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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

格子柄

2010-09-10 23:48:06 | とんぼ手帖
コメントで、お題をいただきましたので、それではと…。
写真は、一応「格子」のはいってるもの、母からもらった紬です。
写真、使い回しですー。

コメントでは「格子」ということでしたが、
例えば洋服柄だと縞は「ストライプ」、格子は「チェック」で別物ですが、
日本の柄の場合、実は縞と格子は同類に入ったりしちゃうんです。
「格子縞」という言葉があるくらいで…。
つまり、縞は「線が平行に並んでいる」のですが、
格子は「縦縞と横縞が交差して並んでいる」というわけなんですね。
なんか妙に納得できる説明のような…。

これは私の勝手な考えなのですが、人間が一番最初に思いついた「柄、もよう」は、
たぶん「ドット」ではないか…と思うのです。
縄文式土器というのがありますが、あれは撚り合わせた細い縄を、
土器の表面にころころと転がしてつけたものです。原始的な模様ではありますが、
実は模様としては「知恵」を使った柄です。
ただの平らな面に、なにかもようを…と考えたとき、
最初に思いつくのは、たとえば太い枝をきったものでつんつんとつついてへこませる…。
つまり「水玉」じゃないかと…。
装飾、ということに目が行くようになったとき、そのつぎあたりに「線」がきて、
縞は二番目に古いんじゃないかなー、なんて思うわけです。
いえ、これは事実確認していませんので、ただの思いつきですからね!

縞柄には、それぞれ名前がある…これは洋服の柄でも同じです。
たとえばワイシャツなどの「ブロックス・ストライプ」は、
単純な同じ幅で二色のもの。輪柄では「棒縞」ですし、
「ペンシルストライプ」と呼ばれるものは、和柄では「大名縞」
これは、地の幅に対して模様の幅がせまいものです。

つまり洋の東西を問わず、人の考える美しいものはおんなじだってことですね。

さてさて、やっと「格子」のお話です。
格子柄にも名前が付いていますが、和柄の格子は役者とか物語とか、
そういうものから名づけられているものが多くあります。
まず基本ですが、格子といっても二種類、

格子の一マスの形が正方形のものと長方形のもの。
先にできたのは正方形、つまり縦と横の辺が同じ長さの格子。


      


縦の方が長い、長方形の格子が登場したので、
元の形は「碁盤格子・碁盤目」といわれるようになりました。
えーここでややこしいのですが、さきほど書きましたように
和柄では格子も縞、なので、「格子縞」「碁盤縞」とも言います。

格子はこの形で、その「線」の部分が太くなったり細くなったり、
またその太さの並びが変わったり、色が変わったりで、
さまざまな格子が考え出されたわけです。

芝居からきたもので有名なのは「弁慶格子」これは「衣装」として使われたことによるもの。
つまり最初は「こんな感じの格子」と作り出されたものに、その役名が付いたわけです。
弁慶格子は、二色で地と柄の幅を同じにしたものをクロスさせたもの。
(ちょっと寸法違ってますが、ごめんなさいです)


        


洋風に言うところの「ギンガムチェック」ですね。

次が太い線に細い線を寄り添わせた「縞」をクロスさせたもの、これは「子持ち格子」、
縞でもありますね。「童子格子」とも言います。これは「酒呑童子」の衣装から。


    


この「何本か並べた縞を交差させた格子」は、その本数によって、
「二筋格子」とか「四筋格子」と呼ばれます。
このとき、色が全部同じものもあれば、違う色のもあります。
イメージとしてあぁこんなのみたことある…はこんな感じだと思います。
これは「三筋格子」になります。


       


こちらは黄八丈などでみますね。
これは、太い線の格子の中に、細い線の違う色の格子があるもの。
「翁格子」といいます。太い線が翁で、子供(細い線)を護る姿といわれています。
また芝居の方では「翁三番叟」で使われます。
相撲の呼び出しさんとか、江戸の飴売りなどが穿く「たっつけ袴」にも使われてますね。


