巻物の中に描かれているのは・・・
左下、水色のワクの中、「柿ようかん」の字は大きいので読めると思います。
その下の箱のような絵は「鯛めし」その上は「山葵漬」
鯛めしの横は「はまぐり」で「く」「わ」「な」、桑名名物ですね。
巻物の下、ちょっとかけているのは「浅草海苔」・・・。
日本全国、名物ランキング・・というところでしょうか。
江戸時代は旅行が盛んになり「お伊勢参り」とか「箱根の湯治」とか
庶民はけっこうエンジョイしていたようです。
絵草子の版元では、いろいろな旅の情報や旅行のコツや知恵など、
いわば「ガイドブック」を発売し、けっこう人気があつたそうです。
この模様は、そのガイドブックではありませんが、
さまざまな「名物」をならべている、いわば「名物尽くし」でしょうか。
これは、男性用のじゅばんを解いたものです。
モノはたぶん「家紬」とよばれるものだと思います。
私も聞きかじりなのですが、家紬というのは、昔「養蚕業」をしていたうちで
問屋に卸せない「くず繭」を自宅用に織った反物のことだとか。
もともとそういうくず繭を自宅用につむいで布にしたものが、やがては
「紬」になったわけですが、家紬というのは糸を先染めせず白いままで紬を織り、
それに「染めもよう」をほどこしたもの・・ということのようです。
詳しいことご存知の方、いらっしゃいましたら教えてください。
さて、じゅばんに戻ります。これはそういうことで「染め」紬です。
それにしてもおもしろい柄です。着物を着たときじゅばんは外からは見えません。
特に男物の着物は女物と違って「袖の振り」がないので
女性のように袂から「チラッ」というのもありません。
それなのにこーんなオモロイ柄を使うなんて、昔の人の「遊び心」って
すごいと思います。元々江戸時代、度重なる「奢侈禁止令」に逆らって
表はジミ~~な着物にし、じゅばんや羽裏(羽織の裏地)に
凝った柄を使うなどして、庶民はお上に対抗しました。
浮世絵に、お客の帰り支度をする遊女が羽織を着せ掛けようと広げている絵が
ありますが、その羽裏は大きなダルマがつまらなさそうな顔をしている、
というものです。クスッと笑えます。
時は流れて「何を着てもかまわない」ということになったせいなのか、
最近の羽裏もじゅばんも、およそ当たり前でおもしろくない柄になりました。
このじゅばんは、残念ながら部分的な傷みやヨゴレがひどく、
長襦袢としての着用はムリなので、柄を生かして「旅行用ボストン」なんか
おもしろいかな・・と考えています。図柄どおりに食べ歩いてみるとか??