ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

紅(くれない)の悲劇

2010-05-22 16:32:51 | 着物・古布
あぁぁぁぁなんてことぉぉぉ!(うるさいわよ…)

なんとまぁ洗濯のときに、あろうことか「紅絹」を一緒に洗ってしまったのですよ。
ええぇもぉ、シャツからランニングからタオルから靴下から、
みーんな「ダイダイ色」に輝いちゃって…。
これが「くれないの悲劇」を引き起こした「犯人」です。逮捕じゃっ!


         


最初はわけがわからなくてボーゼンとしていたのですが、ハタと思い出しました。
先日洗濯機で洗う「紬のはぎれ」と一緒に間違えて持っていったた紅絹を、
ぬれちゃたいへんと、洗濯機の上のポールに引っ掛けてすっかり忘れていました。
そのままそれが知らないうちに落ちて洗濯物を入れるかごの中に…。
昨夜、お風呂のあとでポーイと放り投げた洗濯物で隠れてわからなかった…というわけです。

いつも洗濯をするときは、当然ポケットの中のティッシュとか小銭とか、、
まちがって色の濃いものはないかとか、ちゃんと調べて入れるのに…。
やってしまうときというのは、こんなもんなんですね。

でも「転んでも タダで起きない とんぼです」
この際ですから、こんなときを利用して、やってみましょう「救出」を…?!

まぁ、どう考えても「紅絹と一緒に洗う」なんて、ドアホなことをする方は、
そうそういないとは思いますが、参考のために読んでおいてください。
紅絹の色落ちはものすごく、そして染まる具合もものすごいです。
染まったものは、とにかくすぐ水洗いすること。
色が落ちるか落ちないかというより、とにかく残っている染料を徹底的に出します。
色がきれいに落ちなくてもなんでもとにかく「染料」として残っているものを
できるだけ揉み出さないと、次に洗うときも、そこから赤いのがでるのです。

これは、とりあえず急いで洗面所のボウルにお湯を溜めて放り込んだ白いもの。
これでもみもみ、何度もお湯を変えます(お湯の方が落ちますから)。


    


それから色を抜くために洗濯で使う「漂白剤」に漬けます。
右の白ッぽいのはメリヤスの下着なので、このあと塩素系の漂白剤液に。
染まり具合や、そのものの素材にもよりますが、薄ければ酸素系でだいたいいけます。
但し、特にピンポイントで染まったところなどは完全にはなかなか…。
こちらは私のパジャマの下、三度目の湯洗い、だいぶ薄くなりました。


    


紅絹というのは、ことほどさようにものすごい色落ちします。
もうひとつ色落ちの激しいものは「藍」です。
浴衣などは、水が青くなりますが、これはもうナンボでも落ちますから、
水が透明になるまで…なんてのはムリです。
何度も着られて洗濯されて、いいかげん色も落ちなくなったねぇ…なんてころが
しなしなになって寝巻きやオムツにちょうどいい…というわけですね。

紅絹は、いくらでも色が落ちますが、ではなんでこんなものを「着るもの」に使ったのか。
ひとつには、今とはいろんなことの事情が違いました。
現代は、何でもあって、何でも便利、時間もかからず、ちゃっちゃとできます。
でも、昔は入浴も洗髪も洗濯も、全てが今よりはずっと不便だったわけです。
きれいにしていたくたって、毎日入浴毎日洗髪はできない…
洗濯だって回数は限られます。
江戸は湯屋というものが何百軒もあって、江戸っ子は毎日フロに入ったと言われていますが
それとてもお金のかかること、全部が全部、そうはできませんでしたし、
少し街の中心を離れればなおのことです。
そういう暮らしの中では、できるだけ汚れが目立たないような色を着る。
特に襦袢は「緋色」がはやりだしてからは、みんな緋ちりめんや赤いものを着ました。
また「腰巻」つまり赤い裾よけは、女にとって「おんまの日」がありますから、
ぜったい不可欠なもの。それに何かの拍子にちらりと見える「赤」は、
とてもきれいで魅力的だったんですねぇ。
汚れが目立たず、中に着る襦袢と合う…それで紅絹は重宝されたわけです。

大正などの襦袢を見ると、元々襦袢と思われるものも、
着物の繰り回しだろうと思われるものも、みんな色柄が派手で濃い目です。
着物より肌に近い襦袢の汚れを、できるだけめだたなくするための工夫です。
その色の濃い襦袢には、赤い胴裏はよく合ったんですね。
「胴裏」とか「袖の振りの裏」なんて、普通に着物着ていたら見えないところじゃない…
そう思えますが、なかなかどうして…。
これは着てみないとわからないのですが、
ほとんど見えないはずのこの袖裏の紅絹などが、けっこう自己主張するんです。
そうなると…イマドキの薄い色の襦袢は、フシギと浮いてしまうんです。
紅絹の胴裏は、昭和に入って表地に色の薄いもの淡いものが出てくると、
透けて見えるために白い胴裏に変わっていきました。
もちろん襦袢も表に響かないように、薄い色目になりました。
その後はなぜか、濃い色の着物でも襦袢も胴裏も淡いボケボケが続いています。

紅絹の胴裏を着たあとが色の薄い襦袢にのこっていることがあります。
ちょうど両胸の脇アタリ、つまり脇の汗で紅絹が色落ちしたんですね。
絹物ですから、解いて洗うとなると一仕事だったことでしょう。
紅絹は水気がなくても湿気だけでも色落ちや色移りを起こします。
古い着物で、裏に紅絹のついているものは、特に湿気には気をつけて下さい。
さて、ドジった私は、今日は「川に洗濯に行きました」じゃありませんが、
洗面台で、ガッシガッシと結局全部もう一度手洗いになったのでした。
疲れたよぉぉぉ~~ん。

というわけなんですが、なんでもかんでも紅絹のせいにして…。
「くれないの悲劇」を招いたほんとうの真犯人はこちらです。
ただいま反省中。(反省だけならサルでもしまっせぇ。二度とせんときやぁ))


      

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2 コメント

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Unknown (陽花)
2010-05-22 19:08:44
アァー、本当に悲劇!
しなくてもいい用事が増えて、大事な
衣類がどれもピンク色とはショックが
大きいですね。

疲れもどっと出たんじゃないですか。
自分のやったポカミスは、どこにも
文句が言えないのが余計腹立たしい
気がしますね。
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Unknown (とんぼ)
2010-05-23 18:12:33
陽花様

ほんとにもぉぉぉでした。
全部あらって脱水して…と、
いつもの倍以上の時間でした。

おっしゃるとおり、ダレのせいでもないと、
余計に腹立つし、情けないし、もうほんとに
お天気よかったのに、心は土砂降りでしたよ。
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