    


役者さんの名前の縞、格子は多いです。
そこから流行って今に至るも使われている柄ばかりです。
けっこう単純で美しいのが「高麗屋格子」これは太い線の格子に
ちょうど「十字」に入るように細い格子がはいっているもの。


    


上の方の「三筋格子」は「三枡格子」とも言われて、
これは市川団十郎の「三枡紋」を格子にしたもの。
実際にはもう少し線が詰まっています。

縞や格子の判じ物は、今でも人気がありますね。
たとえば「かまわぬ」とか「よきこときく」とか。
ご存知のように「鎌・○・ぬ」でかまわぬ、
「斧」と書いて「よき」と読ませ、琴と菊で「斧・琴・菊」。
私の柄なら、さしずめひらがなの「て」に「釘抜き」の絵で「てぬき」…?
話を戻しまして…
「判じ物」の格子柄、
「ら」は手書きですので、ちょっと不細工、すみません。
「太い横縞1本、細い縞は縦に6本、中の字は「ら」…。
これは「「1・6(む)・ら」で「市村」、クイズができそうです。


   


こちらは方眼紙に道具をつかってかいたのではありませんので、いい加減ですが…。
おわかりでしょうか、細い線が「3と5と6」、
つまり「みつ・ご・ろー」の、繰り返しで「坂東三津五郎」の「三津五郎格子」です。


    


この「数で語呂合わせ」はほかにも有名なのがあります。
ポピュラーなのは「菊五郎格子」、
絵がなくてすみませんが、複数線の格子の中にカタカナの「キ」と感じの「呂」。
よくよく線の数を数えてみれば、
縦縞は4本、格子を作っている横縞は5本、
つまり「4と5」で「九」、「キ・九・五・呂」きくごろう、ですね。
この前、この柄のゆかたを「キロ格子」と書いてあるお店がありました。
本当にそういう略し方があるのかどうか知りませんが、なんかヤボですね。

最初にかきましたように、和柄では縞と格子は仲間です。
「縞」を格子と呼んだりします。
そのため縞の種類である、たとえば「子持ち縞」左側の絵、これは「一人っ子」?
右は細い線を両脇に持っているので「両子持ち」


    


同じように「滝縞」は、片側に少しずつ少なくなっていくのが「滝」
右のように細いのから真ん中太く、また細く…の繰り返しは「両滝縞」


    


これをこのまま「格子」にすると「子持ち格子」「滝格子」になるわけです。
同じ格子でも「三筋」のように、その幅や組み合わせを決めて使ったものに
「役者の名前」がついたりするので、ややこしいんですね。

さらに「間道」という柄があります。「かんとう」と読みます。
「広東」とか「漢島」とも言われています。これは「サントメ縞」と同じで、
中国や南アジアから伝わったもので、「吉野間道」「利休間道」「太子間道」など
特定の柄を表す名前があり、お茶道具につかわれることで有名です。
これも「縞」なのですが、これを格子にして使っても「○○間道格子」になります。

まだありますね「やたら縞」、これは規則性をもたせないで縞模様にしてあるものですが、
これも縦横にすれば「やたら格子」になります。
ちなみに「やたら(矢鱈)」は、宮中の雅楽の中で、
拍子のとりにくい譜があるところから出たといわれています。
つまり耳に心地よい、決まった繰り返しの拍子ではないので奏でにくいわけです。
それで「めちゃめちゃで規則性がない」という意味で使われるわけです。
これも「縞」と「格子」があります。

さて、今日はただもう並べて説明…になりましたが、
縞と格子は和柄では同じように呼ばれ、
また「線」という実にシンプルなものでありながら
組み合わせや色使いで、いろいろな表情を見せる…
あらためて、フシギでステキな柄だなぁとおもいました。



