「メジャーの打法」~ブログ編

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ダルビッシュ(5)

2015年04月05日 | 投法

 日本の投法では多かれ少なかれ肘に負担が掛かる、となると、Jobe型が最後の砦だ。トミー・ジョン・フリーという意味で、『理想の投法はJobe型』ということになるかもしれない。
 トミージョン手術を考え出したのはほかならぬジョーブ博士である。かれがもし警鐘を鳴らすべく、Jobe型を推奨する意味で考察の対象にしたのなら、慧眼を評価すべきだろう。肘の故障があるから、アメリカでは親が野球をやらせたがらない、で、サッカーをやらせる、と何かで読んだ。もし本当なら、親にとっても、野球にとっても、福音となる。

 傍証はある。こちらで、アーム式と明示しているわけではないが、あるタイプが肘にやさしいという説を紹介している。
 その部分を引用すると、

ジェームズ・アンドリュースを始めとする整形外科医やシカゴ・ホワイトソックスで投手コーチを務めるドン・クーパーを始めとする球界関係者らは「靭帯損傷の最大の原因は投球フォーム」と主張している[14]
特に、両腕の肘が両肩よりも上になる逆W字型の投球フォームが肘へ悪影響を与えると言われており、グレッグ・マダックスの様に利き腕と反対側の肘が肩よりも上にならない投球フォームが理想と言われている[14]。逆W字型の投球フォームは身体に比べて腕が遅れて出てくるため、下半身等へ力が分散されることなく肘にダメージが集中してしまうと考えられている[14]


 マダックスを例に挙げているように、「肩より肘が上にならない」投法というのはアーム式である。体幹を前屈することで肩が肘に対して下がり、さらに肩関節力が上腕を回転させて肘を上げるように働くから、最大外旋時(加速期の前)にはちゃんと肘は上がっている。(写真) でなければ、腕は振れない。(動画) 
 一方、ヒップターンの投法も、肩肘を水平に引き出すには、肘の高さが必要だ。腰や体幹の動きで肘は上がらないから、前もって上げておかねばならない。

日本でも、「肘を上げろ」といわれる。これもヒップターン方式を念頭に置いているのだ。肘を上げておかないと肩を壊す。(石井) 記事を単純に真に受けてはいけない。

つまり、上の引用文は、「Feltner型は肘に負担が掛かるが、Jobe型は掛からない」と言っているのだ。

 Feltner型は、肩肘を前に引き出す動作が肩外旋に作用し、肘に負担が掛かる(『投げる科学』 p.101-2)。肩内旋トルクのピークはコッキング後期である。それに対して、石井では加速期。つまり、日本式は腕を振り下ろすときに最大の負荷が掛かる。日本のアーム式が肘をやられるのもこの時期だろう。Jobe 型も、負荷が掛かるとすれば、その段階に違いないのだが、掛からないとなると…

 Jobe型は体幹前屈にブレーキがかかるから、外的トルク(肩外転屈曲、末端の加速(2))を掛けないまでも、肩内転伸展動作を早々とやめているのかもしれない。ムチ動作のようなものだ。日本人は、前屈が長いし、「球持ちをよくしろ(球を前で離せ)」などと教わるから、大円筋、三頭筋などによって、内転伸展動作を長々とやる。これが上腕を内にまわす・・・などと考えてみたりするのだが、憶測の域を出ないから、空しいばかりだ。

 これを実験で確かめようとすると、筋電図法では肘外反ストレスは出ないから、Feltner&Dapena(1986)のような剛体リンクモデルを使った動作解析法を用いることになるだろう。ウィキペディアの説明通りでもいいから、マダックスに似ている投手をつれてきて測ってみることだ。
 動作解析法もやっと本当の価値が発揮できるときが来た。1980年代は開発段階で、得られた成果について、たとえば肘伸展についてJobe(1984)との間に著しい矛盾が生じても、目をつむることもできた。しかし、この期に及んでやらないようでは、宝の持ち腐れである。



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