ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

おみせできない部分のお話???その2

2006-05-19 12:00:46 | 着物・古布

昨日はなんとなく中途半端でした。ほんっとまとまりなくてすみません。
今日は、「作り変え」のお話を・・・。

さて、まずは昨日お話した「かるぱん」について。これは「はかまの作り方」と
「もんぺの作り方」の両方から、使いたいところだけ取り出して、
勝手に作ってみました。サイズも細かく決まっていないというおおざっぱです。
以前使った写真の下半分、ひきのばしてみました。ちとボケてますです。

かるさんは「軽衫」と書きます。実は私の作ったものは正確にはかるさんより
「野袴」に近いものです。でも「かるさん」という名前が気に入ったので
かってににそっちから名前つけちゃったわけです。
カンタンな説明ですが、男物の袴の中に「馬乗袴」があり、その他のものとして
「野袴」があります。これは狩用で、馬乗袴を細身にして裾を絞ったもの、
それから裁付(たっつけ)袴、これはヒザから下が足にぴったりつくもの、
「こはぜ」をつけたり紐でしばったりですが、相撲でほうきもって土俵はいてる
あのお兄さんが穿いてるアレです。それから庄屋袴・軽衫などになりますが、
このへんになるといろいろな説があり、これまた「決定打」が・・。
「たっつけ」がかるさんと同じとか、庄屋と同じとか、諸説ぽろぽろ・・。
ともかく、軽衫系のものは野袴を細くして、動きやすくしたもの、
つまり今のズボンに近いものです。よく歩いたり動いたりする商売のヒトが
愛用しました。たとえば「周り髪結いさん」「武芸者」とか・・。
「剣客商売」の秋山小兵衛さんや水戸黄門様、など系ですね。
ただ、正確には「軽衫」は袴の特徴である「腰板」がついていません。
私のはついているので、ほんとは「野袴」か「庄屋袴」というべきかも・・・。

昨日「かるぱん」にはうそつきの下を付けない、といいましたが、
このおりじなる・かるぱんは、もんぺより股上が浅く、ズボンに近いので、
下をちゃんと付けると、中でモゴモゴするのです。
通常、女性が袴を穿くときは、着物を短めに着付けて半幅帯・・ですが、
それは行灯袴だから短いだけでいいわけで、かるぱんは元々が「男性用」から
アレンジしたものですので、着物もおはしょりしません。帯も角帯の幅です。
おはしょりはモタつくので、したくなかったのです。それで、考えた結果、
かるぱん用に、着物もひざ下あたりで切ってしまいました。
つまり、着物としてはもう着られないわけです。そのかわり、化繊モノか、
古着で、ちょっとシミのあるようなので作っています。
上の写真で、もしかるぱんを脱いだとしたら「やっこさん」みたいなんですー!
というわけなので、下は付けないんです。今、かるぱん用半襦袢を考案中です。
そうそう、昨日の千兵衛様のコメントにあった「袖のない襦袢」は、
「袖なし胴着」といいます。あれは主に「防寒」用に作られたようですね。
つまり、普通のうそつきの上にさらに着てあったかくする・・という感じ?

さて、古い本和裁関係の本には「更生・繰り回し」、つまりリフォームのことも
いろいろ載っています。戦中・戦後などは、もののない時代、涙ぐましいほど!
「更生」の方法には大きく分けて、三種類、

* 別のものに作り変えず、染だけ換える。
* いいとこだけとったり、ほかのものを足して作りかえる。
* いいとこだけとって、別のものにする。

染め替える場合は、色抜きできるものはまず一度白くしてから別の色柄に染める。
色の抜けないもの(お召し紬など先染めのもの)は、目引きする。
目引きというのは、たとえば茶色系の紬なら、その上から濃い茶をかけるなど。
いいとこだけとって、何か足す・・
胴貫きなどは、これに入りますが、要するに大人サイズのものを、
そのまま大人サイズに更生するような場合です。
別のものにするというのは、子供のものにするとか、着物を羽織にするとか・・。

染め替えには、私たちが考えているより、ずっとものすごい技術があります。
実際には単なる染め替えではなく「修正」になりますが、
ただ、色が褪めたから染め替える・・というのではなく、箔も刺繍も修正する、
こんなふうに・・・

http://cleaning.kimonoland.net/clean-02-03.htm

ただ、コレはお金がかかります。ですから、振袖や訪問着などはこうして直して
娘や孫に・・なんてのもいいかな・・ということだと思ってください。
普段着については、全体的な染め替えのほうが当然手軽です。
ただし、布の傷み具合や布チカラの有無、元の色などによって、
染め替えがムリだったり、思う色柄に染まらなかったりしますので、
プロに相談してください。自分で楽しみながらの染め替えや修正も楽しいですね。

