という位置づけのようでクレーンゲームの0.7Mはこの系列Ⅱ列系のものに分類されていました。
ということでこのクレーンゲームにはわりと特殊なピニオンギアが使われている、ということがわかりました。
でどうする
先日うちの他のドクタが、ジャンク箱を漁って8Tで引っかからずに動いたぞ、と言っていました。同じモジュールでないと噛み合わない、ということなので噛み合ったのだから多分0.7Mの8Tだったのでしょう。で、また大陸で探すわけですが、そもそもⅡ列系だということであまり選択肢がないのですが、0.7M 10Tを見つけたのでどうだろう、と10個で100円ちょっとのものを見つけたのでポチってみました。まだ届いていないので、結果は届いてからのお楽しみ、となります。(次に続く、、、)
一応計算してみるとM=D/T、D=M*T なのでそれで9T→10Tとなるので、直径で約0.7mm大きくなります。半径だとその半分なので、0.35mm。遊びの範疇(噛み大きくなる方向)でなんとかなるじゃないかと踏んでおります。逆に8Tで動いたということは、浮く(噛みが薄くなる)方向で0.35mmはOKということですね。10Tで駄目だったら8Tを探します、、、。うまくゆくとよいのですが。