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10 コメント

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Unknown (陽花)
2010-09-11 07:17:48
縞、格子、手描きの図まで載せて
頂いての説明で、こんなにいろんな
名前がある事を知りました。
こういう知識を持っていたら、縞や
格子を見ていても楽しいと思います。
返信する
縞と格子 (りら)
2010-09-11 12:03:00
どっちも大好物なんですけれど・・・・
あれこれ着てみると、単純なようでいながら、実はとっても難しかったりします。
一度でいいから大柄の弁慶格子を着たかったんですけど・・・・もう無理ですわ・・・・

ところで、縞と格子は仲間ですけど「縞はものによっては余所行きになるけれど、格子は絶対普段着」なんですよね。
返信する
成り立ちが... (akkomam)
2010-09-11 12:51:56

 何気なく見たりしている格子にもいろいろな物語が
 あるとは知りませんでした。

 私はどちらかかというと縞派のようです。
 今日も学びました。
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なんと! (くう)
2010-09-11 16:38:03
今、思いつくチェックは、タ-タンチェック・ア-ガイルチェック・マドラスチェック・ギンガムチェック・千鳥チェックくらいですね。縦はストタイプとして、ひとまとめですね。どんな物にも由来がありますが、とんぼさんは本当に勉強家だなぁって、いつも思っております。
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Unknown (とんぼ)
2010-09-11 20:01:28
陽花様

縞が大好きなのに、似合う縞っていうのが
なかなか難しい…。
和柄の縞や格子っていいですね。
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Unknown (とんぼ)
2010-09-11 20:09:11
りら様

縞と格子、似合うのを見つけるのはなかなかです。
弁慶格子、私もモノトーンで着たかったのですが、
まずちょうどいいなぁと思う太さとか、
色の具合とか、なかなかありません。
あっても今度は似合わない…。
大きい柄は、難しいです。

「縞」は、「縞のお召し」があれば、
略装で使えたものなんですが、今はねぇ…。
格子は、どこまでいっても…ですね。

返信する
Unknown (とんぼ)
2010-09-11 20:13:12
akkomam様

外国からはいってきたものを
上手に使いこなし、新しいものを作り出す。
日本人ってほんとにすごいと思います。

私も縞は、洋装でも好きです。
似合うかどうかは別として…ですが。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-09-11 20:26:59
くう様

ウィンドペン、ガンクラブ、グレン、
なんてのもありますよー。
私は学生のころ、白地に赤と紺の細い格子が
とても好きだったのですが、
あとになって「タッターソール」
というのだと知りました。
知ったころには着なくなってましたが…。
ストライプの呼び名も、
細かくいろいろありますが、
日本のような「情緒」なし?
なんていったら失礼かな?
返信する
「保存」しなくちゃ♪ (のり美)
2010-09-12 14:19:30
 とんぼ様、ありがとござま~すっ。

 ぁぁ…ご気楽なフリをここまでしてくださって。
縄文人の考えにまで思いがいくなんて
とんぼさん! 海のように広すぎですっっっ!

 今日はいろんな格子を勉強…し過ぎて線の数も数えられなくなったころ(笑)
うかびました~。新しいチェックを。
「(赤)とんぼさん格子」!!! どうでしょう~?
薄~いグレー2本に、上の突き抜けを少なめにした細め赤い線。(←トンボっぽく)
それを横向けたりひっくり返したり組み合わせ…
ァ・あれ? なんだかガチャガチャしてきちゃった(反省)。
線がつながらなきゃ、どうしてもダメですかね~ぃ。 シュン;
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-09-13 11:59:59
のり美様

いえいえ、私のほうこそ楽しいお題を
いただきました。
縞と格子ってほんとにフシギな柄ですね。

「柄」を縞や格子にするのもアリですよ。
分かりやすいのは「そろばん縞」ですかね。
そろばん玉をたてに並べただけの縞。
「とんぼ縞」はすでにあります。
「とんぼ格子」…かんがえてみよっ。
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