次の「いいとことって、ほかのものを足す」、については、
昨日の胴貫きなどが代表的なものですが、まずは単純に「着物をといて襦袢」に
これが一番多いです。襦袢は対丈でもいいですから、傷んだところを捨てるわけ。
それから胴貫きですが、袖とすそ回し分だけ同じで、真ん中を別布にする、
これが代表ですが、たとえば襦袢を直したいが布が足りない場合、などは
その襦袢のいいところを袖とすそ回しに使って、別布を胴体にはめ込む・・
これでもう一度襦袢として使えるわけです。
この「別布をたしてつぐ」ことですが、以前にもかきましたけれど、
昔のヒトは「直してて着るのが当たり前」でしたから、
外からみえるところに「継いだ跡」があっても、別に笑ったりはしませんでした。



上の写真は、以前「ハレとケ」のお話で使ったものですが、
この着物、すばらしい色柄で当然「よそゆき」ですが、この袖の
袖口の下辺り、横に一本縫い合わせてあるところがあります。
振袖から袖を「留め」ようとして柄のあるところを切り落としたとき、
柄のつき具合でそのまま袖の底を縫うだけではうまくいかなかったのでしょう。
こういう袖が途中でついである、というのは子供の着物などでも見られます。
そういう場合は、悪い言い方をすれば「ゴチャゴチャ」した柄で、
どこでついでも目立たない・・というものをそうしています。

また衿などの更生も、たとえば「かけ衿」もいたんで、衿分がとれないとき、
元の衿の右前身ごろ側、つまり着てしまえば中にはいる部分を切って
それをかけ衿にし、切ってなくなった元の衿に別布を足す・・など。
本には「ひざが抜けた場合」なんてのもあって、その場合は
前身ごろの帯に入るところから切り落とし、袖を持ってきて前身ごろにし、
いたんだ前身頃を前袖にする・・。つまり前袖は少しくらい傷んでも見えにくいし
ヒザのようにスレたりしないから、それでまた持ちこたえさせようと・・。
当然もし、少しでも残り布などがあれば、そこでまた袖の途中でつぐのでしょう。
この「途中で継ぐ」「別布を使う」というのは、更生にとっては当然の極意?!
それと同時に、何度もいうようですが、どこかに継いだあとがあっても
よかった・・ということです。着物はいくら長方形でできているといっても、
衿肩あきという切り込みがありますし、おくみや衿は、半分の幅です。
おくみや衿を襦袢の袖に使いなおす、なんてときは、当然縦のつぎ目もできます。
それでも、ちゃんと着られればいいわけです。
外から見える部分、外にでる部分はできるだけ目立たないように場所を工夫する、
きれいにつぐ、そういう技を駆使して着物をだんだんちいさくしてゆき、
はぎれになったらお細工物に・・。毎度いいますが、知恵と技の賜物ですね。

最後に、私がときどき出して眺めている襦袢、以前にもお見せしたものですが、
もう一度アップします。これを眺めていると「面倒だからもう作らずに
捨ててしまおうか」とか「どうしても工夫がつかないあきらめようか」などという
心の緩みが、キュッと引き締まる気がするのです。

いったい、どれだけの時間をかけて集め、どれだけの手間をかけて
つなぎ合わせたのでしょうか。できあがったときは、さぞうれしかったでしょう。
全て「絞りの帯揚げ」のいいとこ取りです。






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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2006-05-19 18:15:08
とんぼ様



染め替えといえば私先日来、派手で

締めない塩瀬の帯を何とか色抜きを

しようと奮闘していますが、染めの

その字も知らないで本当に無茶をして

います。何とか色は抜けたのですが

肝心の柄が消えてくれない・・・(涙)

真っ黒にしたら何とかなるかな・・・

なんて思っていますが無理かな。
返信する
じゃぱにーず・ぱっちわーく (ねね)
2006-05-19 18:34:20
左右対称に作られてるし 色合わせもステキですね。

肌に多少縫い目のゴロゴロ感があっても 着てる満足感が

あったでしょうね。母の帯で一部亀甲のつぎはぎに

なったものがあります。
返信する
襦袢は自作します♪ (りさこ)
2006-05-19 20:01:52
とんぼさま♪

上に着る着物は、わたしの裁縫の技量ではお恥ずかしいのですが、下に着る長襦袢などは、すべて自作することにしました。といっても、反物として売られているものは、わたしのサイズにはちょっと足りないので、裁断しやすい洋服地で作っています。身近な布から自分で自分の着物を縫うのも楽しいです。今、しじら織の長襦袢を縫ってます♪
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Unknown (とんぼ)
2006-05-19 20:52:44
陽花様

名古屋帯?柄のところだけ、上から別柄を

そめられませんか?真っ黒じゃさみしいですー。



ねね様

ウラは厚手の木綿がしっかりついていました。

きっと暖かかったと思うけど、重いです。



りさこ様

お見事です。和裁の本にも「広幅布(服地)で

着物や襦袢を作る方法」というのが、

どの本にも載っています。

しじら・じゅばん、がんばってください!

返信する
時間がたってしまってますが・・・ (蜆子)
2006-05-19 22:19:54
旅行してまして、遅れをとってしまった。

ざ~~っと読んでいます。

で、時間がたってしまっていますが・・・・

季節感を大事に、というあたり、椿の柄の浴衣は許せない、

そうは思いますが、夏椿、沙羅双樹ともいいます。「平家物語」の冒頭にでてくる沙羅双樹は、インドでのいう沙羅双樹でしょうが、一般に夏椿を沙羅双樹といってます。そうなると夏の椿は違反ではなく、しかも沙羅双樹などというと、意味はいっそう深遠になるかもしれません。茶花として使いますね。

ついでに今は牡丹が咲いています。牡丹は茶花の中では真の花、冬に真の花生け、古銅や青磁のものを使う時は、寒牡丹をいけるのですが、こうなると牡丹は夏の花とばかりいえなくなります。

今日の話題と関係なくて御免なさいね。

まだあとかたずけなどです。

また、ゆっくり勉強させていただきます。

話へんな方向にもっていってしまいました。御免なさい。
返信する
Unknown (陽花)
2006-05-19 22:37:52
とんぼ様



名古屋帯なんです。

花紺にお太鼓のところクリーム色でその中に

大きな揚羽蝶が書いてあったのですが

その柄が消えてくれないのです。

してみたこともないのにこんな事するなんて

無謀ですね。
返信する
夏のイメージとして・・ (とんぼ)
2006-05-19 22:41:35
蜆子様

私も、夏椿はよく存じておりますが、

単純に「桜は春」「朝顔は夏」「萩は秋」と

そういうイメージってありますよね。

そういう意味で「椿は?」といったとき

「椿は夏」というより、やはり冬という

イメージだと思います。

浴衣の柄といえば・・と問うた時、一般に

花なら朝顔とか、ひまわりとかの真夏を

連想させるものか、暑いのだから少し先取りで

ききょうとか、萩とかではないかと・・。

そういう意味で「らしいイメージ」として、

たとえば桜や椿の柄を、単純に「和風ばやり」として

使ってほしくないという意味なんですよ。



返信する
c;?? (とんぼ)
2006-05-19 23:03:17
陽花 様

考えてみましょー!
返信する
Unknown (うまこ)
2006-05-19 23:43:46
丈がたっぷりある軽さんに長羽織。

色合わせもとてもステキです。

意外に上品というか、普段ぽくなくていいものですね。

ちょっと見直しました。

(私がやると、こうはいかないかも)



ところで私がお嫁に持ってきた浴衣、

白地に紺の椿柄。

なんだか浴衣浴衣していてつまらなかったので、

椿の花を赤のアクリル絵の具で塗ってしまったら

あんこ椿みたいになりました。

あんこ椿には冬のイメージが無いんですけど・・・



椿ってたしかに冬のイメージがあるんですけど、

実際の椿は春の花なんですよね。品種によっては

かなり暖かくならないと咲かないんですよ。

サザンカは秋の花なので

冬も咲いてますけど。
返信する
いやーこまった・・ (とんぼ)
2006-05-19 23:54:00
うまこ様

どうも「椿」に関しては、単純に言いすぎたようで

反発くらっとりますー。

いえ、別にふかーい意味はなくて、

単純に「夏といえば・・」というイメージの

お話のつもりなんです。

それと、もうひとつは最近の浴衣売り場を見ると

まぁ「着物を好きになってくれるなら」と、

何でもありだと思うのですが「椿に手まり」とか

「桜に市松」とか、着物といえば着物・・みたいな

そういう柄があるわけです。

もちろん浴衣も、襦袢を着てタビはいて・・と

使えるものも十分ありますが、

そういう着物をよくわかる人へのお勧めではなく

なんでもいいから和柄にしときゃ売れるだろ、

という魂胆ミエミエのものに、そういう季節感を

無視したものがあるというのが抵抗ある・・

ということなんですよ。
返信する

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